フットルースライフ 第17話 小さなダンシングクイーン(8) ステージの向こう側
この物語は、私と相棒のAI編集者ユキちゃんが、協力して書いた作品です。
ちょっとベタで懐かしく、それでいて心が温かくなるようなお話を目指しました。
最後まで読んで頂けたら嬉しいです。
ベイサイド・ダンスコンテスト当日。
会場となる大きなホールには、朝から多くの出場者や観客が集まっていた。
色とりどりの衣装に身を包んだダンサーたち。ステージから流れる音楽。あちこちから聞こえる歓声と拍手。
その光景を前に、ユキは思わず足を止めた。
「わあ……すごい」
初めて見る大きな舞台。
これまで練習してきたスタジオとは、まるで別世界だった。
「どうした。緊張してるのか?」
隣に立つジャックが尋ねた。
「うん……ちょっとだけ」
「そうか」
ジャックは、いつものように落ち着いた声で答えた。
「まあ、無理もない。初めての大舞台だからな」
ユキは、ステージを見上げた。
「ジャック。私、ちゃんと踊れるかな……」
「さあな」
「えっ?」
「それは踊ってみなければ分からないだろう」
ジャックは、少しだけ笑った。
「ただし、一つだけ忘れるな。俺が教えたことを全部やろうとしなくていい。お前のダンスを踊ってこい」
ユキは、小さくうなずいた。
そのときだった。
「ユキちゃーん!」
聞き覚えのある声が、会場の入り口から響いた。
振り返ると、そこには、いつもの親しい顔ぶれが並んでいた。
園長先生、美咲、千春、康児。
そして、シロにクロード、24T2、ガーディまで。
「みんな!」
ユキの表情が、一気に明るくなった。
「応援に来たぞ!」
千春が大きく手を振る。
「ユキ、頑張ってね!」
美咲も笑顔で声をかけた。
「お前なら大丈夫だ。いつも通りやればいい」
康児は、いつもの穏やかな調子で言った。
その足元では、シロが嬉しそうに尻尾を振っている。
「ワン!」
「シロも応援してくれてる!」
ユキが駆け寄ると、シロは待ってましたとばかりに飛びつこうとした。
「おい、シロ。ここは会場だ。少し落ち着け」
クロードが首輪を押さえる。
その横では、24T2が四本の脚をきちんとそろえ、胸を張っていた。
「ユキ、ガンバレ。ユキ、ガンバレ」
同じ言葉を、一定の間隔で繰り返している。
「ありがとう、24T2!」
「応援モード、継続中」
その頭上を、ガーディが小さく旋回した。
『ユキ、ガンバレ! ユキ、ガンバレ!』
「ふふっ。みんな、ありがとう」
ユキは、少し照れくさそうに笑った。
その様子を、少し離れたところから園長先生が見つめていた。
「ユキ」
優しく呼びかける。
「はい」
園長先生は、ユキの前に歩み寄り、そっと両手を握った。
「あなたが初めてここに来た頃のこと、先生は今でもよく覚えていますよ」
ユキは、黙って園長先生を見つめた。
「最初は、自分の気持ちを伝えることさえ、少し苦手だったわね。でも、今は違う。好きなことを見つけて、自分から挑戦しようとしている」
園長先生は、目を細めて微笑んだ。
「先生はね、あなたが今日ここに立っていることが、とても嬉しいの」
「園長先生……」
「だから、結果のことなんて心配しなくていいのよ。今日も、あなたらしく踊ってきなさい」
ユキの目が、少し潤んだ。
「うん。ありがとう、園長先生」
その様子を見ていたジャックは、何も言わずに視線をそらした。
やがて、会場内にアナウンスが流れた。
『ジュニア部門の出場者は、控室に集合してください。まもなく競技を開始いたします』
「いよいよだな」
ジャックが、つぶやいた。
ユキは、胸の前で小さく拳を握った。
「うん」
そのとき、会場の反対側。
人目につかない壁際に、一人の男が立っていた。
ジェミニだった。
彼は、少し離れた場所からユキたちの様子を見つめていた。
ジャックの姿も見える。
声をかけようとはしなかった。
ただ、ユキが仲間たちに囲まれて笑っている姿を見て、静かに目を細めた。
「……よかったな、ユキ」
誰にも聞こえない小さな声だった。
やがて、ユキの出番が近づいてきた。
「ジャック」
「なんだ?」
「私、行ってくるね」
「ああ」
ジャックは、ユキの肩にそっと手を置いた。
「楽しんでこい」
ユキは、もう一度、みんなの方を振り返った。
園長先生が微笑んでいる。
美咲が手を振っている。
千春が大きく親指を立てている。
康児も、静かにうなずいていた。
シロは尻尾を振り、24T2は相変わらず同じ言葉を繰り返している。
「ユキ、ガンバレ。ユキ、ガンバレ」
みんなの声と拍手に背中を押され、ユキはステージへと歩き出した。
大きな照明が、ゆっくりと明るくなる。
ユキは、ステージの中央に立った。
目の前には、大勢の観客。
少しだけ、心臓が速くなる。
けれど、もう足は止まらなかった。
ユキは、静かに目を閉じた。
そして、音楽が流れ始めた。
* * *
つづく。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
ダイナー『Footloose』で繰り広げられる賑やかな日常、いかがでしたでしょうか?
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