14:金田鉄雄の家ー④
ベランダに出て、それを確認すると、
「今度は男子が先な」
と、ワチコが肩を押した。
もちろんそのつもりで、直人にそれを目顔で伝えた。
「……分かったよ」
直人を先頭にして、カンテカンテンと音を立てながら鉄階段を上りきると、風雨にさらされて黒ずんだ、なんにもない屋上に出た。
それぞれに、辺りを見渡しながら中央まで足を運んだが、そこは特になにも変わった様子のない、ただの屋上に過ぎなかった。
「なんだよ、なんだよ、ここハズレじゃねえか」
直人が、ため息を吐いて、床面のひび割れをつま先でなぞった。
「ホントだよな。デブ、なんとかしろよ」
とんでもないことを言うワチコ。
「わたしは楽しかったけど」
やっぱり、奈緒子の言葉にはいつも救われる。
だけどやっぱりここはハズレだったな、と慎吾は思う。
バカな噂話は、本当にただのバカな噂話でしかなかった。信じていたわけではないし、そもそもこの噂話は、バケモノが出ると言ったような類の話ではない。肝試しで来るには、不向きな場所だったのかもしれないな、と思い、奈緒子たちに対して、申し訳ない気分になった。
「ごめん」
と、小さく謝ると、
「まあ、いいや。ここに行こうって言ったの、おれだし」
と、あくび混じりに返した直人が、つまらなそうに体を伸ばした。
「でもアレじゃない? ここでUFOが来るオマジナイをみんなで言えばさ、UFO来ちゃうかもよ」
奈緒子が微笑んで、慎吾に目配せをした。ここに来てから、なに一ついいところがないのを庇われているのだと思い、嬉しさと惨めさが胸に芽生えた。
「それいいね。ていうかそれでUFOが来なかったら、デブはなんかおごれよ」
ワチコが、嬉々として奈緒子の提案に乗った。
おかしな条件付きで。
「あ、いいねそれ。よっしゃ、やるか。呪文ってどんなんだっけ?」
「イサダクテキーホーユー……」
「それそれ。んで、どうすりゃいいの?」
「それは……」
「みんなで円になって、手をつないでやればいいんじゃない?」
「ああ、ぽいね、それ」
奈緒子の提案に従って、奈緒子は直人と右手を、左手をワチコとつなぎ、慎吾はそれに対面するかたちで、直人とワチコと手をつなぎ、四人で円を作った。
「じゃあ、わたしの合図で一緒にね」
奈緒子が、正面の慎吾を見ながら言った。
声もなくうなずくと、直人とワチコもうなずいた。
「せーのっ!」
奈緒子の合図に合わせ、
「イサダクテキーホーユー、イサダクテキーホーユー……」
と、何度も唱えながら、四人は空を見上げた。
そこに――
――照り射す太陽だけの雲一つない夏空に、小さくナニカが光っていた。




