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私の居場所を見つけてください。  作者: 葉方萌生
第一章 廃病院からの誘い

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◾️八月二十三日土曜日Ⅲ

 帰りの新幹線の中で、清葉病院のことを調べようと、再びネットで「清葉病院」と検索をかけた。昨日調べたときはろくな情報も出てこなかったけど……。

 昨日はそこまで熱心に検索結果を見ていたわけではないので、もっと深く潜れば何か情報が見つかるかもしれない。何かに突き動かされるようにして、検索一覧をスクロールしていく。一ページ目は、やっぱり清葉病院が二十五年前に閉業したという情報が簡易的に記されているだけだった。その下には、同じ名前の別の病院の情報が連なっている。

 二十五年も前に閉業した病院の情報なんて、これ以上出てこないよね。

 ネットの情報はアップデートを繰り返す。一番詳細に「清葉病院」について書かれた記事も、病院の住所と、院長の名前が記されているだけだった。


清葉武彦(きよばたけひこ)……」


 名前を見たところで気になって、検索窓に「清葉病院 院長」と打ち込んだ。検索ボタンを押すと、気になるタイトルの記事を発見した。


『元産婦人科開業医清葉武彦が自殺。清葉病院の屋上から飛び降り』


「自殺……飛び降り?」


 不穏なワードが出てきて息をのむ。

 まさか……院長が、清葉病院の屋上から飛び降りて自殺……?

 その事実自体、とても驚いた。が、一つの疑問が生まれる。

 清葉病院は見たところ二階建てのようだった。屋上があるとは知らなかったが、そこから身を投げたとして、致命傷に至るのだろうか。

 疑問に思いながら該当記事のタイトルをタップした。


「2013年6月20日、岩手県某市で産婦人科清葉病院にて開業医だった清葉武彦氏(60)が病院のそばで頭から血を流して倒れているところを近くの住人が発見し、通報した。その時、清葉氏はすでに亡くなっており、周囲の状況から、病院の屋上から飛び降りて自ら命を絶ったものと推測される」


 事実のみを伝えるシンプルな内容だった。

 「頭から血を流して倒れている」とあるので、頭から落ちたのかもしれない。だとすれば、二階建ての建物の屋上からの落下でも亡くなることもあるだろう。

 それにしても、院長が自殺をして亡くなっていたなんて……。

 二〇一三年なら、今から十二年前の出来事だ。病院は二十五年前に廃業しているとのことだから、廃病院の屋上から飛び降りたのか。なんて痛ましい事故……いや、院長は自殺なのだから、事故というわけではない。院長にどんな悩みがあったのか分からないが、命が誕生する場所である自らの産婦人科病院で自殺を図るなんて。皮肉にも程がある。

 だが、院長があの場所で自死しているのだとしたら、清葉病院のあのおどろおどろしい空気感や、私や“シンちゃん”が経験した怪奇現象にも納得できるところがある。

 あれは……さっきのは、院長の霊だったのだろうか。

 ワタシ……ハ……ドコ……。

 あの声は小さな子どもの声のようにも聞こえたが、幽霊に年齢が関係あるのか分からない。院長の無念が詰まったあの場所だからこそ、他の霊の魂が引き寄せられているとも考えられる。どちらにせよ、院長が清葉病院で命を絶っているという事実は新事実だ。動画を編集する時にどこかに説明を入れよう。

 さっき自分が怖い目に遭ったばかりだというのに、もう動画配信のことを考えてしまう自分の思考がイタい。怖い思いはしたけれど、撮れ高はあるんじゃないだろうか。必死で逃げたのでまだ動画は見返していないけれど、きっと何か映っている……はず。

 動画は家に帰ってからゆっくり見返すとして、私はさらに、検索画面をスクロールしていった。

 ページを何度かめくっていくと、四ページ目あたりで、気になるタイトルを発見した。


『ブログをやめることにしました。清葉病院も今日で辞めます』


「清葉病院」というピンポイントのワードに目が留まった。思わずタイトルをタップすると、それは昔からある無料ブログだった。おそらく、かなり古いものと思われる。勤め先名をそのまま記載しているところが、年代の古さを感じさせる。今の時代だったら怖くて個人情報をネットに載せられない。ブログサービスが開始してすぐに使い始めたようで、その記事自体、二十五年前のものだった。ブログの日付は二〇〇〇年三月二日。

 ここでも二十五年前……。

 清葉病院が廃業したのも二十五年前。ブログの主は病院を辞めると書いているので、廃業と関係がありそうだ。私は、ブログの内容にゆっくりと目を通す。集中していると、新幹線の走るゴオォォ、という音が聞こえなくなった。


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