表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/32

第11話 不利な戦局

「くっ…、このままでは全滅する…。」

ゴブリンアーチャーは焦っていた。

コボルトの群れへの奇襲を繰り返していたが、全く歯が立たない。

そもそも種族的な力の差が大きい。進化個体の自分なら1対1で互角だというのに、未進化のゴブリン達では話にならず損害も大きく出てしまった。

だが、洞窟まで到達するまで出来る限り時間を稼がなくてはならず、可能な限り被害は抑えたい。

そんな事を考えてると、また1人仲間がやられていく。ここは仕方ない…。


「よし、撤退だ! 一旦下がって立て直すぞ!」

そう指示を出し、向かってくるコボルトへ矢を放つ。矢はコボルトの頭を貫通し絶命した。

号令に反応し、戦っていたゴブリンたちが引き始めた。損害はデカいがまだ戦える。次が最後の奇襲となるかもしれないが…。




「はあ…はあ…、今のうちに仲間の治療と武器の整備だ!急げ!」

コボルトの群れから撤退し、残った者達へ指示を出す。洞窟へ大分近づいててしまった。ここが正念場だろう。残った矢の確認と手入れをしながら考える。


まず洞窟へでの籠城戦になれば、ゴブリンは全滅するだろう。コボルト40体の進軍で数体葬るのが関の山だった。つまり30体以上のコボルトが攻め込んでくるのだ。洞窟では未進化のゴブリンが防衛に当たっているため、軽く突破され、ボスとコボルト達の戦いとなる。ホブゴブリンとコボルトであれば、まずコボルトに勝ち目はない。

…だが、今回は数が多すぎる。更に彼らを率いてるのがハイコボルトだ。幾らボスでも数で優っているコボルトに勝ち目は無いだろう。そしてボスが居ない集団では再建は出来ない。皆殺しにされこの一体のゴブリンという種族が無くなってしまう。


「ふっ、それなら最後まで足掻いてやるか…。」


決死の突撃を覚悟した。どうせ死ぬなら1体でも道連れにしてやろう…。近距離戦は得意では無いが、数本矢を放てば居場所を特定され一瞬で間合いを詰められるのだ。そのタイミングで短剣でも突き刺せれば可能性はあるだろう。


アーチャーが最期の決心を固めていると、誰も居ないはずの背後から声がした。


「……おい、状況を教えてくれ。」


「…!? ウワッ!?

お前、いつからそこに!?」


背後に居たのは黒い肌をしたゴブリンだった。

どうやら進化個体のようだが、…味方なのか?


「…?状況を教えてくれ。

先程まで洞窟で、ボス達と作戦を練っていた。

お前達は、威力偵察と妨害をしていたのだろう?」


黒いゴブリンは再度状況を聞いてきた。

どうやら、ボス達が言っていた「ユニーク」と呼ばれてるやつのようだ。


「へっ! ボスもこんな新人に期待していのか。

落ちたもんだな。」


「…今は新人も古参も関係ないだろ?まずはコボルト共を何とか…」


「分かってんだよ!そんな事はッ!」


まさかこんな新人と作戦を練っていたとは…。

ボスは何を考えているんだか。。

苛立ちを抑えながら、話を続ける。


「……んで、状況だったな?

見ての通りだ…。アーチャーの俺と、ゴブリンが10体。残りは奇襲を仕掛けた際にやられたさ。この損害じゃ次が最期の奇襲だな。」


「アーチャーは2体だったんだろ?」


「最初の奇襲でやられたさ。コボルト共を率いている。ハイコボルトにな!!」  


思わず地面を殴りつける。

ダメだ。感情的になってしまう。 

死んだアーチャーは特に仲の良かった奴だった。同時期に生まれ、共に成長し戦い抜いた。 だが、死に際は呆気なかった。奇襲で突撃した際にハイコボルトと対峙し心臓を一突きだった…。

その場面を思い出し、憎しみと怒りが溢れ出す。


「……ハイコボルトだと?そうか、群れを率いてるのはそいつなんだな。その情報があると無いとでは天と地の差だ。」


「お前…、そんな事分かっても仕方ないだろ!」

気付けば、黒ゴブリンの胸ぐらに掴みかかっていたが、黒ゴブリンは冷静だった。


「落ち着け。…仲間の死の苛立ちは奴らにぶつけるべきだ。 

俺が仇を取ってやる。」


「ちっ…、口では何とでも言えるさ。

それより作戦とやらは出来てるのか?」

黒ゴブリンから腕を離すと、胸元を整えながら話した。


「先ほども言った通りだ。俺が仇を取る…。

つまり奇襲で奴らの司令塔を潰すんだ。」


「はあ? お前如きがそんな事出来るなら俺達だってやってるだろうか?!」


「…まあ、聞け。俺は進化し、新たな能力を得た。

お前に気付かれないくらい気配を消して、背後に立つ事も出来ただろうう?

そして、ボスも洞窟にいるアーチャーもその案を飲んだ。その意味が分かるか?」


「うっ、それはそうだが…。

ボスもアーチャーも認めたってのか??

その作戦を?」


にわかには信じられない。そんな安易な作戦が成功するはずがないのに、ボスもアーチャーもその作戦で納得している?


だが実際先ほどのは完全に気配が無く背後に立っていた。そんな事が本当に出来るならハイコボルトの首を取れるかもしれない。群れの司令塔が居なくなれば我々に勝ち目が出てくる。


「そうだ。納得し、その策を決行するとの事だ。

だが、まず現状を知る必要があるからお前に会いに来た。…実際来て良かった。損害が大きい事も把握出来たし、ハイコボルトが居るという貴重な情報が手に入ったからな。」


「お、おう。」


「俺は潜伏し、奴らの群れに紛れ込む。お前達は洞窟へ戻りボスの指揮下へ入るんだ。頼むぞ。」


「お前、紛れ込むってそんな簡単に…」


言い終わる前に黒ゴブリンは居なくなっていた。


「はぁ…。ほんとに大丈夫なんだろうな…。だが、どちらにせよこのままじゃ犬死にか。

よし、お前ら!! 洞窟まで引き上げるぞ!」

アーチャーは大声で撤退を命じ、ゴブリン達と洞窟へ向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ