「あの日のままで……。」
窓を開けると黒猫は部屋へ入ってきた。メアリーは黒猫に話しかける。
「ねぇ、サタン。もっと前からループできないの?」
「仕方ないなぁ。君には期待してるからもっと前からループさせてあげてもいいよ。」
「ありがとう!さすが話しがわかる”猫”は違うわね。いや、話しがわかる”悪魔”は違うわね。」
そう、この黒猫はただの黒猫にあらず、悪魔なのだ。サタンは感慨深いような顔をした。
「今でも君との出会いを思い出すよ。」
牢屋に入れられたメアリーの元に猫が迷い込む。
「やぁ、君、困ってるだろ?」
「ね、猫が、喋った?!」
「ボクは猫じゃない!悪魔さ!名前はサタン!」
「は?そんなわけ……」
メアリーは幻覚でもみたいるのだろうかと疑いの目で見る。
「ボクは優しいから君みたいな困ってる人を放っておけない。」
「なによ、それ。猫のお前に何が分かる!?」
「わかるよ!1人で寂しくて、強がることしかできないんでしょ?!」
「黙りなさいっ!!私の事、何も知らないくせに!!勝手な事っ……」
「知ってるよ」
「は?」
「ボクは悪魔だから君の過去ぐらい見れる。君を過去に戻してあげよう。」
「そんな事、できるわけ……。」
「できるさ!ボクと契約を結んでくれたらね!」
「契約?」
「そう!君をこんな目に合わせた奴らが憎くはない?」
「…………憎い!」
「なら、過去に戻って復讐するんだ!」
「そんな事できるわけ……」
「できる!さあ、目を閉じてご覧。」
目を閉じる。
「眼を開けてみて。」
眼を開いた。そこは牢獄ではない。自室だった。カレンダーを見る。過去に戻っていた。
「ボク達悪魔は人の不幸が大好物!だから、契約って言っても君の憎い人達を不幸にしてくれるだけでいい!どうだい?いい話だろ?」
「……その話、受けてあげる。」
★★★★
「そんな事もあったわね。」
「で、どこまで戻りたいの?」
「そうね。私があの男の婚約者になった時からって、不可能かしら?」
「かなり戻るね。……いいよ!戻してあげる。君には期待しているからね!」
「ありがとう。」
メアリーがサタンに背中を向けた。この時、サタンは世にも醜い顔で笑っていた。
過去に戻る。
「メアリー・バートリーを婚約者とする!メアリー、よろしく!」
ラインハルトはそっと手を差し出した。まだ、幼い彼に会うのは久しぶりだ。
「はい、よろしくお願いいたしますわ。」
この頃のままいられたらどれだけ良かっただろう。そう思うと胸が傷んだ。