四話目 すごいこと
よろしくお願いします!
ローグがどこかに出かけたので、私はこの大きなお城を探索することにした。
「それにしてもすごいお城だな〜」
私の寝室であろう部屋を出た後、周りをぐるぐると見回しながらとてとてと進んでいく。
壁に一定間隔で掛けられているランプのようなものが見える。
そのランプには、まるで炎のような光を放つ半透明の石が浮かんでいる。その暖かみのある光が、周辺を照らし出していた。
すごく幻想的な光景だ。
「あたしも何か『すごいこと』ができたらなぁ」
そんなことを考えながら探索していると、なにやら書物が置いてある部屋を見つけた。
本棚に本が所狭しと入っていたり、羊皮紙が丸められて机の上に置かれている。読んでみれば、この世界のことが少しはわかるかもれしれない。
「今更だけど、ローグとは言葉が通じているよね……まさか文字も読めるのかな」
まるで辞典のような分厚さの本を手に取り、中をパラパラめくってみる。
そこには見たこともない形の文字が書かれていたが、不思議なことに、頭の中で理解できる言語として自動で変換されているようだ。
「……この世界で文化の交流は問題なくできそう、かな?」
ボディランゲージで乗り切った海外留学を思い出し、懐かしいなと口角が上がる。もう前の世界には戻れない予感しかしないので、郷愁に浸っても意味はないんだけどね。
ふと、気になった文字を見つけた。
「ふむー。なになに?《技能・模倣》とは、しんだいまほうとこだいまほうのてんかんきにこの大けんじゃメ・ターモスが発見し、ついぞ我しか扱えなかったいしつなまほうであり……っと!?」
文字を読み上げた途端、文字が踊るように宙に浮かび上がり、私の目の前に並んでいく。
まるでファンタジー映画のワンシーンのような光景だ。
私が読んだ文章が浮かび上がっているが、その中でも《技能・模倣》という文字が一際白く発光している。
「なにこれ……スキル……?」
私は目の前で光を放つ文字に手を伸ばしてみる。
すると、その《技能・模倣》という文字だけが私の手のひらに吸い込まれていき、消滅した。
「うぇっ?あれ?なにかまずいことしちゃった?」
目の前で浮かんでいた文章は、用済みとばかりに本の中に戻っていった。新品同然の本だったのに、今はかなり古びた本になってしまった。
手のひらを見てみても何もない。私が本に宿っていた何かを吸収してしまったんだろうか。
まあ、あとでローグに聞いてみたらいいか!
他の本を触るのもなんだか怖くなってきたので、他の場所を見よう。
書庫を出た後、大きな庭園を発見。
リンドウのような花を愛でていると、遠くで大きい物が着地するような音が聞こえた。
「あ、ローグ帰ってきたかな」
それから数分すると、庭に人型のローグが入ってきた。
「遅くなった、カミナ。なんとか食べれそうなものはあったが、これ食べれそうか?」
ローグが片手に持っていたのは、鶏を黄色で塗り潰したような鳥だった。
結構大きいな。1メートルくらいあるか。
鳥だったら食べれそうだけど果たして美味しいのだろうか。
「ひとまず食事にするぞ。ついてこい」
「はーい。ありがとうローグ」
ありがとうございます!