第一話 観察したくなる
はじめまして。作者のショウフウフウです。
この作品は、理屈っぽい科学好きの転校生・黒木日和と、
和菓子屋の息子で本好きな文芸部男子・桃田春臣の、
ゆっくり進む中学生BL、日常会話多めです。
小説を書くのも投稿するのもほぼ初心者なので、
拙いところも多いと思いますが、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
※ゆるいボーイズラブ要素を含みます。苦手な方はご注意ください。
「ね? 聞いてる? 今日、うちのクラスに転校生が来るんだって〜!」
「えっ、マジ?剣道部、あと一人足りてないんだよな」
「うちの文芸部も幽霊だらけだよ〜」
――転校生。
その単語が耳に刺さった瞬間、胸の奥がざわついた。
気づけば俺は、いつもと違う通学路を歩んでいた。
「……これで何度目だろう」
俺の名前は黒木日和。
この夏、栗ヶ丘中学に転入してきた転校生だ。
母の仕事の都合で、幼い頃から転校ばかりしてきた。
「日和って、女の子みたい」
そう言われて笑われた回数だけ、人間関係がリセットされた。
会話は下手。距離感はもっと下手。
だから、誰かの何気ない雑談すら、俺には眩しく見える。
どうせ俺には青春なんて――
否、絶望はまだはやい!
こういう傾向も、生物学的・社会学的には説明がつくはずだ。
人間は社会的動物で、集団に適応できる個体が多数派になるのは合理的だ。
でも遺伝的多様性ってやつがある。全員が同じ性格である必要はない。
つまり俺は、「社交性が欠けている」じゃなくて、たぶん種族のバリエーションだ。
そう結論づけて、ひとりで納得していると、
そう思いながら一人で歩いていると、
「おっはよ〜!」
背後から明るい声が飛んできて、誰かが俺の横を駆け抜けた。
小柄で、淡い桃色の髪。草木みたいな緑の瞳。
すれ違った一瞬、ふわっと甘い匂いがした。
石けん、じゃない。香水、でもない。
朝の空気の中で、やけにはっきり残る、和菓子みたいな優しい匂い。
――なんだ、今の。
俺が立ち止まる間に、その背中はもう人波に溶けていった。
ホームルームが始まる直前、
担任が教室の扉を開けると、ざわつきがぴたりと止まった。
「はい、静かに。今日からこのクラスに転校生が入ります。黒木日和くん、どうぞ」
前に呼ばれる瞬間、心臓が一段と重くなる。
知らない顔、知らない空気。俺は息を整え、前へ一歩踏み出した。
「じゃあ黒木くん、自己紹介をお願いします」
視線が一斉に集まる。
転校生として自己紹介をするのなんて、もう何回目か分からない。
それなのに、こうやって教室の前に立たされるたびに、毎回ちゃんと緊張する。
落ち着け。これはただ生体反応で……
そう思うとき、突然声がした。
「ゆっくりで大丈夫だよ」
小さいのに、まるで背中を撫でられたみたいに、空気が緩んだ。
誰だろうと見ると、窓際で、穏やかに微笑む男子がいた。
今朝、あの匂いと一緒に通り過ぎた――あいつだ。
「く、黒木日和です。よろしくお願いします」
それだけ言って、早く終わってほしいと願った瞬間。
「君の席は……桃田くんの隣だね。案内してあげて」
教室に軽いざわめきが走った。誰かが何かを囁き、笑い声が漏れる。
どうせ、自分の声の低さと名前のせいでしょう。
「黒木くん、ここだよ」
桃田が立ち上がり、俺を席まで案内してくれた。
近くに来ると――また、あの匂いがする。
席に座る瞬間に
「もし分からないところがあったら言ってね」
「……ありがとう」
言葉は短いのに、胸が温かくなる。
こんな柔らかい声が実在するのかと、理性が少し乱れる。
ふと見ると、桃田の机は整っていて、字も綺麗で、清潔感がある。
静かで、丁寧で――どこか魅力的だ。
……魅力的?
いや待て。相手は男だぞ。
同性に向けて、こんな感情があっていいのか?
……あっ。なるほど。
これ、まさか友情ってやつか?
そう思うとき、俺はさりげなく桃田を見た。
すると桃田は、俺の視線に気づいたのか、軽く笑ってみせた。
その笑顔が、やけに直撃した。
俺も反射で笑顔を作って返して、すぐに視線を逸らす。
心臓が一回、余計に鳴った気がした。
……もしかして俺、こういう好意を向けられたの、初めてなのかもしれない。
今までだって、話しかけられないわけじゃなかった。
でも――俺の性格と外見を見て、みんな途中で距離を取る。
そういうパターンばかりだった。
だから、ずっとぼっちだった俺は、人間観察だけは何度もやってきた。
どこで「面倒なやつ」扱いに変わるのか。
先に知っておけば、傷つかずに済むから。
けれど、初対面の相手に対して、こんなに自然に優しくできる人間は――
俺の過去の記憶には、ほとんど存在しない。
この温かさも、家の外ではあまり味わったことがない。
だからこそ、余計に、落ち着かない。
桃田。
この人、ちょっと観察したくなる。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます!
自分は文章の投稿などすべてはほぼ初めてで、
まだまだ勉強中です。気になるところがあれば、
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