22:夜遊びー①
その夜、布団に奈緒子から教わった細工をして、「どうか、どうかお父さんたちにバレませんように」と心中で祈りながら壁掛け時計を見ると、もう午後九時半だった。いつもなら、翌朝のラジオ体操に遅れないよう床に就いている時間だ。
両親は、もうとっくに寝ているはずの慎吾のことなどお構いなしでテレビに夢中になっているらしく、一間挟んだ茶の間からは「罰ゲーム!」というくぐもった売れっ子芸人の声とともに、お父さんの豪快な笑い声が漏れ聞こえていた。
その音の波に動きを同化させながら掃き出し窓をそっと開けると、温くもなく涼しくもないそよ風が、机の上の宿題プリントを中空に解き放ち、カサリと音を立てながら床に散らばせた。
ショックで口から漏れ出そうになるあえぎ声を必死に飲み込みながら、今はもう使わなくなったジョギングシューズで庭へ出て、ゆっくりと音を立てずにその先のアスファルト道へとようやくのことでたどり着いた慎吾は、玄関の磨りガラスの引き戸から漏れ出るかすかな蛍光灯の光をしばらく見てから、一気に駆けだした。
◆◆◆
「遅い!」
集合場所である神社への石段に着くと、すでに三人がいて、奈緒子が怒っていた。
「もう、なにやってたの?」
「う、うん、ごめん」
「まあ、来ただけいいじゃん。おれ、チャーは来ないと思ってたもん」
「な、なんでさ?」
「だってほら、チャーの父ちゃんって怖そうじゃん。おれなら無理だもん」
「でも、約束したし」
「いいんだよそんなこと。で、直人、どこでやるわけ?」
「ここからちょっと行ったとこにビルが二つ並んでるとこがあるだろ、ほら塾の近くに」
「うん」
「その隙間がさ、いい感じで暗くて怖いんだよ」
「そこでやんの?」
「うん。まあ奈緒子がそこでいいなら」
「そこでいいよ。わたしあんまりよく分からないし」
「じゃ、行こうぜ」
直人が立ち上がり、ポケットに手を突っ込んで歩き出した。《バラバラ女セット》が入った紙袋を持って追いかけたワチコがその横に並び、渋る直人に無理矢理それを持たせた。
「ほら、なにやってるの、行くよ」
「うん」
奈緒子が慎吾を急かし、二人も直人たちのあとを追った。
◆◆◆
ビルの隙間をのぞき込みながら、慎吾は「ここは怖すぎる」と思わずにはいられなかった。闇が深すぎて、なんにも見えない。このかすかな月の光すら拒むようなナニモノカが、その先にいるような気がして、背中にイヤな汗をかいていた。
ワチコが直人の持つ紙袋を乱暴に奪い取り、その中から懐中電灯を取りだして奈緒子に手渡した。
「じゃあ、行こうぜナオちゃん」
「うん」
「男子はそこで待ってろよ」
「え、なんで?」
闇に吸い込まれそうな気持ちからふと我に返ってたずねると、呆れ顔のワチコが紙袋の中から《血だらけワンピース》を取りだして睨んできた。




