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第19話 ルナリス神聖王国

ルナリス神聖王国に招待された次の日。

俺は姫様と馬車に揺られていた。

姫様の横には女騎士が座っている。俺をゴミを見るような目でずっと見ている。


「はぁ…」


自然に溜め息が出ていた。

こんな見てくれなので、警戒されるのは仕方ないが少し傷付く。第一、姫様の要望で俺はこの馬車に乗る事になったのだ。もちろん俺含め周りの護衛は反対した。不可抗力だ!


だが、姫は一度言ったら曲げない性格らしい。

周りの兵士はすぐに説得を諦めた。

兵士達の馬車への同乗も認められなかった。唯一、この女騎士は姫様直属なので許されたらしい。

この女騎士、俺を見るなり穢らわしいだのこっちを見るな等と言ってきた。

仕方ないだろう。鎧の間から見える胸と太ももは俺に取って刺激が強すぎるのだ。顔も美形なので罵詈雑言がご褒美にしかならない。

姫様に関しては、先程から俺の事をニコニコと眺めている。俺はそんなに面白い顔なんだろうか?


「ねえねえ、貴方は他のゴブリンより黒いようだけど何故かしら?進化の影響?それとも変異した個体なのかしら?」


んー、詮索…というより興味本意で聞いているのだろう。

キラキラした目でこちらを見ている。

あまり情報を与えたくないが、無下にするのも失礼か…。


「これは進化の影響ですね。他のゴブリンより背丈も少し高いようです。肌が黒いのは…コボルトとの戦争で焼かれそうになったからでしょう。」


「まあ!ゴブリンとコボルトが戦争を?

そうですのね…、コボルトが火を扱うなんて。そんな話は聞いた事が無かったですわ。」


姫様は感心していたが女騎士が割り込んできた。


「姫様、穢らわしいゴブリンの言う事を当てにしてはいけません。此奴らは卑怯で狡賢い生き物です。

今回、姫様を助けたのも王を暗殺する依頼を受けているからかもしれません。ご注意を。」

女騎士はこちらを睨みながらそう言った。


おかしいな?ルナリス教の信者は対等に扱ってくれるんじゃないのか?

昨日の兵士といい、実に模範解答的な人間の反応ではあるが…。


「まあ、フェリシアったら、そんな事言ってはいけません。これもルナリス様も導きなのですから。…そう言えば自己紹介がまだでしたわね。私、ルナリス神聖王国第一王女、セリーナ•ルーンフォードと申しますわ。そして隣にいるのが私直属の騎士」


「…フェリシア•レイヴェルだ。」


と素っ気なくフェリシアは名乗った。

それにしてもこの姫様第一王女だったのか。

こんな所をフラフラして大丈夫なんだろうか。


「俺は名も無きゴブリンです。

仲間からはシャドウと呼ばれていました。」


「まあ、素晴らしいお名前ですわね。

では私もシャドウと呼ばせて頂きますわ。」

そう言って姫様はニコッと笑った。




城へ着くと直ぐに、国王と謁見となった。

俺こういう礼儀作法は全く分からないんだが、大丈夫か?

とりあえず、異世界物や中世ヨーロッパ部隊の映画のワンシーンを思い出す。

こう…片膝をついて、頭を下げていれば大丈夫なはずだ。


「頭を上げよ。そこのゴブリン。」


前から重々しい声がした。

ゆっくりと頭を上げる。国王の顔が見えた。髭を蓄えた少し威厳のある顔立ちだ。


「この度の働き見事であった。ガイウスからも話は聞いている。ワシの兵があれだけ損害を出した相手をほぼ1人で倒したと言うではないか。天晴れである。」


褒められたので頭を下げる。


「そこで……だ。褒美は好きな物をやろう。食料、武器、金なんでも良い。

ただ、ワシの願いも聞いてくれんかの?」


願い…?

顔を上げ王の顔を見ると、ニヤニヤと笑みを浮かべていた。


「何大した事ではない。お主の力をうちの軍で活かして欲しいと思っての。悔しいが周りの国家に比べればここは小国じゃ。今は猫の手も借りたい。それに……、国の近くで危険な魔物が出た場合、民の安全を考慮し駆除しなければならんからのう。」


そう言うと周りの兵士が一斉に武器を構えてきた。なるほど、これが狙いか。

脅しをかけ、もし俺が断れば俺諸共討伐対象として駆除する気だ。万が一国の脅威になりうる存在は早めに無くしておきたいのだろう。そして、この影の力を利用すれば他国の王を討ち取るのは難しくないからな。


今回の王の謁見、アーチャーとチーフは反対していたな。ゴブリンが人間の国に行くのは無謀だし危険すぎると言っていた。ボスは笑って送ってくれていた。お前なら何とかやれるだろうと。だが実際、この様に武器を向けられ脅される始末だ。皆の不安が的中した。今後もっと注意するべきだな。

さてどうするか…と考えてた矢先、姫様が声を上げた。


「父上、そのような無粋な事はお辞めください。」

 

おお、助けてくれるのか?

俺は影へ入ろうとしていた手を止めた。  

他の兵士は困惑している。


「…なぜだセリーナよ。」

王はムッとした表情になった。


「私どもを助けてくれた方に失礼だからです。

父上、彼を脅すようなマネをして王国軍に入ったとして、国に忠誠を尽くすでしょうか?いずれ恨みを晴らすべく寝首をかくことでしょう。

それに一国の王がこの様な恥ずべき事をする物ではありません。」


王は暫くぐぬぬと居ながら黙り込み、


「ぐっ……分かったわ!もう良い!

これ以上、お前の様な魔物に用は無いわ!

さっさと好きな物を持って立ち去るがいい!」


そう言い放つと立ち上がり出ていってしまった。こうして王との謁見は終わった。

キャラクター

•ルナリス神聖王国第一王女 

セリーナ•ルーンフォード

•王女直属騎士

フェリシア•レイヴェル

•王国軍直属 隊長

ガイウス・ハートフォード


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