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バラバラ女【改稿版】  作者: ノコギリマン
104/159

29:犯人ー⑤

「な、なんでワチコまでいるんだよ?」


 目を白黒させながら、次郎が慎吾を見た。


 慎吾もその理由が分からずに、首を振った。


「ごめんな次郎、その松葉杖の跡、あたしがつけたんだよ」

「なっ…?」

「いやあ、たしかに縁日の時にはあったんだけどさ、消えてたらイヤじゃん。だから先にワチコに行ってもらって、つけさせたんだ」

「ず、ずるいぞ!」

「まあ、でも認めたじゃんお前。それに悪いのは、おれたちじゃなくてお前だろ?」


 次郎の逃げ場をどんどんと潰していく直人に、慎吾は戦慄していた。


「でもさ、卑怯っちゃ卑怯だからさ、お前がなんでおれの名前を書いたのかとかは聞かないよ。×印さえつけてもらえば、もうこのことは誰にも言わないし」

「はい」


 ワチコが、五寸釘を素早く次郎の手に握らせた。


 その冷淡な行為にも戦慄を覚える。


 すっかり観念した次郎が無言で失恋大樹に近寄り、ハッとした顔で直人を見た。


「なんだよ、早くつけろよ」

「いや、コレ……」


 そう呟いた次郎が、目顔でそこを見るように促した。


 三人も失恋大樹に近寄り、その意外すぎる光景に、慎吾は愕然(がくぜん)とした。


 《林直人》の文字の横に、新たな名前が書きこまれていた。


「お、おれじゃないぞ」


 次郎の力ない言葉が、蝉時雨(せみしぐれ)にかき消される。


 そこには、《宮瀨慎吾》という、最も馴染み深い名前が刻み込まれていた。


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