28:ハンマーおじさんー⑤
「ハンサムボウイよ、おれはお前が気に入ったぞ。こんなに話の分かるヤツは久しぶりだな。おれからのプレゼントとして、お前のテーマ曲を作ってやるよ」
「だからいいって、そんなの」
「まあ、そう言わずによ。お前、名前はなんていうんだよ?」
「……林直人」
「はやしなおと。うん、いいね。『は、や、し、な、お、と、へ』だな。じゃあいくぜ、おれの魂の叫びを聴け!」
しばらくブツブツと独りごちたあと、深呼吸をしてミオカさんが歌い出した。
掃き溜めに鶴だね
やっぱりキミが一番さ
死ぬほど幸せだよ今
なんていうのこの気持ち
おそうこの胸のドキドキ
とにかくぼくは今キミに
下手なホントを言いたいんだ
歌い終えたミオカさんは、その出来を気に入ったらしく、しばらく目をつむったまま小刻みに震えていた。そこから涙がこぼれ落ちて頬を伝っている。
正直あまりにもひどい歌詞に慎吾は笑いそうになっていたが、そのミオカさんの姿に、すぐ不気味なものを感じた。
「なあ、この人アブないよ、帰ろうぜ」
ワチコがそっと耳打ちをした。
たしかに少し危ない気がしてきた。
さすがの直人も、無言でその提案に首を縦に振った。
「よかったか?」
急に言葉を吐いたミオカさんに驚いた慎吾は、大きなゲップをしてしまった。
「あ、あのさ、おれたちもう帰るわ。楽しかったっす。じゃあ」
直人が、つくろいながら、慎吾とワチコを押しやって小屋をあとにしようとした。
「いやいや、ちょっと待てよ。なおとくんは、今日は泊まっていけばいいじゃねえか。気の済むまで、おれと語り明かそう」
ミオカさんが直人の腕を掴んで、ワケの分からぬことを言った。
その目は、笑っていなかった。
「す、すいません、ぼ、ぼくたちこれから用事があるんです」
慎吾は、勇気を振り絞ってミオカさんにウソを吐いた。
「あ、いいよ、君ら二人は帰ってさ。おれは《《デブと女》》には興味がないんだよ」
言ってる意味がますます分からなくなるミオカさん。
とてつもない恐怖が、背筋を冷たく撫でていた。
「痛えな、離せよ!」
腕にきつく食い込んだ手を直人がつねる。
それを粘着質な笑顔で見ながら、ミオカさんはブリーフの上から自身のイチモツをまさぐった。
「いやあ、いいね、はやしなおと君、気に入ったよ。うん、君たち二人はもう帰っていいよ。邪魔だから」
ミオカさんの豹変ぶりに、戦慄を覚える。




