15:アイスキャンディーー①
ガードレールに腰掛ける、四つの影。
のびた八つの足が、振り子のように揺れる。
ソーダ味の青いアイスキャンディーを、おいしそうに頬張る直人とワチコ。
その横には、まだふくれ面の奈緒子。
慎吾は、となりの奈緒子を見ることもできずに、アイスを頬張った。冷たい。とても。胃袋がキュッと締めつけられて、全身が心地よく冷えていく。
「ウマイなあ」
端に座る直人が、笑顔で足を大きく揺らした。カタタンカタタンと鳴るガードレールの振動が尻に伝わり、それがなぜか心地よかった。
「……やっぱりアレ、UFOだったんじゃないかな」
話を蒸し返す奈緒子。手つかずのアイスからは、青い滴が垂れ落ちていた。
「分かんないしどうでもいいよ」
直人が、ウンザリといった顔で奈緒子に応える。
「どうでもよくないよ。なんでみんなもっと喜ばないわけ?」
「ごめん……ぼくも本当はUFOだと思う」
「えー、なんで今さらそんなこと言うの? それはそれでムカつくー」
「さっきのは、UFOだよ」
当然のようにワチコが言い、直人がそれを鼻で笑った。
「なんでそんなこと言えんだよ?」
「だってよ、UFOって『未確認飛行物体』って意味だろ。なんかで読んだけど、それってさ、なにか分からない飛んでるヤツってことだろ。アレがなにか分からないんなら、そういうことじゃん」
「へえ、なるほど、ワチコってば、おもしろいこと言うな」
「じゃあさ、ワチコちゃん、よく分からない飛んでるヤツは、みんなUFOになるわけ?」
「そうだよ。だから正体が分かんねえのは、全部UFOで、もしアレがウチュージンの乗り物だとしたら、正体が分かってるから、UFOじゃないわけよ」
半分も意味が分からず、感心しながらワチコの話を聞くアタマの良い二人に置いてけぼりを喰らったように感じながら、しかしそれよりも、ワチコがこんなにも饒舌にUFOについて語ることに、驚きを隠せなかった。
「じゃ、じゃあさ、アレはUFOってことになるわけ?」
「だから、さっきからそう言ってるだろデブ!」
ワチコはなぜか慎吾にだけ厳しい。
「まあでも、なんかよく分からないけど変なモン見たし、今日は満足かな」
直人がガードレールから飛び降りて体を伸ばした。
「じゃあ、おれ帰るから。チャー、明日ボールとグローブ持ってくるからな」
「あ、う、うん」
「じゃ」
本当に明日も来る気なんだな、と慎吾は思ったが、それを直人には言えなかった。
直人が見えなくなってしばらくしてから、
「あたしも帰る」
と言って、ワチコが、食べ終わったアイスの棒を、慎吾へ乱暴に手渡した。
「アタリ」
「え?」
見ると、そこには滲んだ文字で、《アタリ! もう一本もらえるよ!》と書かれていた。
「あ、ありがとう」
「あんまり食べんなよ、もっと太るぜ」
「分かってるよ」
慎吾の肩をいきなり殴って、ワチコは奈緒子に、
「ナオちゃん、明日も病院に行っていいか?」
と、少し申し訳なさそうにしてたずねた。




