物語の始まり Ⅷ
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「…メタモニウム?」
紗希は初めて聞く単語に困惑する。
「しらばっくれるなよ。情報は上がってんだ。自身の情報を書き換えどんなものにも変身できる超生命がいるってな。お前の親父の研究のひとつだ。そうだろう?」
ヤクザのボスは紗希の眉間に銃口を突きつける。紗希は怯えて目を閉じた。
「オラ、隠すのは身のためにならねぇぞ?さっさと吐かねぇなら引き金を間違って引いちまうかもなぁ!」
ボスは語尾を強くし紗希に脅しをかける。
その時だった。
「ならそうならねぇようにそれをしまわねぇとなぁ!」
クロが倉庫の外から石を投げ込む。石はボスの手から銃を弾き飛ばした。
すぐさまクロは倉庫に飛び込み紗希を奪い返そうとする。
しかしその手は紗希を押さえていた獣に止められた。
「ボス、その女を!」
クロの攻撃を捌きながら獣は叫ぶ。
「任せたぞ、お前たち」
ボスは紗希を引っ張り倉庫から姿を消し、倉庫内にいたヤクザ達は一斉に獣化し、数人がクロに突撃する。
「めんどくせぇ、全部蹴散らす!」
クロの姿が叫ぶと同時に変化する。全身が薄墨色の鱗に覆われ、腰からは尻尾が生えていた。
「てめぇらみてぇな偽物じゃない、本物の力を見せてやるよ!」
突撃した男たちを蹴りで壁に叩きつけながら、クロは獣たちを睨みつけた。
「その体…あなたも薬を?」
先ほどまで紗希を押さえていた男…おそらくヤクザの中でも立場が上であろう男がクロの体を見て驚く。
「一緒にすんじゃねぇよ。俺は元から龍だ」
クロは獣の一団に突撃し尻尾や足を使い薙ぎ払っていく。
誰かがクロに向けて発砲したが、強靭な鱗は容易く弾丸を受け止めた。
しばらくした後に立っていたのは先ほどの男と、もう一体。
「ガアアァァァァァァァァ!」
倉庫の奥に立っていた影が突如雄叫びをあげる。月光に照らされたその姿はまさにマンモスだった。長い鼻、大きな牙を口の横から生やし、全身が茶色い毛で覆われている。違いを挙げるなら、それは二足歩行をし、かすかに人間の腹筋のような隆起が腹部に見えた。
「ようやくお目覚めですか、オリジナルよ」
「なんだありゃあ?!」
これにはクロも驚いた。恐るべき巨躯を持つ獣に、驚き半分、喜び半分といった視線を向ける。
「彼こそがオリジナル、ある研究者が直接作った薬を服用した存在!その絶大な破壊力で全てを粉砕するまさにマンモス!」
男が高らかに巨獣の紹介をする。
「まぁ、それと引き換えに理性を失ったようですがね。」
男は最後に笑いながら呟く。
(ある研究者が直接作った薬…つまりこいつは…)
クロは考える。
(なるほど、こいつらとあの時のおっさんで様子が違うのは使っているハイビーストが違うからか)
目の前のマンモスが使っているのがオリジナルという事はヤクザの彼らが服用しているのはレプリカという事だ。
「あれはまずいな…」
クロは悩む。このまま戦えば勝てはするだろうが時間がかかりすぎる。かといって簡単に逃してくれそうな相手でもない。
「ヒカルの兄貴がいればなぁ…」
光の力であいつをすぐ倒してくれそうだ、などとクロは考える。
「なら先に行け。そいつらは俺たちが相手しておいてやる」
不意にクロの後ろから声が響き、次々と何かが投げ込まれる。
それは意識を失った獣だった。
「待たせたなクロ!あとは俺たちに任せな!」
水の異形となっているアクルスが幹部の男と組み合い、ヒカドラはマンモスと向き合う。
「…任せたぞアニキ達!」
クロは倉庫を抜け、ボスの元へと向かうのだった。