24:縁日ー➁
焼きそばを食べ終えた二人は、直人とワチコをふたたび捜しはじめたが、一向にその姿を見つけることはできなかった。
人波に流されてはぐれてしまわぬようにと、奈緒子がうしろからTシャツの裾をいつものように掴んでいる。そんな格好を知った顔に見られやしないかと思い、額に玉のような汗が噴き出ていた。それを手の平で拭いながら、はたと奈緒子から借りていたハンドタオルを家に忘れてきてしまったことに気づく。
「ごめん、タオル忘れちゃった」
「え、なに? 聞こえなーい!」
スピーカーから洪水のように流れる、大音量の祭り囃子にかき消されて、奈緒子に声が届かない。
頭を揺さぶられながら先の射的屋を見ると、そこに喜色満面の直人とワチコがいた。
裾を掴む手を軽く引いて、それを目顔で伝えると、なぜかすぐに手を振り払った奈緒子は、うつむいて祭り囃子の中を駆けていった。昼間の雨で湿る参道に下駄のカランコロンという音が響き渡り、慎吾は遠ざかる奈緒子に遅れないよう、そのあとを追った。
「もう、二人ともなにやってるの?」
「あ、やっと来た。遅いなあ」
反省の色もなく応えた直人が、コルクの弾を空気銃から発射した。
「大当たりー!」
焼きそば屋のオジサンと見分けのつかないオジサンが、手に持つ小振りの鐘を鳴らし、上等とは言えない大きなクマのぬいぐるみを直人に手渡した。
「はい」
興味すら持たずにそれをワチコに手渡す直人。
「さすがだな」
「アタリキシャリキのコンコンチキよ!」
口にくわえた竹串を手でクルクルと回しながら得意そうに言った直人が、またみんなを置いて射的屋を離れた。そのあとを笑顔のワチコとふくれ面の奈緒子が追い、慎吾も置いてけぼりをくらわぬよう、慌ててそのあとを追った。
「あーあ、やっぱ面白くないな、来なきゃよかった」
参道のはずれ、人もまばらな場所に避難した直人が頬をかきながら言った。
「なによ、楽しんでたくせに」
「だってあれは、ワチコに頼まれたからだよ」
「うん、あたしが頼んだ。これ、いいでしょ?」
右目がすでに取れかけた、お世辞にもカワイイとは言えないクマのぬいぐるみを、嬉々としてワチコが奈緒子に見せびらかした。
「わたしさ、金魚すくいがしたいんだけど」
「えー、おれ興味ねえよ」
「もう、ちゃんとつきあってよ」
「あたしもパスだな」
「なんで? 意味が分かんないんだけど」
「ちょっと、行きたいとこがあるからさ」
「行きたいとこって……そこ今日も行かないといけないの?」
「うん、でも神社の中だからさ、ナオちゃんたちは金魚すくいに行ってきなよ。あたしもすぐ行くから」
珍しく申し訳なさそうな顔をして、言い淀むワチコ。胸に抱えるクマのぬいぐるみの営業スマイルに、腕が食い込んで潰れていた。
「なんだよそれ、面白そうじゃん。おれはワチコについて行きまーす」
悪癖が久々にうずいたらしく、いつものイヤな笑みが直人の顔に浮かんだ。




