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第25話 旧礼拝堂

城内の奥まった場所にひっそりと佇む古びた礼拝堂。かつてルナリス教の信仰がこの地に根付いた頃には神聖な祈りが捧げられていたが、今では廃れ、誰も使わなくなった薄暗い場所だ。礼拝堂は新しい施設に役割を譲ってから放置され壁には苔が生え、古い木製の長椅子には埃が積もっている。夜の静寂の中で、蝋燭の微かな明かりが廃墟のような空間をかろうじて照らしていた。


そんな礼拝堂の中に、数十人の男たちが潜むように集まっていた。王国内の人類至上主義派、そしてルナリス教団から呼び寄せられた信者たちだ。皆、声を潜め、これから始まる計画に緊張の面持ちを浮かべている。


俺とアクセルはその場に集結した人類至上主義派達を観察していた。姫の暗殺を目前に彼らは最後の指示を待っている。約70人ほど集まっているが、二人の表情には微塵も恐れはない。


「チッ、もう待ちきれねえ。

おい、さっさと始めようぜ」


アクセルが急かしてくる。さて、どうするか…。

相手の人数が多いので影から攻撃すれば何人か逃げられてしまいそうだ。アクセルの実力次第では最悪援護しながら戦わないといけないかもしれない。それは1番避けたい展開だが。


「正直に言おう。俺はあの人数相手でも負けない。だが俺の能力を駆使したらの話だ。単純に正面から挑めば苦戦するだろう。これが俺の実力だ。お前はどうなんだ?」


俺は正直に打ち明けた。せめて味方の実力は把握しておきたい。


「はあ?テメェそんな下らねえ事気にしてたのか。

チッ、そんなもん見てりゃあ分かるだろうが!」


そういうとアクセルは急に立ち上がり、暗殺者の方へ歩き出す。


「お、おい?待てって!」

俺が小さい声で抗議するがアクセルは構う事なく歩き続け、暗殺者達に向かって叫んだ。


「やあやあ、お集まりいただいた悪党の皆さんこんばんわ。こんな辛気くせえ場所で悪巧みですかあ?」


「!? な、貴様は…アクセルか?

近衛隊の貴様がなぜこんな所へ?」


「まさか…我々の計画が漏れていたのか?」


アクセルに気づいた暗殺者達が騒ぎ出す。

俺は急いで影に潜み様子を伺う。


「ったく、陰湿な企みだよなあ。イザルドの口車に乗せられた挙句、思想や解釈の違いで、か弱い姫の殺しに加担するとはなぁ。

だが、こんな絶好の機会をくれたルナリス様には感謝しねえとなあ!?

テメェら全員あの世行きだ!!」

次の瞬間、アクセルは地面を蹴り急襲を仕掛けた。


「な、なんだ!?」至上主義派の兵士たちは突然の急襲に唖然とする間もなく武器を構えるが、アクセルは一瞬で懐に飛び込み、次から次へと暗殺者達へ斬りかかる。彼が振り回す剣は、まるで竜巻のように無数の敵を薙ぎ倒し、周囲に鮮血が飛び散った。


「怯むな!たかが1人だ!奴を生きて…帰す……な…。」

ドサっと、指揮を取ろうとした暗殺者が倒れた。

その背後には黒色のゴブリンがひっそりと佇む。


《経験値獲得により、レベルが上がりました。》



「…どこへ行こうというのかね?」

「な、なんだこいつは!?ひぃ!」

俺はそのまま逃げようとする敵の背後へ影移動し仕留める。



「くそっ、どこだ、どこから来るんだ…!」

「ダメだ!こいつ強すぎる…グハッ!…。」


俺はアクセルと絶妙にタイミングを合わせ、各所で敵を混乱させていく。影の中に潜みながら、指揮を執る者、逃げ出そうとする者を優先して抹殺していった。気づかぬうちに恐怖が広がり、戦意が揺らいでいく。


それにしてもアクセルは凄い。近衛兵に選ばれた実力は本物だ。何十人もの兵を相手に全く引けを取っていない。彼の周りには死体の山が出来ていた。


「アハハハハハ!!

ほらほら、もっと俺を楽しませろ!

お前らの悪党っぷりを見せてみろ!!

ギャハハハハハ!!」


「……。」


いや、戦闘狂だなあれは。

アクセルの活躍により殆どの暗殺者は斬殺された。俺は残った数人の暗殺者を気絶させ縛り上げる。こいつらは後に証人として必要だ。



アクセルに声を掛けようとすると、何を思ったのか俺に斬りかかってきた!


「オラッッ!!」

ガキン!と間一髪、短剣で攻撃を防いだ。


「ギャハハハハハ!

お前、小さいな?ゴブリンか?

まあこの際関係ないか、アハハハハハ!!」


「な!? アクセル!!

落ち着け! 何を考えてるんだ!」


俺が叫ぶと、アクセルは俺を凝視し動きを止めた。

暫くすると我に戻ったのか、剣を下げた。


「チッ、なんだ、お前か。

…って事はもう終わりなのかよ!!

まだまだ暴れたりねえんだがなあ。」


そう言うと剣を鞘に納める。

狂戦士化で周りが見えなくなるのか?


「お前が縛ってるそいつらは殺さねえのか?」

縛り上げだ暗殺者を眺めながらアクセルが不満げに聞いてきた。


「ああ、こいつらは今後の生きた証人として必要だ。取引するか拷問すれば素直に吐くだろう。」


「ケッ、相変わらずチマチマした奴だぜ。

だが今回はそんなお前に感謝しねえとなあ」


「いや俺は自分に出来る事を…、主を守るためにやっただけだ。後は最後の黒幕に白状してもらい、この一件に蹴りをつけよう。」


俺とアクセルは縛り上げた暗殺者を担ぎ、近衛兵隊の待機所へ向かった。

姫にこの事実を話し、宰相イザルドの悪事を暴く時だ。


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