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第6話 記憶遡行④

いつも大体6,000文字くらいを目安に書いているのですが、若干オーバーしました。

 無数の記憶が作り出す星空の下、青年と黒猫が顔を見合わせていた。


「師匠」

「うむ。妙なことが起きておったな」


 一人と一匹は、どちらともなく青年の手の上で輝き続ける記憶の欠片を見やる。つい今しがたまでその欠片に詰まった、今はこの場にいない少女の記憶を見ていた。

 だが、明らかに異質な部分があった。()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 『思わぬ事故』が起きた練習を引き合いに出すまでもなく、他人の記憶を再生すればその持ち主が出演する映画や舞台を見るように、客観的視点で術者に開示されるはずだった。

 主観的視点で見えるのは、自分の記憶を再生した場合のみ。それは間違いない。では何故――?


「……師匠、少し調べてきますので――」

「うむ、任せるがよい。じゃが、なるべく早く戻れよ。良いところを見逃してしまうでの」


 みなまで言うなとばかりに言葉を遮って肩から飛び降りたクロの軽口に小さく頷きを返し、マキオは手にした欠片をそっと足元に――記憶の回廊に明確な地面はないが――置いた。

 そうしておいて、自身は静かに目を閉じる。これから一時的に<記憶遡行>の術式制御をクロ一匹ひとりに委ねることになるが、不安はない。師匠たるクロに任せておけば、滅多なことは起きないという信頼があった。いや、時折やらかしてはくれるのだが、こういうときの師匠は非常に頼りになると十年来の付き合いで知っている。

 程なくして、徐々にマキオの姿が薄れていき、やがて完全に消失する。同時にこれまでマキオが受け持っていた術式維持の負担がクロへと流れ込むが、それを全く意に介さずになだらかで小さな双肩で受け止めて、クロは前足でそっと記憶の欠片に触れた。


「さて、儂は続きを見ておくか。たまには昔を懐かしむのも悪くなかろうて」


 そうひとりごちて、クロは記憶の再生を再開するのだった。


 ▼


 おきたら おうちにいた。


 おそとは まっくらだった。


 となりの へやで パパと ママが


 ソーマおにいちゃんと クローネおねえちゃんと おはなしをしていた。


 おにいちゃんたちは おとまりしていくんだって。


 わたしは とびおきて となりのへやに はしった。


 ▼


 結論から言えば、マキオが探知したのはククルゥ嬢ちゃんを探しに来た集落の連中じゃった。

 両親と一緒に採取に出掛けてはぐれたとのことで、ひょっとしたら一人で家に戻ってくるかもしれんと、両親は自宅で待機しておるとのことじゃ。

 驚いたのは、集落とククルゥを見つけた場所との距離が想定していたよりも大分離れていたことじゃな。聞けば早朝から出掛けておったそうじゃから、はぐれてから儂らが見つけた昼頃まではずっと一人でこの大森林をさまよっていたことになる。よくまあ無事だったもんじゃ。

 子供の足で行ける所なんぞたかが知れておる、とたかを括っておったが、運よく捜索隊が近くにきていなければそれなりの回数探知を使う必要があったじゃろう。儂ってば()()()()の。

 ともかく、案内されて集落に到着したときには、寝ているククルゥ嬢ちゃんを起こさぬよう慎重に歩いたこともあって、既に日が沈みかけておった。それ故、ククルゥ嬢ちゃんの両親に「礼がしたいから是非に」と宿泊を請われたのはまさに魔王城で聖剣を得た(※)思いじゃったな。

 じゃがまあ、泊めてもらって、食事まで出されて何もせぬというのも座りが悪い。せめて簡単な雑用くらいはやらせてもらおう、と提案しているところに、寝かしつけたはずのククルゥ嬢ちゃんが飛び込んできおった。


「きょう、おとまり!?」


 子供というやつは寝起きから元気なもんじゃの。両親に「まずは助けてもらったお礼が先」とたしなめられた嬢ちゃんは「たすけてくれてありがとうございました!」と元気よく頭を下げ、そして頭を上げた次の瞬間には、座っておった儂の膝に縋り付いて再び先の質問を繰り返した。


「クローネおねえちゃん、おとまりするの!?」

「うむ。マキオも一緒に一晩ご厄介になるぞ」

「やったー!」


 そう言って抱きついてきよる。人懐こい子じゃな。クール美人を自負する儂も、これには流石に頬が緩むというもの。


「し、師匠がデレデレしてる……」


 何か文句でもあるのかマキオ。声を抑えておるつもりじゃろうが、真横で笑いを堪えてプルプルしておれば普通に気が付くぞ。いや、ワザとか?

 ちょっとイラッとしたので、嬢ちゃんから見えないようにこっそり<魔力弾(微弱)>を撃っておくことにする。脇腹辺りに着弾すれば丁度いい掣肘となるじゃろ。


「ぶぎゅっ!」

「ソーマおにいちゃん、どうしたの?」


 む? ちといい角度で入りすぎたか。まあ悶絶するほどではなかったようじゃし問題あるまい。

 ククルゥ嬢ちゃんが心配して声をかけておるが、余計なことを言うなと目で伝えておいた。


「な……なんでもないよ……」


 無理矢理に笑顔を作って言うマキオ。うむ、アイコンタクトは十二分に通じたようじゃ。日頃の()()の賜物じゃな。


「さて、ご両親。話の続きじゃが、儂らはこれでも魔法の心得がある。泊めてもらう間、少しは役に立てることもあろう。何かあれば遠慮なく申し付けてほしい」

「とんでもない、娘を救って頂いた恩人を働かせるなんてできませんよ!」


 ククルゥ嬢ちゃんのお父上、バハルゥ殿が恐縮した様子で言うが、儂としては多少なりと働いて食う飯の方が美味いのでな。うむ、ここはさも簡単そうにやって見せれば納得してもらえるか?


「では、せめて火起こしと水汲み程度はさせてもらおう。なに、魔法でちょちょいじゃよ」


 言いながら、立てた人差し指の先に一瞬だけ火球を作ってみせる。見たところ灰に埋めた炭を火種にしておるようじゃが、あれで火を起こすのは手間じゃし、井戸から水を汲んでくるのも重労働。そう考えての提案じゃったが、思った以上に喜ばれた。特に奥方、トトリィ殿の反応がよかったの。炊事場を預かる者にとって、この二つは切り離せぬ上に大変なものじゃからな。


「師匠、どうせなら魔導書を作って置いていった方が楽になるのでは?」


 マキオが小声で提案してくるが、儂は首を横に振る。


「一宿一飯の恩義には過分じゃ。言い方は悪いが、儂らは既にククルゥ嬢ちゃんを助けておる。これ以上は釣り合わぬ」


 マキオは微妙に納得していない顔じゃったが、こればっかりはの。なにせ並の魔導書ですら大金が動く。ましてやこやつの作ったものとなれば性能は折り紙付き。普通ならば一宿一飯どころか一年養われても釣りが来る。施しが悪いとは言わんが、限度というものがあろう。マキオの場合は元手がかからんせいか、どうにも魔導書の価値を軽く見る傾向があるの。ま、生来のお人好しというのも多分にあろうし、それがこやつの良いところでもあるが。

 それともう一つ。余計ないさかいを招かんとも限らんというのもある。便利なものは広く普及すればよいが、誰かが独占している状態では争いの種になることがある。よそ者の儂らが余計な火種を持ち込むべきではなかろう。

 そんなわけで、その夜はククルゥ嬢ちゃんの家に泊まらせてもらったのじゃが。


「ねーえー、クローネおねえちゃーん、まほうおしえてってばー」


 今、儂の腰にはククルゥ嬢ちゃんがまとわり付いてきておる。

 夕餉ゆうげの支度となった際に、宣言通り魔法でかまどへの火入れをしたのじゃが、それが気に入ったらしく、ずっとこの調子じゃ。

 じゃが。


「ダメじゃ。ククルゥ嬢ちゃんはまだ小さい。魔力の制御が難しい故、も少し大きくなったらの。」


 何度目か分からぬが、同じ答えを返すしかない。魔法の訓練は早ければ早いほどよいとも言われるが、それは才能のある子供にきちんと教える師匠が揃って初めて成立する話じゃ。

 魔力が見えとるらしいククルゥ嬢ちゃんは、才能に関してはずば抜けていると言っても良いじゃろうが師匠がおらぬ。平時ならば儂が教えても良いが、今は一所に長く留まる訳にはいかん。中途半端に教えて放り出すくらいならば何もせぬ方がマシというものじゃ。


「ククルゥ、もうおねえさんだもん!」


 目の前で子供らしく膨れておるのは誰かの?

 微笑ましい様子にまたもや表情筋が緩むのを自覚するが、今回はそのまま緩ませておくことにする。マキオは今、後片付けでここにおらんし。

 そうじゃな、あとでご両親に魔法学校への入学を勧めておくか。それくらいならしてもバチは当たらんじゃろう。

 そう考えながらカエルの喉のように膨れたククルゥ嬢ちゃんの頬をつついて遊んでいると、段々それが楽しくなってきたのか嬢ちゃんも笑い出した。ふふ、可愛いもんじゃ。


「ククルゥ、そろそろ寝なさい」


 二人して大騒ぎしておったら、トトリィ殿に叱られてしまった。儂を見る目が若干呆れを含んでいるのは気の所為ではなさそうじゃな。ちとはしゃぎすぎた。

 げっ、よう見たら後ろにマキオもおった。あ奴め、あからさまに溜息なんぞ吐きおって。あとで覚えておれよ。


「おやすみククルゥ嬢ちゃん。また明日の」

「うん! おやすみクローネおねえちゃん! ソーマおにいちゃんも!」

「うん、おやすみククルゥちゃん」


 トトリィ殿に連れられて、ククルゥ嬢ちゃんは寝室に向かった。

 さて、儂はどうするか。バハルゥ殿に魔法学校の件を話しておくかの。明日には発つわけじゃし、話すならば別れ際にバタバタとするよりも今のうちがよかろう。マキオにもその旨を伝えると同席すると言い出した。まあ、儂だけでなくマキオからも推薦があれば多少の後押しにはなるか。


「おや、クローネ様にソーマ様、どうされました?」


 採取に使う道具じゃろうか。なにやら手入れをしておったらしいバハルゥ殿は、作業の手を止めてこちらを見遣った。それにしても、ククルゥ嬢ちゃんは母親似じゃな。バハルゥ殿はなんというか、かなり厳つい見た目をしておるからの。じゃが目はとても穏やかで大型の草食獣を連想させる。

 と、そんなことを考えていたらマキオに先を越された。


「実は、ククルゥちゃんのことで少しお話が」


 マキオがそう言うと、バハルゥ殿は怪訝そうな顔をしながらも椅子を勧めてきた。


「単刀直入に言うと、ククルゥ嬢ちゃんには魔法の才能がある。将来、魔法学校へ入れる気はないかの?」


 勧誘ではなく提案じゃから、こういう場合は端的に要件を告げるに限る。拒否されようが受け入れられようが、儂らには利も損もないからの。


「魔法……ククルゥが、ですか?」

「うむ。今日、最初に会ったときからじゃったが、どうも魔力が見えておるようじゃった。恐らく相当な才能を持っておる。鍛えれば一流の魔法使いになれるじゃろう」

「僕も見ました。魔法を使う前の、魔力操作の段階から見えていたようでした」


 よほど意外じゃったのか、バハルゥ殿は目を丸くしておった。聞けばバハルゥ殿もトトリィ殿も魔法に関する素養はほぼないとのこと。なるほど、それでは娘に魔法の才があるとは考えんじゃろうな。


「とはいえ、じゃ。魔法学校への入学には少なくない金銭的負担が伴う。儂としては才能を埋もれさせるのは勿体ないと思うが、無理にとは言わぬよ。じゃが、もしそのつもりがあるのなら、十六歳までに入学金を貯めて王都の魔法学校へ入れてやると良いじゃろう」


 儂の言葉を聞いて、バハルゥ殿は深く考え込んでおった。それはそうじゃろうな。これまで想定すらしていなかった将来じゃろうし。


「ま、今すぐ決める必要もないことじゃし、そういう選択肢もある、とだけ言わせてもらうとするがの」

「そう……ですね。どのみち私だけでは決められません。妻と、それにククルゥにも――ああいや、あの子は行きたがるでしょうが」

「じゃろうな」

「でしょうね」


 夕食前から先ほどまでのはしゃぎようを思い出したのであろう。バハルゥ殿は苦笑しながらそう言う。儂とマキオも完全に同意見で、図らずも声を揃えて肯定してしまった。それが妙に可笑しくて、三人して笑い合う。


「話というのはそれだけじゃ。では、バハルゥ殿、改めて一晩ご厄介になるのじゃ」

「お世話になります」

「こちらこそ、娘を救っていただいたばかりか、魔法の素養まで見出していただきありがとうございました。どうぞゆっくりお休みください」


 一礼してその場を辞した儂らは、そのまま客間としてあてがわれた部屋へと向かった。

 そう大きくない村の割に、というのは失礼かもしれんが、この家は中々に大きい。素材こそ木じゃが、作りはかなりしっかりしておるし、部屋数も多い。詳しく聞かんかったが、ひょっとしたら村の中で役職に就いておるのかもしれんの。


「では、休むとするか。儂が美人じゃからって妙な真似はするなよ?」

「はいはい。おやすみなさい師匠」


 寝床を整え、休む前にからかってやったら、マキオの奴めおざなりに流しおった。旅を始めた頃は顔を真赤にして、からかい甲斐もあったんじゃがの。いつからこんなに面白みのない男になってしまったのか。


「慣れもしますよ。何回も同じようなからかい方をされていれば」


 ふんっ、可愛げのない奴め!


 ▼


 ママに つれられて わたしは おふとんに はいった。


 パパと おねえちゃん たちは おはなし してる みたい。


 わたしは まりょく が みえる から


 まほうの さいのう が あるんだって。


 クローネおねえちゃん の まほう かっこよかったな。

 

 でも クローネおねえちゃん は おしえてくれない って いってた。


 わたしも ぎゅーって やったら まほう つかえるかな。


 でも きょうは ねむいから


 また あした。


 ▼


 マキオが目を開けると、そこは見慣れた魔導書屋の室内だった。自身は立ったまま、、未だ『記憶遡行』の途中であるククルゥとクロはそれぞれ突っ伏して、丸テーブルの上で開かれた魔導書に手を置いている。見方によっては読書中に寝落ちてしまったようにも見えるだろう。

 静かに魔導書から手を離し、魔力的繋がりと共に一時的に術式の制御を手放すと、続けて先ほど記憶の回廊でそうしたように、再び目を閉じる。深く、深く、自分の中に意識を沈ませるイメージ。

 そうして<書庫>へと辿り着いたマキオは()()()()()()()()()の椅子に座って、()()()()()()()()()()()を操作する。


「<検索>、対象魔法『記憶遡行』、検索単語『記憶』『再生』『視点』、検索開始」


 <書庫>とはマキオの持つ精神世界である。

 彼にとって、知識を蓄え、情報を調べる場所といえば図書室をおいて他にない。この世界に来る以前、図書館に住みたいと大真面目に考える程、マキオは図書室に入り浸っていた。

 そんなマキオのイメージを反映して、<書庫>は巨大な図書室という形をとっており、そして書棚には、これまでに覚えた無数の――同系統の派生や応用を含めれば既に数万冊に及ぶ――魔法が魔導書という形で保管されている。

 これらは本の形を取っていても実体はない為、<書庫>に在る限り劣化せず、紛失や盗難の恐れもない。さらに、収められた魔導書の内容は全て、マキオの知識としても保管されている。元の世界風に言えば、書籍とは別に全文がデータ化して収められているようなものだ。

 つまり、その気になればマキオは『歩く魔法辞典』になれるのである。しかし、知識として持っていることと、使いこなせるということはイコールではない。人間が普段から即座に全ての記憶や知識を思い出せる訳ではないように、マキオがそれらの膨大な知識を活用する為には<書庫>へのアクセスが必要であり、その為の補助機能が、今マキオが行なっている<検索>という訳である。

  程なくして、やや古いパソコンの液晶画面に複数の検索結果が表示された。マキオは慣れた手付きでパソコンを操作し、それらの中から今回のケースに当てはまりそうなものを幾つか選択していく。

 ディスプレイに複数のウィンドウが開くとマキオは素早くそれらに目を通した。


「これですね」


 マキオが目を留めたのは<記憶遡行>の魔導書に付随する注釈のページ。『術者と対象が共通の記憶を持つ場合』という見出しがついたそれは、まさに先ほどまでの状況そのものだった。

 <記憶遡行>の魔法は、簡単に言ってしまえば対象者の記憶に対して術者が魔力的な経路を繋ぎ、それを読み取る、というものである。『記憶の回廊』はこのときに形成される『術式結界による擬似的な空間』であり、精神世界の一種ともいえる。

 マキオがわざわざ一度現実に戻ってから<書庫>に潜ったのは、これが理由だ。即ち、ククルゥの『記憶の回廊』を、同じく精神世界としての性質を持つ<書庫>で上書きしてしまわない為である。仮に上書きしてしまえば術式が強制終了され、良くて一時的な記憶の混乱、悪ければククルゥの記憶を丸ごと消し飛ばしてしまう恐れがあった。

 さて、記憶を再生する際、術式の対象者、つまり記憶の持ち主は『自分の記憶を思い出す』為、自身の主観的視点で記憶再生が行われることになり、術者は『記憶の回廊』を通してそれを読み取る訳だが、術式を行使している間、『記憶の回廊』には当然、術者の意識、精神、そして記憶も存在する状態となる。

 そこで術者と対象者に共通の記憶、例えば同行していた経験などを読み取ると、『記憶の回廊』が読み取った情報に術者側の記憶が刺激され、結果として同一の場面がそれぞれの主観的視点で再生される、ということらしい。

 結論としては、術式の仕様ということで、あまり発生しない事態ではあるものの事実上無害であるということだ。想定外ではあっても術式の範疇だったことに、マキオは心から安堵していた。


「ふむ……『共通の記憶を持っている場合は『記憶の回廊』に存在する欠片が術者の記憶に干渉し、術者自身も<記憶遡行>の対象とみなされる』ですか……なるほど、盲点でした。確かに自分でも知っている場面をわざわざ記憶遡行で探ることはありませんでしたからね。……さて、原因も分かりましたし急いで戻るとしましょうか」


 急いで、とは言ったものの、実際の所その必要性は少ない。<書庫>と現実とでは時間の流れが異なるからだ。今回のように多少複雑な調べ物をして戻ったとしても、現実では長くとも数秒程度しか経過していないだろう。

 とはいえ、現在はクロひとりに術式の制御と魔力負担を任せてしまっている。あの師匠クロに限って問題などないだろうが、なにしろ他人の記憶に干渉する術式、慎重に対処してやりすぎということはあるまい。

 そう考えたマキオは、貸し出しカウンターの椅子に腰掛けたまま目を閉じて意識を集中し、<書庫>へ潜ったときとは逆にゆっくりと浮かび上がるような感覚に身を任せた。

※:慣用句。思いがけず自身に都合の良いことが起こる例え。マキオの世界で言う『渡りに船』のような意味。


ウソ予告:くろねこさんと であった わたしは まほうつかいに なっちゃた!? 次回、魔法幼女ククルゥ第1話『変身バンクで謎の光を照射するだけの簡単なお仕事です』お楽しみに。

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