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I want your kiss  作者: 楓海
1/4

乱之助

 読んで戴けたら嬉しいです。

 ここの処、暗い作品が多かったので、たまには明るいのを書こうと思い書きました。

 精神的にも、ちょっとアレだったので、気分転換に。

 9000文字ちょっと、全4話です。

「明日から彼氏と暮らすから、あんた出て行って」


 桧山(ひやま)アキは起き抜けに紗耶香(さやか)にそう言われて追い出された。


『いくら居候(いそうろう)だからって、酷くね? 』


 とは思ったが、文句言える立場でも無かったので、アキはしぶしぶ受け入れるしか無かった。


 親元を離れて数年経つが、未だアキは定職にも着かずアルバイトで食いつなぎ、知り合いの家を転々とする生活をしていた。


 知り合いの何人かに連絡を取ったが、返って来る答えは決まっていた。


「お前、まだ居候生活やってんの?

 歳も歳なんだから、そろそろ落ち着けよ」


「大きなお世話だわい! 」


 アキは通話を切ると、大きな溜め息をついて空を見上げた。


『取り敢えず雨は降りそうも無いし、ネカフェに泊まる金も無いし、今夜は野宿だな』


 ポケットにザラで二千円弱、居酒屋で安酒を飲んで、飲み屋街をふらつき、一晩過ごすのに丁度いい場所を物色した。


 横丁のタバコ屋の陰で寝ることにした。


 少しして足音が近付いて来る。


 通り過ぎると思っていたので気にも留めなかったが、足音はアキの前で止まった。


 アキは視線を感じて目を開け、足音の主を見た。


 そこに立っていたのは、いかにもロックバンドやってる風で、くすんだ銀髪を伸ばし、じゃらじゃらと胸にペンダントを下げ、ストレートのパンツに黒いフードの付いたノースリーブを着た男だった。


 男は何も言わずじっとアキを見詰めていた。


 アキも黙って、男が何か言い出すのを待った。


 やがて男は口を開いた。


「拾ってやろうか? 」


『ただで?

 まさかね……………

 野宿よりはマシか……………………』


「拾われてやってもいいよ」


 アキはのそりと立ち上がった。 


 男に付いて行くとメインストリートに出て、その後はタクシーに乗って男のアパートまで行った。


 男の部屋はそれほど広くもないが狭くも無くて寝室があった。


 明るい中で男を見ると、男は驚くほど華奢(きゃしゃ)で一見すると少女の様な面立ちをしている。


 寝室に入ると男は直ぐにアキの首に腕を回してキスしてきた。


 アキは今更驚くことも無かった。


『やっぱ、この展開は下関係だよね

 いいよ

 男とするのに偏見無いし…………………』


 舌を絡ませながらアキは思った。


 アキにとってこの展開は珍しい事では無く、容易に予測がついた。


『それにしてもキスが情熱的……………………』


 行為が進んで行くと男の表情が余りにも(いろ)っぽいのでアキはドキリとした。 


『惚れちゃったかも…………………』




 それが大きな間違いだった。


 男は乱之助と名乗り、レディーと言うバンドでギターを弾いていると言った。


 そこそこに人気もあるらしく、生活ができるくらいには稼ぎが在るようだ。


 アキは暫く乱之助の家に厄介になることになり、バイト生活を送った。


「ただいま」


 アキがバイトから帰ると乱之助はソファーに座り雑誌を見ていたが、アキを見ると言った。


「おかえり、アキ

 俺、今すごーくセックスしたい

 五分でシャワー浴びて」


「えーーっ!!

 オレ、今バイト終わってすげえ腹減ってんの

 ほら、弁当」


 アキは情けない顔の横にコンビニ弁当を掲げた。


 乱之助はスマホを取り出し画面を見ながら言った。


「そ、じゃあ五分で出掛けて

 違う相手探すから

 誰にしようかなあ…………………」


 アキは慌てた。


「ま、待って

 五分ね」


 アキはテーブルに未練たっぷりのコンビニ弁当を置いて、バスルームに駆け込んだ。


 いつもこんな具合に振り回される。


 アキがシャワーを浴びていると乱之助が全裸で乱入して来た。


「おそーい」


 乱之助はアキの顔をこちらに向かせると熱烈なキスをした。 


 アキが放心状態になっていると乱之助は言った。


「洗って………………

 舌で…………………」


 乱之助は可愛らしい顔で悪魔の微笑みを浮かべアキを見た。


『悪魔的にエロい……………………』


 アキは溜め息をついて言った。


「何処から? 」


「んじゃ、手からよろしく」


 アキは乱之助の指をしゃぶり始めた。


 舌を立てて乱之助の腕に滑らせ、首筋に達すると乱之助の顔を覗き込んで言った。


「愛してる…………………」


 アキはこの数日、何度もこのセリフを乱之助に告げた。


 だが、乱之助はこのセリフを告げられると決まって哀しげな表情を浮かべ、肯定もしないが否定もしなかった。


 最初は軽かったこのセリフも、言う度にアキの中で重みが増して行った。


 受け入れられないと余計に夢中になって行く。


 アキは恋愛の蟻地獄にはまっていた。


「早く来な」


 そう言うと乱之助はバスルームを出て行った。


 どうせ脱ぐのでアキは全裸のままで寝室に行った。


 寝室のドアを開くと乱之助は全裸でベッドに座り、何故か猫じゃらしを指先でもてあそんでいる。


 アキを見てにっこり微笑み、乱之助は猫じゃらしをぶんぶを振り回しながら言った。


「アキ、今夜は王子様と奴隷ごっこしよう」


 アキは焦りながら言った。


「もしかして奴隷は………………」


「勿論、アキに決まってるでしょ」


「やっぱりぃ」


 アキは項垂れた。


 気を取り直して言った。


「で、どうすればいいの? 」


「四つん這いになって」


 アキが床に四つん這いになると乱之助はアキの背中に(また)がった。


「悪い奴隷め、こうしてやる! 」


 乱之助はケラケラ笑いながら、猫じゃらしでアキの尻を叩いた。


「ひひーん」


 アキは空きっ腹を抱え、馬の鳴き声を上げて四つん這いで歩き回る。


 何周も狭い寝室を這い回って、さすがに嫌気がさしたのでアキは乱之助が落ちるのも構わず起き上がった。


 当然、乱之助は床にひっくり返る。


「下克上! 」


 と叫んでアキは乱之助に襲いかかった。


 乱之助はアキの頭を猫じゃらしでペンと叩いてから猫じゃらしを放り投げアキに抱きついて口付けた。


 熱の籠ったキスは直ぐにアキの身体を熱くした。







 読んで戴き有り難うございます。

 乱之助の可愛い容姿に小悪魔ちゃん的な性格がお気に入りです。

 アキの情けない性格も好きです。

 

 基本、活字が苦手なのであまり他の方の作品て読まないのですが、投稿した時に自分の作品探したりするのが好きで、その時にタイトルに、自殺とか、いじめとか、リスカとか、死とか見付けると読んでしまいます。

 そして、感想に何か元気付けられる言葉を送ったりしちゃうんです。

 自分、偽善者だなあと言う自覚はあります。

 そんな事書いたって、なんにもならないかもですから。

 でも、止められないです。

 昔、リスカしてる病んでる娘と友達だった事あって、その娘を必死で元気付けようと頑張ってた時があって、その名残ですかね。

 今、その娘にはもう私は必要無くなったのか、都会に行って自然と離れて行きました。

 以来、音沙汰無しです。

 元気で居てくれてるといいのですが。

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