表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バラバラ女【改稿版】  作者: ノコギリマン
96/159

28:ハンマーおじさんー③

 その中は、生活のニオイがするほどに整い、天井部分の板のそこかしこの隙間から差し込む陽光が、薄暗いながらも小屋の中を照らし出していた。そしてその中央に、ボロボロで、綿が至るところからはみ出した敷き布団だったものがあり、その上で素っ裸の男が呑気にいびきをかいて寝ている。


 意外でありながらマヌケな光景を目にした慎吾は、しばらく呆けてその男を凝視していた。


「ミオカさんじゃん」


 慎吾の肩越しに、中のようすを窺った直人が呟いた。そこでようやく我に返った慎吾は振り向いて、ミオカさんのあられもない姿を、目を伏せて見ないようにしているワチコを見やった。


 この状況はどうするべきだろうか?


「んあ?」


 考えあぐねていると、ミオカさんがとぼけた声を出して目を開いた。恥ずかしげもなく股間の毛に手をうずめて掻いている、あまりにも不気味な光景に、顔をしかめて無言で立ち尽くす、直人と慎吾。


 ミオカさんがゆっくりと立ち上がり、


「なんだ、お前ら?」


 と、さほどおどろいた様子もなく、酒臭い息を二人に浴びせかけた。


 たしかに見覚えのあるその男に、なんと言っていいものか分からず、そっと直人の様子を窺うと、信じられないことに満面に笑みを浮かべていた。眼前のミオカさんを、待ちわびた面白いことだとでも思っているのだろうか?


「ねえ、あんたがハンマーおじさんなの?」


 直人がきくと、ミオカさんはその質問がよほどおかしかったのか、呵々(かか)と大きな笑い声を上げた。


「お前らもそう思って来た奴らか。さいきん多くて困ってるんだよな、チキショウめ」


 悪態をつきながら笑うミオカさんを見ているあいだに、すっかり緊張の糸が緩んだ。


 ミオカさんが「暑いんだよなチキショウめ」と言いながら、ゴムの伸びたブリーフを履き、中へ入るよう促した。警戒しつつも、なぜか入らなければいけないような気がした慎吾は、直人のあとに続いて小屋に入った。


「お嬢ちゃんも来なよ」


 酒ヤケのしゃがれ声で、中へ入るのをためらっているワチコに言ったミオカさんは、そのままアグラをかいて、シケモクに火を点けた。その煙が、天井に空いた穴から外へと抜け出していく。


 ワチコはようやく中へと入ったが、それでもミオカさんへの警戒を解いていないらしく、慎吾のうしろに隠れるようにして座った。四人いるとさすがに窮屈に感じる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ