第四十一話
リンネのところに行くと彼女は服を籠に入れようか迷っていた。そこへ勇が彼女に声をかける
「どったの」
「いや、こういうってのもうわたし似合わないかなって」
リンネは取ったものを見せながら眉を潜めた。それはゴシックロリータのドレスで各部に多量のフリルやリボンが散りばめられていた。
「昔着てたっけ。いや、リンネ今も可愛いし似合うでしょ。試着してみなってー」
勇はそんな不安などお構いなしに言う。
「そ、そう?」
そこまで言われればリンネも乗り気になり試着室に行く。
「あれ、小さいやつが着るやつだよな」
「へえ、あの人案外そういう趣味あるんだ」
それを見届けるとクリム王女とアステリア王女が意外に感じる。
「しっ。ちょっと黙ってて」
勇は目をきっと細め指を立てて注意する。本人が気にしてるに違いないことを聞かせないためだ。
「お前らまさか、できてるのか?」
ただならぬ勇の様子にクリム王女は疑いの目を向ける。
「あ、後で言おうと思ったけどあの人の婚約者わたし達とあの人ともう一人いるから」
アステリア王女が自分達の事情を説明した。
「はあ?!クソ勇者じゃなくてクソたらしかよ!おいおい…………」
クリム王女は思わず声を上げた。
「でも、これから王女の婚約者も増えてくかもだよ?」
「だよなあ…………」
その一言にクリム王女は眉を潜めた。
勇もそんな人数抱えられるのか、どれくらい増えるのか不安になる。
「ど、どうかしら…………」
リンネは着替えが終わり試着室のカーテンを開けた。
「懐かしい。やっぱリンネっつったらその服よね。らしいって気がするよ」
少女を思わせるその風貌とそれを幼少期に着ていた彼女は勇に懐かしさと安心感を与える。が、やがてある一点に目が止まる。
「やっぱ、おっぱいでかいな」
「やっぱりそこぉ?」
せっかく褒めたと思えば服以外を褒められリンネは落ち込む。
「やっぱできてんだろ」
「なんだかねえ」
リンネと勇のただならぬ雰囲気にクリム王女とアステリア王女はちょっと嫌な気分になる。
リンネが会計を済ませた後アステリア王女達四人は女性騎士達を見回るも男性騎士しかおらずアステリア王女はハリーに尋ねる。
「ああ、他の女性達はもう買い物を終えてあちらに集まってますよ」
すると手でその方向を示した。
「えー、わたし達が最後ってことじゃん」
「達っつか、リンネだけど」
アステリア王女が口を尖らせると勇が訂正する。
「うるさいわね。この歳になると色々悩むのよ」
リンネは心外と眉を潜める。
そこへ向かうとエルハは他の女子達と買ったものを品評していた。
「なんか、混じりづらい…………」
アステリア王女はエルハの様子を見たいと思ったが直接見れず口をすぼめる。
「ま、あっちにはあっちのコミュニティがあるってことだね。先輩と話せないのは寂しいような、そうでもないような……………」
勇はアステリア王女にそう言いつつ途中でリンネに目を向ける。
「勇くんて意外と薄情だね」
アステリア王女は勇のエルハに対する扱いに呆れる。勇にとってエルハも婚約者の一人のはずだがここに一人以上いれば他のはいらないということだ。




