第二十一話
クリム王女が城に現れる日、城の人間は一部を除き彼女を出迎えに出ることになっている。
朝食を終えエルハは自分の寮にてクリム王女の到着を知らせる放送用の管を見つめていた。
「憧れの勇者様とはまだ会えないわよ」
「ち、違うから!イサミくんじゃなくてクリム王女が来る日でしょ!」
同僚に言われエルハは慌てて否定する。
「勇者様も来るから会えることには違いないでしょ」
「でも直接会うわけじゃないし………」
エルハはこれでも控え目なままだ。
「あー、もうっ、こうなったら今の内に会いにいくわよ!」
「ちょ、ちょっと!」
同僚は彼女の手を取り部屋を出ていく。
が、着いたのはイサミの部屋ではなくイサミが部屋から降りていくであろう階段だった。
王族と騎士団の自室は当然異なる。安全のためもあるが上流階級が上の階、騎士団がその下である。要は上座と下座だ。
「なんで、ここなの?」
「いやー、いくらわたしでも用もなく王族と同じ部屋のとこまで行く勇気はないかなって」
エルハの問いに同僚は頭の裏をかいて苦笑いした。
「はあ………」
エルハは思わず呆れてしまう。
少し前、勇はアステリア王女の部屋でソワソワして中を行ったり来たりしていた。
「もう、そんなにしなくてもクリムちゃんは来ないよー」
アステリア王女は呆れてしまう。
「そうだけどさー」
勇は時計を見るがやはりクリム王女がくる知らせはない。
「よし、行こう。行って待っておこう」
「えー、せっかちだなー」
勇の決断にアステリア王女は眉を潜める。




