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第四十三話



その後は高級レストランにて昼食となる。城で食べるものとあまりイメージは変わらないが勇には相変わらず居心地が悪かった。


いや、メニューが並びいざ食べようとすれば居心地はさらに悪くなる。


「なあ勇者様、ここの飯不味いのか?」


勇のそれは表情にでてクリム王女が案じる。


「別に、苦手なんだよこういうのは。空気つうか食べ方つうか」


勇は仏頂面で答えた。


「貴族らしくないつか、貴族なのに貴族の暮らし嫌ってねえか?」


「まあね」


もはや信じられないというクリム王女の顔に勇は舌を出した。


「あれ、最近慣れてきたんじゃないの?」


アステリア王女は疑問を持つ。


「 城の食事には慣れてきたが店となるとちょっとね 」


勇は敢えて言わないが他の人間、クリム王女や騎士達の前となると余計だ。


前世の記憶が復活したことも拍車をかけている。テーブルマナーとやらに気を使うながら食べるというのはまったくもってその時には想像もしていなかったのだ。


転生して長年貴族の家で育ったゆえに自然とできてしまうのが最悪に気持ち悪いのだ。


「ごめん、お城に戻った方が良かったかな」


「いや、いいよ。ごめん、気を遣わせちゃった」


アステリア王女に言われ勇は謝る。これでは勇者失格である。


スープとシチュー、パンという食べてみればあまり気にならないメニューだ。あくまで悪いのは高級レストランという場所と視線のみだ。


「しかしその様子では勇者殿は実家ではさぞ苦労したようですな」


ハリーも勇を案じる。


「家はずっと住んでるから大丈夫ですよ」


「流石にこれで実家の食事も駄目と言ったら目も当てられないね」


ケイネスはニヤリとした。


「それにあんた、人が多いから緊張してるんじゃない?」


「してねえし!そんなんじゃないっつうの。ただの人見知りだよ」


リンネの指摘に勇は声を荒らげる。


「あんたってそういう気配あったっけ。結構乗りしか考えない子かと思ってたかど」


「勇者になって色々ね」


勇はリンネの疑問にぼかして答える。果たして彼女が前世の記憶があることを信じるかは不明である。

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