「愛の逃避行」
戻る。戻る。また婚約発表の前に戻る。また、メアリーは失敗した。今度はひかりには毒杯を、ラインハルトにはナイフを、別々の殺し方をした。兵士達はメアリーを取り押さえようとする。だが、メアリーの手を何かが強く引いて人混みに逃れた。城の外まで連れられて走った。手を掴んだ人の顔を見る。
「ルイ?!」
「メアリー様!一緒に逃げましょう!!」
「何を言ってっ?!」
ルイはメアリーの手を引っ張って走る。走る走る。路地裏に着いた。
「はぁ、はぁ。」
「ここまで、くれば……」
「おいっ!見つけたか?!」
「いえ!まだです!」
追っての声が聞こえる。
「……くそっ!」
追ってはしつこくついてくる。メアリーはため息をついた。そして微笑む。
「ルイ、ありがとう。もういいの。私、処刑されに行ってくる。」
「何を?!そんなことっ……!」
メアリーはルイの手を振りほどくとそのまま追っての方へ歩いていく。
「……やめて、ください!」
ルイはメアリーの腕を掴んで止める。
「いいのよ。私が犯人なんだから。悪女は処刑される運命なのよ。」
今までで1番の笑顔でメアリーはそういう。
「っ!」
ルイの手がメアリーを包み込む。後ろから抱きしめられる。
「ルイ?」
「行かないでください!僕はっ!」
「……ありがとう。でも、ごめんね。貴方は逃げて。」
ルイの手をふり解いて追っての方へ歩いてゆく。
「待ってっ!!」
「おい、いたか?」
「いえ……」
「いるわよ?ここに!」
「メアリー様ーー!!!!」
兵士達はメアリーを捕らえる。ルイはそれを止めようとするが、兵士達に邪魔されてメアリーの元へと辿りつけない。メアリーは連れていかれた。
「あ、ああっ……うわぁああああああっ!!」
地面を殴る。拳から血が滲む。貴方の為に、貴方の幸せの為に、生きたかったのに……。数日後、メアリーの首が広場に晒された。
「ねえ?戻りたい?」
黒猫が話しかけてきた。ついにおかしくなったのかと思ったが何度も話しかけてくる。
「メアリーを助けたいだろ?」
他の人間には聞こえていないようだった。
「救いたい!救いたいけど!僕には……、オレにはっ!何も、でき、ない……。」
「君にチャンスをあげるよ。過去に戻るんだ。そしてメアリーを救ってあげな?」
「へ?そんな、こと……。」
「できる。ボクは悪魔だから。できるよ。」
「悪魔でも、なんでもいい!彼女を救えるなら!!」
「いい返事だ!」
猫は笑う、醜悪な笑顔で……。
戻る。戻る。戻りたい。貴方に会えるならっ!!