13:直人とワチコー③
「なんなんだよ!」と慎吾は、心中で毒吐いた。
「まあまあ、仲良くしようぜ」
入り口に立つ直人が、適当なことを言いながら、部屋の中央に座る五匹の犬たちのもとまで行き、その中の一匹、茶毛の小型犬ジローの頭を撫でた。
自分には懐いていないくせに、直人には頭を許すその態度にもイライラが募る。
「でもワチコも直人もさ、こんなところにいても、ヒマだと思うよ」
「あたしはいいんだよ、どうせヒマだし」
「おれもヒマー。お前らさ、いつもここにいて、なにやってんの?」
「犬にエサやったり……本を読んだり……」
「はあ? なんだよそれ楽しいのかよ?」
「べつに楽しいとか、そういうことじゃなくて……」
「なんかやろうぜ。キャッチボールとか」
「グローブとかないよ」
「おれんチにあるから、明日は持ってくるよ」
直人が明日も来るらしいのを知って、慎吾は眉間にシワを寄せた。
「それよりなんで山下、なんにもしゃべらないの? まさか怒ってんの?」
それに気づかぬふりをして、直人が小声でたずねた。
「さあ、分かんないよ」
「なんか、居づらいって言ってたぞ。デブがなんかしたんだろ。謝れよ」
「ぼ、ぼくは何もしてないよ。謝ってほしいのはこっちだよ」
ワチコが立ち上がって奈緒子のもとまで行き、その両肩を掴んだ。
「ナオちゃん、デブがなんか言ってるぞ」
むりやり正面を向けさせられた奈緒子が、伏し目がちに慎吾を見て、
「……ごめん」
と、意外にもしおらしく謝った。
先手を取られ、慎吾はただ黙ってうなずくことしかできなかった。
「なんだよ、ナオちゃんが謝んのかよ」
その予想外の展開にワチコがつまらなそうに口をとがらせた。
「なんか分かんねえけどさ、そんなことどうでもいいから、なにかやろうぜ」
直人が慎吾の戸惑いを察したのか、話題を変える。
「そうだな、ナオちゃん、なんか面白いこととかないのか?」
「え? うん……」
チラと慎吾を見てから、
「都市伝説の場所を巡るのとかってどう?」
と、奈緒子が小声でワチコに言った。
《都市伝説巡り》が、二人だけの秘密の遊びだなんて思っていなかったけれど、それをワチコや直人にやろうと言った奈緒子に対して、少しだけ寂しさを覚えた。
「お、それいいね。おれもそういうの好き」
「どっか行きたいとことか、あんのか?」
もうすっかりその気になっている直人とワチコ。
「うーん、わたしはこの町のことまだあんまり知らないから、よく分からない」
「あ、そっか、そうだよな。じゃあ、おれが面白そうなところ教えてやるよ」
「なに?」
「あれだよあれ、殺人鬼の家。なんだっけなあ」
「それって『金田鉄雄の家』じゃない?」
置いてけぼりにされるのがイヤで、思わず話に入ってしまった。




