表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バラバラ女【改稿版】  作者: ノコギリマン
21/159

6:あだ名ー②

「怒ってないの?」


 恐る恐るふたたびたずねると、


「だからなんで?」


 と、山下奈緒子も、ふたたびたずね返してきた。


「ぼく、山下さんを尾けてたんだよ」

「わたしを? なんで?」

「なんかよく分からないけど、前を歩いてる山下さんを見つけてさ、家と違うほうに歩いてたから、気になっちゃって」

「ふーん。よく分からないけど、わたしべつに怒ってないよ」

「ホントに?」

「うん。でもちょっと、ガッカリしたけど」

「ガッカリ?」

「うん。やっと血塗れナースに会えるんだって、ちょっとワクワクしてたから」

「ごめん、なんか、ぼくで」

「いいよ、気にしないで」


 やっとのことで顔を上げると、目の前で山下奈緒子が微笑んでいた。


「でもホントにごめんね」

「いいよ謝らなくて」


 そう言って、山下奈緒子は、シッポを振りながら近寄ってきた大型犬の頭を優しく撫でた。


「山下さんは、なんでこんなところにいるわけ?」

「言ったらバカにされるかもしれないけど、血塗れナースに会いに来たの」

「血塗れナースに? なんで?」

「うーん、ただの好奇心。わたし、言ったと思うけど、そういう話が好きなの」

「でも、山下さんみたいにアタマのいいコが、『血塗れナース』なんてどうしようもない話を、なんで信じるわけ?」

「わたしも本当に信じてるわけじゃないけど、ワチコちゃんにこのまえ聞いて、やっぱちょっと面白そうだなとか思っちゃって。噂話がどんなにバカバカしくても、そんな話があるってことは、やっぱりそこには、その噂話ができるだけの何かの理由があると、わたしは思ってるんだ」

「火のない所に煙は立たない?」

「そうそう、そういうこと」

「でもいなかったんでしょ?」

「うん。もし本当にいたら、わたしはメチャクチャに刺されて死んでるとこだけど、アハハ」

「すごいね、ぼくは、一人でこんな怖いところには来れないよ」

「来てるじゃん」

「あ、うん、でもそれはほら……」


 しどろもどろになりながら慎吾は、山下奈緒子のかたわらでシッポを振る犬を見て、とっさに話を逸らした。


「こ、この犬たちはなんなの?」

「タローにジローにサブローにシロー、それにこのコは女の子だから、イツコちゃんね」

「名前じゃなくてさ、なんで犬がここにいるわけ?」

「わたしにも分からないけど、初めてここに来たときに、もういたんだよね」

「ふうん、それでなんでエサなんかあげてるわけ?」

「だって、かわいそうでしょ。多分このコたち捨て犬なんだよ。ていうか宮瀨君さ、さっきから、なんでなんでばっかりだね」

「あ、うん、ごめん」

「べつにいいんだけど。わたしも聞きたいことあるんだ」

「あ、うん、なに?」

「なんで、チャーなの?」

「え?」

「あだ名」

「あ、ああ、それね……」


 言葉に詰まる。


《チャー》の由来なんか、思い出したくもない。


 だが、山下奈緒子には、自分のことを全てさらけ出してもかまわないという思いも、ないわけではなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ