六話目 まさにファンタジー
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ローグと鳥肉の串焼きを食べた後、この世界のことについて教えてもらった。
「この世界の歴史を理解するためには、まずこの世界の起こりと魔法について知る必要がある」
魔法か。さっきから不思議なことばかり起こってるし、気になっていた。
「まず、魔法属性というものがある。おおまなか区別でいうと、火、水、土、風の四つの自然属性。光、闇の二つの固有属性。これらに区別されない無属性だ」
「わあ、まさにファンタジー」
「なにか言ったか?……続けるぞ。そしてこの世界は『原初の火』から全てが始まった。創造神アテウス様が原初の火とともに生まれ、この世界が火より生まれ落ちたのだ。アテウス様はこの世界を豊かにするために『神代魔法』を構築した。原初の火、神代の水、土、風だ。それと同時に『神代のもの』たちも生み出された」
そこでローグが自分を指差す。
「この我、竜神。人間種の祖先となる『人神族』。動物たちの祖先となる『獣神族』。海を統べる『海神族』。天を統べる創造神の使徒『天使族』」
おお、まるで神話のようだ。
というか、まさしくこの世界の神話ってことだよね?
「それじゃあ、ローグはこの世界ができたときからずーっと生きているんだね」
「そうだ。そして我ら神代のものは、創造神アテウス様よりこの世界の維持を任せている。そうして自然の摂理を守っているのだ」
なるほど、ローグが長生きなのも納得だ。
「そしてアテウス様は、原始の火を使い太陽を生み出した。これによりこの世界に朝と夜という時間が生まれた。そして生と死という概念も」
「ローグはそれより前に生まれたから、死んだりしないということね」
「そうだな。アテウス様が望まない限り我は消えないということだ。時が経ち、人神族同士で争いがおこった。数え切れぬほどの死者が出たらしいが、その争いと同時に古代魔法の光魔法と闇魔法の固有属性が生まれた。自然属性の複合らしいが、どうも我はあまり好みではなくてな。そこまで詳しくない」
「どうして人神族どうしで争うことになったの?」
ローグはグラス入ったワインのようなものを傾けながら視線を揺らす。
「どうしてなんだろうな。些細なことではあったんだろうが、それが人神族が人間種に成り下がった理由でもある。それはそれで文明が発展し、今の世界になったのだから、なるべくしてそうなったのだろうな」
どこの世界でも戦争のようなものはあるのだろうか。
元の世界にもくだらない理由の戦争があったが、私は戦争を知らない世代だ。この世界で起こらないといいんだけど。
「時は流れ、神代のものの干渉も薄れてゆき、今は子孫たちが繁栄する良き時代となったわけだ。我ら神代のものは、この世界の行末を見守るだけにすぎぬ」
遠い目をするローグは、たしかに長い時を生きる竜神様のようだ。
「まあ、そんな長い時を生きた我だ。お前のような人間種を育てるのも良い余興になりそうだ」
「ローグみたいなすごーい竜神様に育ててもらえるならラッキーだね」
「らっきー、か?なんだそれは」
「あたしの元の世界だと運が良かったことをそう言うの」
「そうか、ラッキーか。覚えておこう」
◇◇◇
ローグとのご飯が終わると、もう日もかなり落ちてきていた。
私はわがままを言って、庭に連れていってもらった。
遠くの夕陽が山の麓に落ちるのをみて、今日聞いたことを思い出す。
そうかあ。この太陽は創造神様が作り出したものなんだね。
私がどうしてこの世界に生まれ変わったのかも、もしかしたら創造神様なら知ってるかも。
「いつか会えるかなぁ」
私の独り言は、穏やかな夜の空へ消えていった。
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