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第十九話


朝になり起きた勇は昨夜のことを思い出していた。前世でも女性に縁のなかった故に人生最高の体験と言ってもいい。


一人の女性に愛されるという快感は天にも登ることだろう。さらに姫が相手というのも希少なものだ。相手の少女を愛したいとも守りたいとも思い始めていた。


だがその後は憂鬱になっていた。


「おはよう」


アステリア王女が起きニコリと微笑む。髪をほどいたその姿は昼間の天使のようなものとまた違った女神のごとき美しさを放っていたのだ。


だがもはやそんなものは勇には響かなかった。響くどころではないのだ。


「おはよう………」


「え、どうしたのその顔…………」


その虚しさは顔に出ておりアステリア王女もすぐ気づいた。


「ちょっとね…………」


「やっぱり、今日のこと気にしてる?」


彼女も同じ気分なので勇の内心もすぐ察する。


「うん、せっかく昨日アステリアといい気分になったのに別の女の子が俺の婚約者としてでてくるとか意味わかんないよね。いくらこの世界で貴族出身でも違和感しかないつか早すぎるていうか…………」


勇は憂鬱の中身をつらつら話し始める。


「どうしても嫌ならクリムちゃんは断ってもいいよ」


アステリア王女は優しく言った。


「いや、いいよ。君の幼馴染だし、それに………向こうももしかしたら本気だったらー下手に断っちゃったらそれこそあれだしー、なんつうか、この世界の勇者の役割っていうならそれを受け入れるしかないかな」


勇は考えながら言葉を紡ぐ。


「初めて会った時から思ったけど、勇くんてほんとにかっこいいね」


アステリア王女は思わず惚れ直してしまう。


「あ、いやアステリアも昨日覚悟決めてたんだし俺も覚悟しないとなって。あはは…………」


勇は恥ずかしくなりから笑いする。


「それでもかっこいいよ。わたし達みたいな偉い人の覚悟て中々できないし………」


アステリア王女は自分も恥ずかしくなり頬をかいてしまう。


勇は実際自分も覚悟したのによく言うなと感じた。

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