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第9話: コボルトの怒り

かつて、コボルトたちは山間部に広がる大自然の中で悠々と暮らしていた。狩猟に長け、堅牢な種族として生き延びてきた彼らだが、時代は変わりつつあった。オーク、リザードマン、ウルフマンたちが次々と勢力を拡大し、コボルトの縄張りに侵入してきたのだ。長きにわたる抗争の末、コボルトたちは拠点を失い、やむなくこの洞窟の近くに移住してきた。


「このあたりなら平和だろう…。」

リーダーであるハイコボルトはそう思っていた。種族を守る為に決断した事だが、生まれ育った故郷を離れるのは辛い。何より自分の力不足で仲間に辛い思いをさせているのが悔しかった。


だご、この新しい土地は大丈夫だろう。水はあるし、食糧も豊かで他の魔物の脅威も少ない。時折ゴブリンの姿を目にすることがあるがゴブリンは種族的に弱者だ。戦う価値もないと判断し、コボルトたちは彼らを無視していた。たまに突っかかってくる者も居たが、軽く蹴散らしていた。だが、最近、何かが変わり始めた。


「またか…」

一人のコボルトが、苦い顔をしながら報告を入れてきた。

「今日も、仲間の死体が見つかりました…。何者かに襲われて…」

「……これで何人目だ?」

ハイコボルトの低い声が洞窟内に響き渡る。抑えきれない怒りで場の緊張感が高まった。


「!!…。 こ、これで9人目です、ボス…。」

部下は肩をすぼめながら答える。


「…クソがぁ!!」

ハイコボルトは拳を握りしめ、洞窟の壁を叩いた。日に日に減り続ける仲間たち。誰が、どのように彼らを狙っているのかはわからない。敵の姿を捉えた者は、誰一人として戻ってこなかった。こちらにはオークやリザードマンの様な亜人種、若しくは我々を脅かす様な存在は居なかったはずだ。

だが、実際連日1人、また1人と消されている。小賢しい事に1人でいる所を襲撃しているようだ。冒険者の線も考えたが、こちらは誰も人間の姿を見ていない。更に襲撃は夜に行われている。夜目が効く者の犯行に違いないはずだ、そして知恵のある者だろう。


「犯人は考えにくいですが…、ゴブリンではないかと推測します。」

別の部下が、おそるおそる口を開く。

「…ゴブリンだと?あの連中が、我々を襲っていると?」

ハイコボルトは鼻で笑った。ゴブリンのような脆弱な種族が、コボルトに対してこんな大胆な攻撃を仕掛けるとは思えなかった。


「ですが、他の敵の痕跡は見つかりませんし、狩りの方法も変則的です。弓や短剣を使い、闇に紛れて襲ってくる…。それがゴブリンなら、進化して力を得た個体がいる可能性が高いかと。」


しばらくの沈黙が続く。洞窟の中にこだまするのは、部下たちの不安げな息遣いだけだった。


「…ふむ。」

ハイコボルトは腕を組み、じっくりと考え込んだ。確かに進化後なら可能かもしれない。実際、コボルトにも特殊な進化を成し遂げた者もいるし、能力が上昇してるなら暗殺も容易いはずだ。

もし本当にゴブリンが原因なら、これまでの状況を変える時が来たのかもしれない。今まではこちらに損失が出る事を考慮し、躊躇っていたが奴らを皆殺しにして、この一体を支配する時が!


「いいだろう。この機に、あのゴブリンどもを根絶やしにする。犯人がゴブリンだろうがそうでなかろうが、奴らを叩き潰してこの一帯を全て我々の物にするのだ!」


ハイコボルトの声が洞窟中に響き渡ると、部下たちの顔には緊張と期待が混ざった表情が浮かんだ。自分たちの縄張りを広げる機会が訪れたのだ。もし成功すれば、彼らは再び山間部のような繁栄を取り戻すことができる。


「3日後、全員で総攻撃を仕掛ける。準備を怠るな!」


ハイコボルトの命令に、コボルトたちは一斉に動き始めた。彼らは武器を磨き、戦いに向けて士気を高めていく。ゴブリンどもを蹂躙し、この土地を完全に支配下に置く。そのための準備は、今まさに整いつつあった。


ハイコボルトは、洞窟の出口を睨みながら、心の中で誓う。

「もう二度と我々の縄張りを奪わせはしない…。ゴブリンどもを、我が手で完全に葬ってやる。」

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