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第28話 第2の進化

俺は深い眠りに落ちていた。進化事は考える間もなく睡魔が襲ってくる。起きたら進化が終わっているというのが前回の進化過程だったが、今回は違うらしい。寝ているのに意識がある…。夢でも見ているのか?


気づけば柔らかい月光に包まれたような空間にたどり着いていた。闇の中に浮かぶ一筋の光がだんだんと形を成し、気がつくと目の前に美しい女性が居た。彼女の髪は夜空のように深い藍色で瞳は満月の輝きを湛えていた。


「異世界から来たゴブリンさん。初めまして…かしら?私の事は既にご存知ですよね。」


俺は一瞬戸惑ったものの、目の前の存在がルナリス教の信仰する女神ルナリスであることは想像に硬くなかった。教会の銅像や肖像画でよく見ている。だが、生で見ると何倍も綺麗だ。

神秘的な雰囲気に言葉を失いながらも、俺は無意識に身を正しその言葉に頷いた。


「まぁ信仰してくれる人なら分かりますよね。

貴方は実に面白いから見ていて飽きないわ。

そして今回の一件、感謝しています。王国が崩れれば私の信仰どころじゃなくなっちゃうので…。今後も活躍を期待してますよ。もちろん良い行いをすれば特別ボーナスもあげちゃいますからね。」

そう言うと、俺に微笑みかけ軽く手を振りながら姿を消していった。

彼女の最後の言葉がかすかに耳に残り俺の意識は戻っていった。


「…!…?」

「……!!」


「うーん、朝から煩いなあ…ったく」

宿の客が騒いでる声で俺は目を覚ました。

こういうのが宿の良くないところだ。掃除も料理もしなくて良いが他の客が騒がしい事がある。そのせいで、こんなに早起きしてしまった。

それよりもさっきの夢はなんだったんだろう。本物のルナリス?夢に…出てくるのか?そもそも、ただの夢じゃないか?

いや、こういうのは意外と信仰心で出てくるのかも? うーん、分からんな。後でグリーダにでも聞いてみるか。

それよりも…


「ふふふ、遂に進化が完了したか。」

進化のプロセスが終わり、自身の体の変化を感じる。

俺はまず自分の装束に目を向けた。

そう、なんと今回は進化に伴い専用の装備が実装されていた。

まずは鎧だ。黒と銀を基調とした軽装の鎧には肩や胸の部分に月の紋様があしらわれていた。胸元や腰の銀の小さな飾りが、どこか神秘的な雰囲気を醸し出しつつも戦士らしい力強さを感じさせる。

背中には薄暗い灰色のマントだ。この世界で一度は羽織ってみたかったからな。悪くない。

左手には黒地に銀の輪郭で月のマークが入った円形の盾が収まっている。彼は軽く盾を振ってみて、その軽さと強度のバランスの良さに満足する。盾を使用しての戦闘は未経験だがこの進化には適してるのだろう。アクセルや他の兵士と稽古だ。

腰には細身の長剣が装備されていた。シンプルで洗練されたデザインながらも、エッジがきらりと輝く様子が美しい。

「くぅ〜、かっこ良すぎだろう!」

ダメだ、何回も新装備をチェックしてしまう。

鎧、盾、剣、マント…全てが俺の中ニ魂をくすぐっている。

と暫く気づかなかったが、肌も少し変色しているな。少し灰色になり、銀色の線が流れるような模様が入っている。

「こんだけ変わってるとステータスはどうなってんだろうな…。ステータスオーープン!!」


名前: シャドウ(仮名)

種族: エクリプスゴブリン

レベル: 1

HP: 800

MP: 500

力: 600

敏捷: 350

知力: 400


スキル:

• [上級剣術 Lv8]

• [神聖魔法 ・ヒール]

• [隠密 Lv10]


特技:

• [影潜り ]

[光闇纏雷ルナライトニング]

• [朧月の幻影オボロファントム]


称号: 闇の初陣者、ルナリス教徒

加護: ルナリスの加護


「…ぶふっ!?」

驚くなんてもんじゃない。驚愕だ。

ステータスの大幅上昇に加え、上級剣術なんてものを習得している。しかもLv8だと…。

ルナリス教入信の影響か神聖魔法も習得していた。この世界にきて、まだ魔法の使用経験が無いので楽しみだ。回復魔法という点も良し。

特技では物騒な物を習得してしまった。まだサンダーは分かるが、ファントムってなんだよ!


「だが、これでまだ強くなったな。

以前のシャドウゴブリンの比ではないだろう。

ゴブリンスレイヤーめ…今度は簡単にやられないぞ。」

俺はそう言うと宿の1階へ向かった。

まずは腹ごしらえなのだ。


様々な料理の匂いで、朝の食事で賑わう食堂の雰囲気を感じ取る。この時間は混んでいて普段は避けているんだが、今日は御披露目も兼ねて行く。この高貴な姿を皆にも見て貰えばルナリス様が如何に崇高なお方か伝わるだろう。

階段を降りて行くと、その場の空気が俺を見た瞬間にピタリと止まった。

常連客たちが驚いた表情で彼を見つめ、何人かは目を見開いて彼をまじまじと見ている。宿の女主人も手にした皿を止めたまま、まるで見知らぬ者が現れたかのような視線を彼に向けた。新たな装備とマント、黒と銀の精悍な出で立ちが普段のシャドウとはかけ離れているため当然といえば当然の反応だった。


「お、お前…シャドウか?」

馴染みの常連客の一人が恐る恐る問いかける。

俺は軽く頷き、なるべく穏やかに微笑んでみせたが驚愕していた。

「ああ、俺だ。進化の影響でこうなっていた。

なーに、数日すればすぐ慣れるさ。」

俺がそう言うと、宿の女主人が歩み寄ってきた。俺の姿をまじまじ眺めると信じられないような表情で言った。

「シャドウ!?あんた見違えたね。

今までの辛気臭い格好より余程いいじゃないか!いつも陰険だと思ってたからね〜。」

「そ、そうか。それは良かった…。」

少し言葉に傷ついたが…気にしない!

今の俺は進化で舞い上がっているのだ。


他にも、好奇心を抑えきれない客たちがあれこれと質問を投げてきた。俺はそれに応えながらテーブルに着き朝食を食べた。 

今日はシチューだ。とても美味い。

周りにはまだ俺に視線を向ける者や、俺の事をヒソヒソと話してる奴が居て食べにくい…。

こうして御披露目第一幕は終わった。

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