18:のいず川のドクロネズミ-②
「なにやってんだよ、お前ら」
太一だった。日焼けした鼻の皮が剥けている。そして、なぜか後部のアルミ座席にはショートパンツ姿の紀子が、うしろ向きで跨がっていた。
「ドクロネズミを探してたの」
奈緒子がこともなげに答える。
「へえ、ヒマジンなんだな、お前ら」
太一が、奈緒子ではなく、慎吾を見ながら言った。
その目が怖い。
「いた?」
笑顔で直人に訊く紀子。
「べつにいいじゃん、お前らには関係ないよ」
直人がそっぽを向いて面倒くさそうにため息を吐いた。
「えー、ひどい。教えてくれてもいいじゃん」
笑いながら言う紀子。その顔が、なぜか少しだけ哀しそうに見えた。
「い、いなかったよ」
慎吾はいたたまれずに口を挟み、すぐにそんな自分を後悔した。
「あ、やっぱりいなかったんだ。でも、直人にワチコにチャーに山下さんってなんか変な組み合わせ。そんな仲良かったんだ?」
「お前だって太一とそんな仲良かったっけ?」
「べつに……仲が良いっていうか、塾まで乗せてもらってるだけだから」
「太一って塾とか行ってるんだな、バカなのに」
無神経なワチコの言葉。
「うるせえな、夏期講習だけだよ」
太一が奈緒子をチラと見て、すぐにまた慎吾を睨みつけた。
「山下さんは来ないの?」
「うん、わたしは普通の中学でいいから」
「ふーん、頭いいのにもったいないよ……直人だってワチコだってホントは頭いいんだから、来ればいいのに」
自分だけ名前を挙げられなかったことに萎縮しながら川に目をやると、そこに、最悪のタイミングで川面から顔を出した大きなネズミが、不格好に泳いでいる姿が見えた。その背中の黒いドクロ模様が不気味に笑っているようで、慎吾は少し身震いしたが、このおかしな雰囲気で、そのことを誰にも伝えることができない。
「夏期講習だけの人もいっぱいいるのに。次郎とか学とかもそうだし。純平は、ずっといるけどね」
「あいつ勉強が趣味だからな」
太一が笑う。
「そうそう、それに純平って、最近は夜まで残って勉強してるんだよ。わたしはそこまではできないなあ」
「おれは行かねえよ。勉強とかどうでもいいし」
「そう、じゃあしょうがないね…… あ、そうだ、縁日は行くの?」
「さあ。あんまり行く気しないけど」
「縁日があるの? 行きたいね、みんなで」
奈緒子が目をランランと輝かせた。
「でもべつに面白くないぜ」
ワチコがそれに応える。




