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第五話 桃田の視点

桃田くんの視点!出来るだけ合わせたいのですが…やっぱり難しい

僕は、人の「静けさ」に弱い。


顔を上げない。会話もしない。なのに、そこにいる。

音がしないのに、存在だけがちゃんと残るタイプ。


そういう人が、なぜか僕にはやけに目立つ。


今朝、廊下ですれ違った男の子が、まさにそうだった。

一瞬だけ振り返ったけど、その横顔が妙に残った。


黒髪は少し無造作で、前髪が片目にかかっている。

整ってるというより、どこか幼さが残る顔。

口元はきゅっと結ばれていて、感情を外に出さない。


そして何より、目。


一瞬しか見えてないのに、鋭い。

睨んでるんじゃない。

静かに「見抜こう」としてる視線。


ホームルームで、転校生として前に立った黒木くんは、表情には出してないけど、

廊下に見た顔と違って、少し動揺してるように見える。きっと緊張してるのだろう。


だから、つい言った。


「ゆっくりで大丈夫だよ」


たったそれだけで、黒木くんの肩がほんの少し落ちて、

……ほんの少しだけ元の顔に戻った気がする。


胸の奥が、変にあったかくなる。

力になれたかな、って。



隣の席になった黒木くんは、やっぱり静かだった。


視線は黒板。返事は短い。

でも、たまに、こっちを見る。


チラ、と。

たぶん本人は「見てないつもり」のやつ。


……嫌じゃない。

むしろ、ちょっとだけ嬉しかった。


だから、色々聞いた。

聞きすぎた。話しすぎた。

宇宙人まで行った。


そして――


「あのな、さっきから少し……う、うるさい」


心がひやっとして、

刺さったのは言葉じゃない、黒木くんの顔だ。

言った瞬間に、もう後悔してる顔。


あ、この人、優しいのに、

無理してる顔。

人との付き合いに自身がないのかな?


だったら僕は、距離を戻すべきだ。


だから授業中、視線を感じながらも、できるだげ黙った。



(数学)


うちは進学校だし、得意って言った瞬間に潰しに来る。

黒木くんは一瞬だけ迷った顔をした。

でも次の瞬間には、もう板書を追っていた。


速い、迷いがない。

小春と同じ手つき。


……かっこいい、って思ってしまって。

それが悔しい。


僕はページを開いたまま固まって、つい口から出た。


「O……“原点”。なんか……人生みたいだね……」


そう、原点。


ゼロ。何もない場所。

そこから全部が始まる――って、言葉にすると綺麗なのに。


実際は、ゼロに立つのが一番怖い。

ここから先は全部「結果」になるから。


やった分だけ進む世界なら、僕だって頑張れる。

でも、勉強って、たまに残酷だ。


頑張ったのに報われない日だってある。

報われないどころか、頑張った事実だけが痛みになる日がある。


僕は数学《理学》が嫌いなんじゃない。

途中どれだけ頑張っても、最後の答えが違ったら――

全部、否定された気分になる。


努力が努力として残らない。

誤差ひとつで、全部ひっくり返る。

その可能性が、嫌いなんだ。


……だからこそ、隣の彼に聞いた。


「ねえ黒木くん。ちょっとさ、真面目に疑問なんだけど」


「勉強して取れたら因果。

勉強しないで取れたら天賦。

勉強しないで落ちたら運命。

……しかし勉強して落ちたら、僕に残されるものは「無」だ。」


僕はときどき、わざと難しい言い方をする。

半分は本気の疑問で、自分に向けた問い。

もう半分は――ただ、誰かの視線を、僕の方に向けたくて。


「私たちは答案を求めると同時に、新たな問題に踏み入れる」


確かに、答えを探してるつもりで、いつのまにか別の問いに足を取られる。

勉強も、人付き合いも、たぶん同じ。


「思考すると同時に、今までの認識を転覆して……それでもまた、新しい答えを求め始める」


口にした瞬間、いつもの予感もする。


「だから、あなたが追求するのは本当に答案そのものなのか?」


——どうせ、またスルーされるか、笑われる。

「何言ってんの?」って、軽く片づけられる。


この言葉は、半分は黒木くんに。

半分は、ノートが取れそうな手に。


冷静になれ…一回だけ座標を見れば、あとは自分で追える。……たぶん。

そしてこっそりに戻せば……


僕の指先が、ノートの端に触れかけた。


「手、見えてます」


低い声。

静かで、でも逃げ道のない声。


……え?


時間が止まったみたいに、手が固まる。


「わああああ!」


恥ずかしい。

素直に「数学得意じゃないから、見せて」って言えばよかったのに。

なんでこんな……。


これで完全に、変なやつ認定だ。


って思ったのに。


え、なにこれ。説教?

もしかして、まだセーフなの?


黒木くんは笑わなかった。

見て見ぬふりもしないし、適当に流しもしない。


その目で、まっすぐに――僕の問いを、問いとして受け取った。。


胸の奥が小さく鳴った。


この人、いつもと違う。

僕の中身に、からかわずに触ってくるタイプだ。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます!


自分は文章の投稿などすべてはほぼ初めてで、

まだまだ勉強中です。気になるところがあれば、

そっと教えていただけるととても助かります。

感想や指摘など一言でも

反応をいただけると、ものすごく励みになります。

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