表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バラバラ女【改稿版】  作者: ノコギリマン
31/159

9:保健室-②

「なんで奈緒……山下さんに、殴られんのさ」

「だってお前、なんでか知らねえけど、さいきん山下と仲いいだろ」

「でもこのケガは、山下さんとは関係ないよ。純平に本で殴られたんだ」

「純平に? なんだ、お前ケンカとかすんだ。意外」

「ケンカじゃないよ。純平がいきなり殴ってきたんだよ」

「でもお前、純平の前で山下としゃべったりしてたんだろ、どうせ」

「なんだよ、どうせって。なんで、そんなこと分かるんだよ」

「山下と仲いいお前が純平に殴られたんなら、それしか理由がないだろ。そんなん、誰でも分かるよ」


 いつもの、「おれはなんでも分かってる」と言いたげな直人の顔を見て、慎吾は自分がバカにされているのをありありと感じ、


「言ってる意味が分かんないよ…」


 と、なかば抗弁する気も失せて呟いた。


「分かんねえことないだろ、なあ成田ちゃん」

「まあ、色々とあるから。小学生も大変ね」

「意味分かんないよ。なんで殴られんのさ」

「いいよべつに分かんねえなら」

「まあ、お茶でも飲みなさい」


 苦笑しながら、湯気の香るお茶を湯呑みにそそいで、二人に手渡した成田先生は、


「飲んだら教室に戻りなさい」


 と言って、職員室へ向かった。


 怒りとやるせなさで渇いた口内を暖かくすすぎ、ノドを滑り落ちていくお茶。久しぶりに飲むそれは、慎吾の荒れる心をもゆっくりと落ち着かせる力を持っていた。


 ベッドでお茶を飲み干した直人が、「お前も大変だよな」と含みを持たせた言葉を投げかけ、そのまま保健室を出て行った。


 ひとり残された慎吾は、もう一口お茶を飲んで、ふたたび中庭を見た。


 風に揺れる、紀子の束ねた後ろ髪。


 楽しそうに笑う女子たちが、手の届かない遠い世界の住人のように思えてならなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ