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バラバラ女【改稿版】  作者: ノコギリマン
136/159

40:屋上-③

「ちょ、ちょっと奈緒子、危ないよ」

「平気だって。チャーも来なよ」


 そのまま幅のそう広くない(ふち)に座り、足をブラブラとさせながら手招きする奈緒子。


「……分かったよ」


 慎吾も恐る恐る柵を乗り越えて、奈緒子のとなりに腰を下ろした。


「怖い?」

「怖くないよ」

「でもここから下を見てみて。意外と高いんだよ。落ちたら死んじゃうかも」

「や、やめてよそういうこと言うの……」


 たしかに高い。雑草だらけのアスファルトの路面が、死の臭いを放っていた。


「……セト君のこと、もう大丈夫?」

「……大丈夫じゃないよ。ずっと気になってたし、それにさっき会いに行ったときも、ぼくが思ってたより、なんていうか、すごくあっさりお別れを言っちゃったんだ。もっとホントはいっぱい話したかったのに、なんにも言えなかった。それをこれからずっと、あれで良かったのかな? って考えちゃうと思うんだ」

「しょうがないよ、それは。でも会いに行かなかったら、もっともっと後悔することになってたと思うな。これで良かったんだよ、きっと」

「……そうだね」


 奈緒子の言うとおりだ。


 これからさき、何度も正次のことを思い出しては、そのたびに胸が痛くなるのだろう。


「今日の夜は、《バラバラ女のイタズラ》はやめよっか?」

「う、うん。明日は?」

「明日もいいかなあ。でも夜はここに来てほしいんだけど」

「なんで? なんかやるの?」

「うん、ちょっとね」

「なに?」


 奈緒子はそれに答えず、意味ありげな笑みを浮かべながら、柵を掴んで立ち上がった。


「チャーも立って」

「う、うん」


 へっぴり腰で立ち上がると、遠くに町が一望できた。


「知らなかったでしょ?」

「うん、なんか、すごいね」


 ここから見える町のすべてがちっぽけで、慎吾はもっとちっぽけだった。


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