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百物語  作者: 奏 いろは
6/9

五本目:うさぎ

次はりゅうだな。



ああ、そっか、俺の番か。


そうだなぁ…

じゃあ、俺の後悔話に付き合ってもらってもいいか?

よし、話すぞ。


小学4年の頃だった。

ほら、うちの小学校は4年生から必ず全員委員会に入らなきゃいけないじゃないか。

おれは飼育委員会に入った。

飼育委員は人気でさ。なんでって、皆が掃除している間にうさぎ小屋を掃除するだけなんだから。

俺も忙しいのは嫌だったし、動物は好きな方だったから、必死でじゃんけんしてその座を勝ち取ったんだ。


うさぎ小屋ってな、超臭いぞ。ゴキブリの卵とか発見しちまうし。

まあ、でも楽しかった。

あの時は俺はちょっと引っ込み思案で、そのせいかいじめられたりしてたから、うさぎと戯れるのは癒しになってたんだ。

本気で家でうさぎ買おっかなーって思うくらい。


でもだんだんいじめがエスカレートしていって、俺はうさぎ小屋の掃除をしている時にさえちょっかいをかけられるようになった。あいつら相当暇だったんだなぁ。


ある日俺が掃除終わって鍵かけてあとは先生に小屋の鍵を返すだけ、って時だった。あいつらがわぁーって走ってきて側においてあったランドセルをひったくって逃げていった。もちろん俺は取り返すべく、ボコボコにされながらも追いかけた。なんとか無事にランドセルを取り返し、鍵を拾って先生に届けて帰った。


その次の日だった。


俺は先生に呼び出しをくらった。俺はわけがわからず、びくびくしながらついていった。

先生はうさぎ小屋に着くと、「昨日の掃除当番はりゅう君だったわよね?」と聞いてきた。おれは「はい」と答えた。

先生は俺を睨みつけると、

「あれほど鍵はちゃんとかけなさいと言ったのに!!おかげで一つの尊い命が…」

と涙目で言った。

俺はしばらくいったいどういうことなのかわからなくて混乱していたが、徐々に状況を把握していった。

「え…?」

ワンテンポ遅れて返事をした。


鍵をかけてなかった…?そんな、昨日は確かにちゃんとかけたはず…

いや、でも、もしかすると、鍵をかけてる途中であいつらを追いかけに行ってしまったのか?


ここまで考えると、俺は本当に恐ろしいことをしてしまったんだ、と激しい後悔の念にかられた。


ランドセルなんて、また新しく買えばいいだけなのに、俺があいつらにつられたせいで大切なうさぎが…


俺は声をあげて泣いた。


当時の俺にはあまりにショックすぎることだった。


先生の話によると、うさぎは車に轢かれたのか頭がぐしゃぐしゃになっていたらしい。


それを聞いて、俺は手が付けられないくらい号泣してしまった。


一匹のうさぎが、俺のせいで死んでしまったんだ。


俺のせいで俺のせいで…



泣き喚く俺を校舎の影から見て笑っているあいつらが、視界の端にちらりと見えた。







全然怪談じゃねえな、これ


まあ、

たまにはいいだろ。





炎が、一つ消えた。

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