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第15話 降伏勧告2

翌朝、一先ず現段階の意見を聞こうと俺はコボルトの住処へ再訪していた。前世では三顧の礼という言葉もあるくらいだ。足を使って会いに行く事に意味がある。


「よう、今の所どんな感じだ?

昨日の様子では反対派が多いか?」


門番へ話しかけると、ゆっくりとこちらに顔を向けた。昨日とは違い槍を向けてこなかった。

それどころか武器を置き、片膝を着いた。


「昨日話し合った。反対意見も多かったが、我々は種を根絶やしにはされたくない。

降伏を受け入れようと、意見は纏った。

如何だろう?我々の忠誠を受け入れてもらえるだろうか?」


俺は門番の言葉に軽く頷いた。彼らの目には恐れと覚悟が混ざり合っている。今この瞬間、彼らの命運は俺の手に委ねられているのだ。


「分かった。ボスに報告しよう。

苦渋の決断だったと思うが、よく受け入れてくれた。お前たちの意思を尊重する。

明日、洞窟へ来るといい。」


そう言うと、俺は彼らに背を向け、洞窟へ戻った。


洞窟に戻り、ボスとアーチャー達に報告する。ボスは肉をかじりながら、俺の報告を聞いた。


「ほう、あのコボルト共が降伏したか。てっきり最期まで抵抗するかと思ったんだがな。無駄な血を流さずに済んだ。それともお前の口車に乗せられたのか?…ガハハハ!!」


ボスは快く受け入れる姿勢を見せた。これまでの血生臭い戦いを思えば、降伏は歓迎すべき結果だったのだろう。しかし、俺には一つだけ引っかかることがあった。


「それで、ボス…。一つ提案があります。コボルト達をただの下僕として扱うのではなく、他のゴブリン達と対等な扱いをしていただけないでしょうか?」


ボスは眉をひそめ、肉を食べるのをやめた。


「対等…だと?お前、何を言っている?」


マズイ…、怒っている。

この世界は弱肉強食だ。勝てば官軍負ければ賊軍である。敗北したコボルト達は本来皆殺しにされてもおかしくない。情けで生きているようなものだ。配下として生き残ったならば、奴隷のような扱いをして扱き使うのが当然なのだろう。だがそうなれば戦力化は難しく、反乱分子となってしまうだろう。

なにより彼らは既に大き過ぎる痛手を負っているのだ。これ以上苦痛を与える必要はないだろう。

俺は大きく息を吸うと話を続けた。


「彼らを単に扱き使うだけでは、いつか反乱の芽を生んでしまいます。なので、ボスの事を仕えやすい主だと理解させれば良いのです。ボスは男としての株も上がりますし、彼らは仕えやすい主を得られるのです。」


俺はボスの目を真っ直ぐ見据えて続けた。


「この戦いでの勝利は大きかったですが、そこで終わりではありません。今後、生き延びるためには力だけでなく信頼を築く必要があります。コボルト達を差別することなく、同等に扱うことで、反乱を未然に防ぎ、彼らの力を引き出せる。我々の組織の一員として、互いに協力する形が理想的かと愚行致します。」


ボスは黙り込み、考え込んだ…。

が、しばらくの沈黙の後、笑い声を上げた。


「ガハハハハ! 分かった分かった。オレの負けだ。お前の言うことも一理ある。よし、異例だがそいつらを仲間として扱うことにしよう。

そうすれば、オレの男としての株も上がるだろう。」


ボスの豪快な言葉に、師匠アーチャーも小さく笑っていた。


「そんな話……断じて受け入れる事は出来ん!!」


それまで黙って話を聞いていた奇襲アーチャーが憤慨した。


「ボス、悪いですが俺はここから出て行きます。

奴らと仲良くおままごとなんて、ゴメンなんでね!」


そう言うと彼に賛同するゴブリン数体を引き連れて出て行ってしまった。彼にとってはコボルトとの共同生活は耐えれないのだろう。だが、この辺から離れてゴブリンは生き残れるのか?


「はぁ、全くアイツは…。

ボス、奴の非礼をお詫びします。」


そう言って師匠…いや、この集団唯一となってしまったゴブリンアーチャーが頭を下げた。


「なあに、構わんさ。それぞれ考えはあるだろうからな。

よし、皆を集めろ今後のコボルトへの扱いについてオレから話した方が良いだろう。」


こうして、俺たちはコボルト達を正式に仲間として迎え入れることになった。


翌日、コボルト達が洞窟へ集まっていた。

皆不安そうだ。これからどんな扱いを受けるのか、そもそもこの場で殺されるのかもしれないと考えてるようだ。

皆には心配するなと俺から一声かけたがあまり響いてないようだ。中には顔が真っ青になる奴も居た。なぜだろう?少しは安心してくれると思ったのに。

同じ場所にはゴブリン達も集まっていた、まあ無理もないが、あまりコボルト達を歓迎していない。ヒソヒソとコボルト達を見ながら何か話していた。

そんなこんなしていると、奥からボスとアーチャーが出てきた。洞窟内のゴブリン、コボルトが会話を辞め、畏まる。コボルト達は片膝を着いていた。


「よく来たな! コボルトの同志達よ。

我々の降伏を受け入れた事、見事な決心だと思う。今後はオレ様の為にしっかり働いてくれ。

ガハハハハハ!」


「……。」


そう言えばコイツら、ハイコボルトが消されてからリーダーが決まってないんだったな。

誰が応対するかも決まってないのだろう。


「ボス、彼らはハイコボルトが居なくなってより指揮を取るも者がおりませぬ。」


「なるほど、それで反応に困っているのか。

オレの盛大なスピーチは感極まる者があるからなぁ…。」


「…………。」


「因みにお前がやりとりしたのはどいつだ?」


「そこにいる門番だったコボルトです。」


と、俺の近くにいたコボルトを指差した。

コボルト達がの見分けがあまりついてないが、一番交渉時に絡みのあるこの個体は判別できる。


「よし、それならお前を今後、【コボルトチーフ】とする。コボルト達を纏め導くのだ。何か文句があれば言え、聞いてやろう。」


コボルトチーフは突然の指名に驚き、頭を下げた。


「はっ! 全身全霊を持って務めさせていただきます。」


役職も与えられ感激してるようだ。何か意見があればコボルト達は彼を頼るだろう。俺達ゴブリンの印象も徐々に変わってくるはずだ。 

チーフが感謝の意を述べると、ボスの横に居るアーチャーが前に出て話し始めた。


「次に、今回の統合により新たに幹部を増員したいと思う。因みに今の幹部は、ボスと俺の2人のみだ。」


お、そんな話もあったのか?

確かに今回の戦いでゴブリンアーチャー1体は死亡し、もう1体は出て行ってしまったからな。欠員2名は痛いだろう。


「よって、先ほど任命された、コボルトチーフ!

まずお前を幹部の一員とする。」


アーチャーがそう命じると、コボルト達からおおおと歓喜の声が上がった。チーフも嬉しそうだ。


「そして、もう1人。今回の戦で1番の武功を上げ、更にコボルト達の説得に大尽力した、シャドウゴブリン! 君を幹部に任命する。」


おおおと今度はゴブリン達の歓喜の雄叫びが上がった。

ボスとアーチャーこちらを見て、ニンマリ笑っていた。


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