5:血塗れナースー①
その日の放課後、慎吾はトボトボと独りで帰っていた。
次郎はめずらしく学の家へ遊びに行くそうで、べつにどうでもいいのに、「ごめんな」と、何度も申しわけなさそうに謝ってきた。
たしか今日は、全国の子どもたちが待ちに待った『シーズタークの冒険』というテレビゲームの続編である『シーズタークの冒険2/ゲンドマイズの最凶戦艦』の発売日だ。
ゲーム機の無い子どもたちは、自然とそれを持つ友人の家へと足繁くかようようになる。
たかがゲーム、されどゲーム。それに疎いヤツはバカにされるのがオチだ。慎吾も例に漏れず、その点においても次郎や太一にバカにされていた。
それでもゲームの面白さがイマイチよく分からない。
漫画やテレビの話題なら、十分についていけるくらいには好きなのだけれど、どう考えてもゲームが面白いとは思えないのだ。
去年の冬頃、『シーズタークの冒険』を出すゲーム会社が出した『ジュキラスのクレイジーマシンガン』というシューティングゲームを、学の家でやらせてもらったのだが、五分と経たずに飽きてしまい、コントローラーを放り投げて、学に怒られたことがある。
それ以来、学は慎吾を自分の大切なゲーム機に触れさせないと決めたらしく、だから今日、慎吾は学の家に行くことができないのである。
「バッカみたい……」
独りごちて、ふと前に目をやった慎吾は、思わず足を止めた。
目の前を、山下奈緒子が歩いている。
山下奈緒子まではかなりの距離があいていたが、幻想の世界から抜け出してきたような、あの白いワンピースを見まちがえるはずはなかった。
その光景を見た慎吾は、まず「おかしいな、たしか山下さんの家はこっちのほうじゃなかったような」と思い、次に「どこに行くのか知りたい」という不埒な好奇心に駆り立てられ、とっさに山下奈緒子のうしろ姿を追いはじめる両足を、制止することができなかった。
この町はまだまだ発展途上だ。駅前の通りを過ぎると、いずれはオフィス街になる予定の、フェンスで囲まれた原っぱだらけの景色が見えてくる。
東京とは言っても、都下のこの町はほとんど田舎町だと言って、差し支えがない。そんななにもない場所を、足をゆるめることもなく歩いていく山下奈緒子を、つかず離れずの距離で尾けながら、慎吾は少し不安になった。
「こんなところになんの用事があるんだろう?」
と、慎吾は思いながら、まるでアトラクションの巨大迷路のように入り組むフェンスのあいだを、一切の躊躇もなく突き進む山下奈緒子を、見失わないよう、見つからないよう、慎重に慎重にあとを尾けた。




