プリン
現在、俺は家の庭でボロボロでぶっ倒れている。
その理由は簡単。母さんと戦ったからだ。
なぜ戦ったか。それは10分前くらいに遡る。
「母さん。さっきから何探してるの?」
「ん〜?私が楽しみにとっておいたプリンがないのよ。知らない?」
「さ、さあ?どこだろうね、アハ、ハハ。」
知らないなぁ?いやぁ、さっき食ったプリンのことじゃないよな。あれは結構な安物、高い方は残しておいたはず。めっちゃ美味しかったけど。
「あれじゃない?あの高いやつでしょ?確かあの棚にあったはず。俺安い方しか食べてないよ。」
「ふーん。棚にあったんだ?高いの。」
「う、うん。」
「私ね、用心深いの。だから高いのと、安いの、入れ替えておいたの。で、安い方、ないの。食べたんだ?高いの。私の楽しみ。」
「は、ははは。」
「表でろや!ぶっ潰してやる!」
「違うんです!てか、紛らわしいことした母さんが悪いでしょう!」
「あぁ”」
「ごめんなさい、すぐ行きます。」
とまあこんな感じだ。戦闘に関しては、まあ、うん。なんかいつのまにか身体が切りつけられて?なんかいつのまにか足が凍って?なんかいつのまにかぶっ倒れてました。はい。なんなん、チートやん。
加害者はというと、
「ふぅー。すっとしたわ〜。プリン、予備の食べよっと。」
「よ、予備あるならこんなにしなくても」
「あ”?ほんとは2個食べるつもりだったんだが?」
「あっはい。」
ダメだ、話が通じない。いや、勝手に食べた俺も悪いが。
「と、その前に。刃。最近魔法を覚えたらしいじゃない。」
「うん、まあ。ちょっとね。」
「ふ、なら私が魔法をもっと教えてあげる。だから、もっかい戦おうか。」
ダメだ、こりゃダメだ、もうダメだ。もっとボコボコにするつもりだ。
「大丈夫。今度は教えるのがメインだから。ストレス発散は二番目よ。」
ストレス発散目的はあるのな。怖いなあ、また意味もわからず殺される(半殺し)のかなあ。
正直嫌だけど、これも強くなるためだと思い、武器を顕現させる。
「ふふ、それでいいのよ。子供に魔法を教える。最高に母親っぽいわ」
「それじゃ、行くよ!」
私は、今は別にプリンの恨みで戦っているわけじゃない。ただ、自分の子供に魔法を教えたいだけ。いつまでもお義父さまに頼ってちゃいけない。
まったく、夫もちゃんと父親して欲しいものね。
私は、先程ストレス発散で使った魔法、時間凍結を使う。これによって時間が止まったと言っても過言ではない。その隙に足を少し凍らせてみる。
そして、時間凍結を解除する。さて、私の子は気づくかしら?
「なっ!?」
またしても、いつの間にか、凍らされた感覚などないのに、足が凍っている。
ただの凍結魔法じゃない。それだけはわかる。
どうやって切り抜けるか。取り敢えず、俺は獲得した魔法で凝縮して小さくした火球を三つほど周囲に出現させる。凍らされたとしても、これなら溶かせる。
「特訓の成果をみせて上げるよ。母さん!」
「ふふ、やってみなさい!」
次の瞬間、俺の身体はかなりの速度で走っているはずなのにゆっくりと、スローになっている。どういうことだ。俺の体を確認すると特に凍っている箇所はない。ならば、何故動きが鈍くなっている。
そう考えていると少しずつ、身体が素早さを取り戻していく。どうなっている?スローになったはずだ。これはまるで、溶ける氷のようである。
真面目に分析を始める。まず、初めのストレス発散。あの時、俺は何が起きたかもわからず攻撃を受けた。そして、先程も同じ技を食らった。あの時とは違い、少しゆっくりになる程度。時間を操る魔法かと考えたが、そんなものは禁忌に近く、禁止されている。であればなんだ、これは。
ふと、俺の目に入るのはさっき作り出した火球だった。この火球なら、大抵の凍結ならすぐに溶かせるだろう。そう考えていた。火球から漏れ出る炎の動きはいつもと変わらない。俺の動きとの差はなんだ。考えろ、考えろ。
そうか、そういうことか!
俺は新たな火球を作り出す。数を作らず一つにまとめて。
俺は、それを母さんがおそらくいるであろう位置に飛ばす。
そして、次の瞬間。
「あっつう!」
俺の勝利だ。
「ふふ、よく気づいたね。やっぱうちの子天才!」
なんて言ってるが、この人はまだ全然本気を出していないんだから驚きだ。
あの魔法は時間凍結というらしく、母さんの師匠が編み出した魔法らしい。だが、あれはまだ初見殺し程度だ。本気になれば、おそらく炎すらかき消して、一瞬で蹴りがついただろう。
「あの魔法は、まだ教えるには早いかな。でも、勝手にパクってくれて良いからね。プリン以外は。」
「はい、申し訳ありません。」
パクって良いらしい。プリンはダメらしいけど。
ま、こんな魔法をすぐにパクれるわけないが。
俺は刀がメインなのだ。魔法使いでさえ会得することが難しい魔法を簡単に使えるはずもない。
今回学んだのは魔法でもなく、剣術でもなく、
プリンは勝手に食べてはいけない、ということだ。




