10 選り取り見取り
「やって参りました第三十七回『ステファニーちゃまの義妹になれる幸運なご令嬢は誰だ』選手権。司会兼実況はあたちアーシラ・タモズット伯爵夫人」
「解説はわたくし、ティル・トモクーミ男爵令嬢が行います」
ステファニーの隣から、両者がよく見える真横へ移動した友人二人が三十七回目の実況・解説を始めた。
手慣れたもので、簡易的な実況席まで作っている。
「さあ本日のエントリーは三名。前回で八十名となりましたこの選手権。王都も地方も関係なく惑わすのはお姉様譲り? シュテインちゃまをお婿に迎えるのはだーれぇだ!」
嘘みたいな数字でしょう?
マジなのよ。
「エントリーナンバー八十一番! ピンクゴールドの髪に赤いリボンがよく似合うユイキャワ子爵令嬢! 年齢はシュテインちゃまと同じ十七歳。夜会でしつこい男に誘われて困っている所をダンスのお誘いで助けてくれたシュテインちゃまに首ったけ令嬢ですぅ」
「一回踊ってスマートに立ち去るシュテイン様は罪な男です」
ユイキャワ令嬢は頬を染めて、照れくさそうにステファニーを見上げている。
しかし視線は逸らさない。その心意気はよし。
「エントリーナンバー八十二番! 金髪ウルフカットのレデンツ男爵令嬢! 高身長のスレンダー美女はなんと十五歳! デビュタントに見えない年齢詐欺だと疑われた所を、貴族図鑑で今年デビューの人物をしっかりチェックしていたシュテインちゃまに助けられてからドキドキで夜も眠れない青春令嬢ですぅ!」
「お礼を言いたくても見つめ合うと素直におしゃべりできない尖った性格ですが、アクが強い方がステ様好みだとは思います」
真っ赤な顔でむむっと唇を引き結び、こちらも挑むようにステファニーを見ている。
ステファニーの好みかと聞かれたら、好みだ。
「エントリーナンバー八十三番! なんとステファニーちゃまより年上の二十一歳。ミジンボーウ夫人。夫に先立たれた二歳の子持ち。求めるのは領地経営のノウハウがあって自分の血筋じゃなくても跡継ぎとして受け入れてくれる懐の広い令息ですぅ!」
「年上の義妹希望者が再び現れました。以前は十歳差と年齢差がありましたが今回は四歳差…シュテイン様の懐が広くて常識的なのは誰もが知っている事実…条件次第ですが、年下の旦那様に色々教えてあげる年上妻の関係性はステ様にどう響くでしょうか」
どう響くか? とっても強く響いている。
本人は申し訳なさそうに眉を下げているが、この場から逃げ出す様子はない。覚悟は決まっているようだ。
「以上三名。さあ、選手が出そろいましたぁ…あまりに人数が多く小刻みに開催されているこの企画。ステファニーちゃまに誑かされずにシュテインちゃまに辿り着ける人はいるのでしょうかぁ~」
「義妹アピールに惑わされたステ様が相手を口説かずにいられるのか。口説かれても切り抜けることができるのか。注目が集まります」
「第三十七回『ステファニーちゃまの義妹になれる幸運なご令嬢は誰だ』選手権。これより開催いたしま」
「三十七回も何をしている――――!!」
「「あっ」」
アピール前に通りすがりのシュテインが乱入してきた。
なにげに今までばれていなかったのだが、とうとうばれてしまった。
ステファニーは即座に立ち上がり、エントリー選手達を守るように前に出た。
「ばれてしまっては仕方がない…さあ! この中からとは言わないわ! 好みのタイプを教えて頂戴!」
「この中にいたとしても姉様には絶対教えません…!」
「あらやだ聞いた…? この中にいる可能性があるそうよ。自信を持って挑戦していって。私の弟は私と違って生真面目だから急に押し倒すのだけはダメよ。まずは距離を詰めるの。警戒はするけれど令嬢に冷たくできない子だから大丈夫。逃げられないように少しずつ堅実に、地道に距離を詰めて油断した時に女を魅せるのよ」
「本人の前で弟を陥落させる手解きをするな!」
――誠に遺憾だったが、本日のお茶会はそのまま閉会となった。
お茶会もだが、本人が乱入したため第三十七回の義妹選びも中止になった。
「野暮な子ね」
「そういう問題ではありません…!」
令嬢達の戯れに飛び込むなんて、なんて無粋な男だろう。
内容が内容なので誰も怒っていなかったが、エントリーしていた令嬢達はばれてしまったので近いうちにお伺いのお手紙が来るかもしれない。
目撃していた令嬢達の中にも、過去エントリーしていた令嬢が居る。
ステファニーの所で止まっていた情報だが、こうしてステファニーが義妹捜しをしていたとシュテインが知ってしまったので、遠慮なくお手紙お誘い婚約の打診が雪崩れてきそう。
だって想いがばれたなら引くのではなく、押さねばならぬ。
好敵手がいるとわかっているのなら尚更、押さねばならぬ。
引いたところで追ってくれるのは、両片想いの相手だけだ。
おもしれー女を感じ取った愉快犯の場合もあるので、おもしれー女は気を付けて。
開催回数と人数がとんでもない。
決まらない理由、相手が見付からないというより相手が多すぎて決められない、でした!
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