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第21話 近衛兵

俺はこの世界へゴブリンとして転生後、進化を果たしシャドウゴブリンとなった。

そして今は、第一王女近衛隊に入隊した。

本当は断るはずだったが、ルナリス教徒になると神聖魔法を取得でき更に進化の幅が広がると聞いてしまっては断る理由は無い。決して暖かいベットや美味い料理の為ではない。今後更に強くなる為に必要な事なのだ。


セリーナ姫の近衛兵の誘いを受けてからは大変だった。近衛兵の1人、フェリシアは「私は反対です!」だの「こんな魔物危険過ぎます!」等と偉く騒いでいたからな。最後は姫の頑固さに負けたようだが。

セリーナ姫は俺の為に部屋も用意してくれた。

だが城内では無かった。流石に王含め反対派が多かったらしい。今後の活躍次第で判断するが一先ずはこの処置という事になった。

俺からすれば願ったり叶ったりだ。少し廃れた宿の1室だが悪くない。洞窟生活には戻れないかもな…。


そしてルナリス教にも入信した。

セリーナ姫と共に教会へ行くと、俺の姿を見た司教は怪訝な顔をしていたが姫の説得もあり、教義やルナリスについて語り入信の儀式が始まった。それが終わると司教から信者の証のネックレスを渡された。ルナリス教のモチーフらしい。三日月の中に十字架が入っている。

そういえば姫様の馬車にも同じような紋章が入っていたな。あれはルナリス教を表していたのか。


《ルナリスの加護を獲得しました》


「!? うお!ビックリした…」

久々の脳内アナウンスに思わず声が出てしまった。


「…シャドウ大丈夫ですか?」

姫様が心配そうに問いかける。


「はい、問題ありません。恐らく姫様が仰っていた進化の特殊な条件を得たのかもしれません。」


「まあ!それは素敵ですね。

これもルナリス様のお導きですわね!」

姫様は満足そうに頷く。


それにしてもこの加護とは何なのだろうか。

特にステータスに変化は無いようだし、俺がさっき言ったように進化に影響があるのか?それとも魔法とか?


こういう時に鑑定スキルがあればなとつくづく思う。自分の能力や敵のスキルを見たりするのは王道ではないか。

姫様にその事を聞いてみると鑑定というスキル持ちはごく稀にしか居ないらしい。殆どの者が相手の能力を覗き見る事が出来ない…良い事を聞いた。だが今回のように自分が得た能力を理解出来ないといるデメリットもあるな。


教会を出て城へ帰る帰路を歩いていると、何者かが俺達をずって尾行してきた。姫様は気付いてない様子だ。俺も気付いてないフリをして歩き続ける。あいつ…三流だな。殺意を隠しきれていない。


少し人気のない路地に差し掛かった時、俺は確信した。静かに姫様を護る位置に移動し、耳を澄ます。


「姫様、少しお下がりください。」


「え?何かあったのですか?」


姫様の声に微かな不安が混じるが、俺は冷静に頷く。その瞬間、先程から尾行をしていた刺客が素早く飛び出してきた。狙いは姫様だ。ナイフを振りかざし、無言で襲いかかる。


「フッ…遅い。」


俺は刺客との間合いを一瞬で詰める。


「な!?」


瞬時に詰め寄られ怯んでいる隙に、鳩尾へ拳を叩き込む。


「うっ!あっが……。」

そのまま腹を抑え倒れ込んだ隙に首へ手刀を入れ気絶させる。

だが、もう一人気配が近くにあった。どうやら刺客はニ人のようだ。


「姫様、もう一人隠れている者が居るようです。ですがご安心ください。私が制圧してみせましょう。。」


「ええ、シャドウ…気を付けて。」


俺は影の中に潜り込む。影の中は俺にとって自由自在な場所だ。二人目の刺客は、路地の奥に隠れていた。仲間が倒されたことに気付いたのか、焦っている様子が感じ取れる。


刺客の背後に回り込んだ。影の能力はこういう状況でこそ役に立つ。背後から腕を掴んでそのまま地面に叩きつけた。刺客が抵抗しようとしたが、俺の腕力の方が上だ。瞬時に相手を押さえ込み、身動きを封じた。


「…貴様の狙いは姫様か?」


「な、なんなのだお前は!

…!? どうしてゴブリンがこんな所に!」


刺客が驚きの表情を浮かべるが、答える必要はない。そのまま腕を首へ回して締め落とした。


「姫様、刺客は全て無力化しました。」


「素晴らしいわ、シャドウ!やはりあなたを近衛兵に選んで正解でしたわ。」


今回、姫を護衛してるのは俺だけだった。

そしてその瞬間を狙われた。敢えて隙を見せて襲って来いと言わんばかりに…


「…俺を試しましたね?」


セリーナ姫は悪びれる様子も無く答える


「ええ、そうなるわね。

心配はして無かったけど貴方の実力を確認しておきたかったのよ。」

そしてニコッと笑う。


「さあ城に戻りましょう。

フェリシアがとても心配してると思うし、他の近衛兵も紹介したいわ。 

この刺客共は…警備兵に任せましょ!」


そう言うと姫は歩き出した。

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