第四話 桃田の弱点
いろいろ長い文を訂正して、できる限り流れにフォーカスして書いてみました!
とある理屈で殴ってくる系女子に、きっちり論破されてしまった。
この人――鈴宮小春は、俺が思っていた以上に奥が深い。
説明も気遣いも丁寧で、たぶん育ちがいい。たぶん、だけど。
そう考えている間に、隣から視線を感じる。
「……じー」
「あの……桃田さん、どうかしましたか? 俺、そんなに見られるようなことはしてないと思うけど」
「ううん? こっちが先に話しかけたのに、小春とずいぶん長く話してるな〜って思って。
それと小春、いきなり長話は禁止。黒木くんはああいうのちょっと苦手そうだよ? うるさいって思われちゃうよ?」
おいおい、呼び捨てかよ。……まあ、別にいいけど
そう言われた瞬間、小春は一瞬だけ固まってから、ふっと笑った
「あ、私の方こそ。久しぶりにああいうタイプの話し方する人と会ったから、つい盛り上がっちゃって……二人の邪魔して、ごめんね、桃田くん?」
え、機嫌悪いのか?
「別に邪魔とかはないよ……それに、さっきの授業前のカオスな状況を作ったの、話題を振った僕だし。なんか、その……ごめんね?」
「俺もその話に乗って、勝手に熱く語り出しただけだから。君のせいじゃないよ」
「へへ……黒木くん、すごく緊張してるように見えたからさ。
力になれたらいいなって思って、つい色々聞いちゃった。
本が好きって聞いたら、余計にテンション上がっちゃって……はは……」
その話が終わったところで、授業のチャイムが鳴った。
「じゃ私席に戻るね、また後で」
二限目は数学。
いつもなら国語の眠気が残ってる時間なのに、今日は妙に目が冴えていた。
……さっきの件で、変なアドレナリンでも出てるのか。
「はい、60ページ開いて。今日は二次関数と図形の融合問題、できないと感じたら各自復習。一年の内容はもうやらないぞ」
ページをめくった瞬間、反射で思った
……これ、脅しに来てるな。
いきなり入試過去問かよ。
ふん、ふん、なるほど……冷静に見たら結局いつも通りだ。
高校数学もなにも、結局いつも通り、順番に潰すだけか。
俺は、少しだけ気が楽になって、隣を盗み見た。
桃田は──国語のときは教科書の余白に綺麗な字でメモして、先生の雑談まで拾ってたくせに。
今は、ページを開いたまま、完全に固まっている。
蛍光ペンも動かない。視線だけが文字の上を機械的に滑っている
……いや、分かる
俺も国語でそれやってた、壁画を描くやつだ!
桃田は図の「O」を見て、小さく呟いた。
「O……"原点"。なんか……人生みたいだね……」
……マジか
まだ問一だぞ? 中一の内容だろ?
すると桃田が、助けを求めるみたいに視線だけ寄こしてきた。
俺は咳払いして、できるだけ平静にノートを開いた。
さっきの仕返しだ。それに――数学なら、俺は負けない。
そうして余計なことを考えるのをやめ、板書を追う
――チャイム
ようやく息をつく。ペンを置いた瞬間、隣が、ぼそっと言った
「ねえ黒木くん。ちょっとさ、真面目に疑問なんだけど」
「はい、どうぞ」
「勉強して取れたら因果。
勉強しないで取れたら天賦。
勉強しないで落ちたら運命。
……しかし勉強して落ちたら、私に残されるものは「無」だ」
「……」
「私たちは答案を求めると同時に、新たな問題に踏み入れる」
なんか始まってる……。
「思考すると同時に今までの認識を転覆し、そしてまだ新たな答案を求め始める」
「はい……」
「だから、あなたが追求するのは本当に答案そのものなのか?」
その言葉の途中で、桃田の手が、俺のノートへ伸びてきた。
いや、普通に見えてる。
「手、見えてます。」
「わああああ!」
「ノートは見せません。自分で解いてください。
あなたのためですよ。自分で一回考えてるならまだしも、最初からはダメです。
あと、初対面でそれはナイ」
桃田は肩を落とした……ふりをしながら、まだ手を伸ばしてくる。
こいつ、反省してない
「で、さっきの質問だけど——」
「え?」
「俺が追いかけてるのは、冷たい点数じゃない。
……大切な人に、これ以上心配させないための証明だ。
誰かを安心させられるってこと。
『こいつなら大丈夫』って、思ってもらえる人間になるってこと。」
「く、黒木くん……きみ……」
「何もしないより、失敗の方がマシさ。魚を与えるか、魚の釣り方を教えるか。
そういうの、あなたの方が詳しいんだろ?」
そこで、後ろの席から冷静な声がした
「そんなカッコいいこと言うくせに、国語のとき黒板より桃田くんを見てたよね?
ノートも板書の丸写しだし、人のこと言える?」
「……はい?」
振り向くと、鈴宮さんが冷たい顔で立っていた
「だーかーら。桃田くんは馬鹿だけど、それくらいの理屈は分かってるの。
そういうときは——」
言い終わる前に、「パン!」という音が
「……っ!」
小春が取り出した木刀が、桃田の頭に落ちた
「鈴宮さん、なんで木刀を学校に……てか、どこから出したんですか!?」
「おい! ツッコミはこっちが先だろ! って、あれ? この問一、普通に座標出したら解けるじゃん?」
本当に治った!?何故だ?この現象は何学に属するんだ?
「ね? そういうことですよ? 黒木くん
あとこれ、うち実家が神社なので……お守りみたいなものです」
そして小声で付け足す。
「……一応、銃刀法違反したくないので」
そして、教室の後ろから無慈悲な声。
「鈴宮。没収」
「没収」と聞いた途端、小春は背筋を正し、なぜか巫女みたいに言った
「はい、奉納します」
鈴宮さんは一礼して木刀を差し出す。
「あ、ちなみに黒木くん。あの村人そのAみたいな顔してる人、うちの風紀委員ですよ」
風紀委員は木刀を抱えたまま、無言で去っていった。
教室の空気が、すっと現実に戻る。
そして、昼休み。
この時間は、会話が得意なやつの領域だ。
桃田が何か言い出す前に、俺は席を離れた。
動作は最小限。足音も最小限。
気づかれたのは、たぶん――三秒後。
「黒木くん?」という声が背中に届く前に、
俺はもう廊下の人波に紛れていた。
……一人で食いたいだけだ。たぶん。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます!
自分は文章の投稿などすべてはほぼ初めてで、
まだまだ勉強中です。気になるところがあれば、
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