二話目 日の下で
私はなぜか幼女に生まれ変わり異世界転生し、ドラゴンのローグに出会い、なんと友達になった。
いやー。まさかこの私が異世界転生を経験するなんて。
息抜きに見ていたアニメのような異世界に入ることになるとは思ってもみなかった。
人生何があるかわからないね。もう死んじゃったんだろうけど。
私はローグの後ろに着いて行き、ローグの巣(人間でいう自宅なのか?)に向かっていた。
周りが背の高い木ばかりであまり陽の光は入らないが、木漏れ日が地面を照らしだし、綺麗だなーと感慨にふける。
ローグは時折こちらをチラと振り返る。私が小さい足でてくてく歩くのが可笑しいのか、なんだか楽しそうだ。
『カミナはどうしてこんなところに?』
それは私が聞きたいんだけどなー。
「あたしは気づいたらここにいたよ」
一度死んだであろうことは一応伏せておく。絶対おかしいだろうしね。
『何千年と生きているが、カミナのようなやつは久しぶりに見た』
ローグは好奇心半分胡散臭さ半分といった視線をよこし、やけに人間臭い動作で首を傾げる。
それにしても何千年も生きてるって!!ドラゴンだからなのか、生きてる年数も桁違いだなあ。
「ローグはすごーく年上さんだね?あたしのこと何かわかるの」
『そうだな。カミナからはこの世界の魔力ではなく、天上の世界の創造神の魔力と似た気配を感じる。最後に見たのは100年ほど前の人間種の争いの時だったか』
ローグはうーんうーんと首を捻っている。
それにしても創造神か。なんだか壮大な世界に入り込んでしまったな。もといた世界にもいたんだろうか。
『その時の人間種は、たしか創造神に遣わされた光の巫女と呼ばれていたか。我は興味などなかったが、人間種にしてはやけに強いやつという印象だったな』
なんだかなんたらファンタジーみたいな話だ。
それにしてもこの世界には魔力というものが存在しているようだ。科学が発展した私の世界ではまさにお伽話である。
「いいなー。それってあたしにも魔力があるってこと?」
これは私にも未知なる力に目覚めるフラグでは?
ローグは訝しげな目で私を睨む。え、どいうこと?
『そこなんだがな。カミナの気配は少々歪なもののように感じる。まるで静かな水面に広がる波紋のような気配だ。魔力はないことはないだろうが、その真紅の目のせいか、あまりうまく感じ取られないな』
魔力があれば、なんかかっこいい魔術とか使えるのかな!でもどうやって使うんだろうね。
それにしても真紅の目って私の目のことだよね。私の目はちょっと明るめの焦茶だったはず。そもそも自分の顔を見ていないことに今更気がついた。
「真紅の目だと何かあるの?」
『古い知り合いに同じような目を持ったやつがいた。そいつも力を隠すのがうまくてな。もしかしたら似たような固有能力かもしれん』
固有能力!?なにそれ!
生まれ持った能力なんだろうか?
『まあ、会うこともあるかもしれんしな。その話はまたいずれ』
「むぅー」
気になるところで終わってしまった。
なんだがあんまり話したくないのかな?
『ほれ。着いたぞ』
森の中だとは思うが、ローグほどの大きな生き物が日々通っていたであろう獣道……この場合はドラゴンロードなのかな?
その先には、何かの遺跡の集まりのようなものが見えた。
そしてさらに目を引くのは。
はるか数千年の歴史を感じるような大きな白亜の城が建っていた。
『驚いたか?ここが我の城だ』
ローグは人間味あふれる笑みを浮かべていた。