8:「お前」ー①
だから、
「神社に行ってみない?」
という、奈緒子の提案に、慎吾は、思わず大きなゲップをしてしまった。
給食後の昼休み。
慎吾の席のとなり、バレーボールをしに外へ出た、吉乃の席に座る奈緒子が笑い、
「大丈夫?」
と言って、また笑った。
奈緒子と《秘密基地の約束》を交わしてから、もう一週間が過ぎようとしていて、毎日のようにあの廃病院へ通いつづけているうちに、気づくといつの間にか、奈緒子といちばんしゃべるようになっていた。
当然のように突き刺さる、いくつものクラスメイトの視線。
教室でも当たり前のようにしゃべりかけてくる奈緒子に、最初のうちは戸惑いもしたが、すぐに芽生えた優越感が、それを打ち消した。
「でもなんでさ?」
「え?」
「神社に行くって」
「チャー忘れたの? 昨日、チャーが神社にある都市伝説のこと言ってたからだよ」
「ああ……」
確かにきのう廃病院で、『失恋大樹』という、神社にある、大きなご神木にまつわる都市伝説を奈緒子に話していた――
◆◆
『失恋大樹』
その大きなご神木には、《恋愛と復讐の神様》が宿っていると言われている。
好きな人に失恋した人が、その失恋大樹に、フった相手の名前か、フッた相手の好きな人の名前を五寸釘で彫り込むと、その日から十五日間は徐々に不運が訪れて、十五日目に、恨みの大きさに合わせて、その人へ《恋愛と復讐の神様》が、恐ろしい神罰を与えてくれる。
もしも神罰が下るのをやめせさたいならば、書いた本人に、その名前の上から大きな×印をつけさせなければならず、それ以外に神罰を食い止める方法はない。
◆◆
――その都市伝説を奈緒子に話したことを、今さらながらに後悔していた。
都市伝説が好きだという奈緒子の気を惹くために、この町にあるいくつかの都市伝説の話をしたが、まさかよりにもよって『失恋大樹』に興味を持つとは思わなかった。
ほかにも『金田鉄雄の家』だとか、『のいず川のドクロネズミ』や、『ハンマーおじさん』の話をしたってのに。




