戦闘種族
篁文は、1度だけと、話をし始めた。
「提案がある。そこの穴の向こうには無人の地がある。水も植物も魚も確認されている。そこに住む気は無いか」
ロイナスは一瞬目を見開いて穴を見、それから篁文達に目を戻した。
「なぜ、他の生物はいない」
「わからない。見付けたばかりで、そこまで調査できていないからな。
だが、悪くないと思うが」
ロイナスは考えるように目をわずかに伏せた。
「ああ。悪くない」
やや、ホッとしたような気配が篁文達の側に流れ、テグナス側には、何を話しているのか、という気配が流れた。
「悪くないが、受け入れられない」
「――!」
「我らはテグナス人!これ以外の生き方は知らぬ!欲しい物は力で奪う!」
それに、他のテグナス人達が同調して武器を掲げた。
「言葉は必要なし!」
ロイナスはそう言って、翻訳機を投げ捨てた。
大トカゲは、穴の向こうの新天地に居住を決めたらしく、岩山に巣を掘って出て来ない。なので、大トカゲの急襲には、大して警戒しなくて済む。
皆で、テグナス人に対処する。
斧使いと嬉々としてやり合うのはドルメだ。どちらが戦闘種族かというくらい楽しそうに、打ち合い、斧を弾き飛ばし、地に叩き伏せる。
「ギャッ!?」
バッタリと倒れて動けなくなったテグナス人は、とどめの1撃を諦念と共に待った。
しかしドルメは、
「うむ!良い戦士である!」
と言って笑うと、次のテグナス人の相手にかかった。
パセは巧みに接近し、ナイフを剣を持つテグナス人に斬りつけるようにすると、テグシナ人は武器を取り落として膝をついたり倒れたりする。
「ふう。一丁上がり」
ショウはスタンモードの銃で石や銃を持つテグナス人を次々と撃って昏倒させていく。
「なけなしの銃と弾丸なんだろうな」
そう呟く。
キヨは、槍で突きあい、薙ぎ払い、踏み込んでテグナス人に槍を突き込む。テグナス人はバッタリと倒れ、ヒクヒクと痙攣をしている。
「次!」
篁文は攻撃を最小限の動きで躱して接近するとスティックを叩き込み、間髪入れずに突っ込んで来た別のテグシナ人の腕に自分の腕を絡めるようにして跳ね上げ、空いた胴にスティックを叩き込む。
そして、そんな倒れたテグナス人達を、パワードスーツの紗希とセレエが、穴の向こうに次々と運んでいく。
篁文達は皆、スタンモードを使っていた。倒れたテグナス人達に、多少の怪我人はいても、死人はいない。
それを見ていたロイナスは、怒りの咆哮を上げた。マヒさせるようなものではないのに、周囲の者の動きを止めさせる力があった。
「何のつもりだ!?」
ロイナスはそう言った。
答えても、翻訳機を投げ捨てたロイナスに理解できるはずもないし、その前に、彼が答えを待っているようにも見えない。
ロイナスは篁文に銃を向けて撃った。
射撃の腕は悪くない。素早く無秩序に動いて射線から外れ、篁文からも撃つ。
が、同じようにしてロイナスもそれを避けて行く。
円を描くようにして撃ち合ううちに、距離を縮める。
ロイナスが殴り掛かって来るのを腕でブロックし、膝で腰を蹴り飛ばそうとする。するとそれをロイナスがブロックし、空いた片手を握り込んで殴って来る。なのでそれを弾いてもう片手で殴り掛かる。
お互いがお互いの攻撃をブロックし、腕を絡めるようにして外し、攻撃を仕掛ける。
延々とそれを繰り返すさまは、あらかじめ決められた振りつけに従って踊っているようにも見える。
均衡を破ったのは篁文だった。足でロイナスの足を払い、ロイナスの体が泳ぐ。そこに圧し掛かるようにして追撃をかけようとした篁文だったが、ロイナスが銃を向けて来たので、横に飛ぶ。
そこを、跳ね起きるようにしたロイナスが追撃せんとしてくるので、転がりながらの回し蹴りでロイナスの銃を蹴り飛ばす。
遅れて、ロイナスの蹴りが同じように篁文の銃を弾き飛ばした。
2人は距離を取った位置で向かい合って構える。
そして、出方を窺い、隙を探す。
動いたのはロイナスだった。腰に差したナイフを抜きながらに切りつけて来る。躱したものの上体が泳いだ形になる篁文を、突き、切り払う。
それを除け、突き出された腕を捕って自分もスティックを繰り出すと、そこからまた、先程の舞踏の再現になった。
誰も手を出す事ができない。
ロイナスは楽しそうに笑った。
篁文のわからない言葉で、
「最高だ!これで死んでも悔いはない!」
と叫ぶ。
「勝手な事を!」
ロイナスの言葉は翻訳機を介して篁文に伝わったが、篁文の言葉は、翻訳機を投げ捨てたロイナスには届かない。
と、隙を窺っていたキヨが、槍で突いて行った。
それをロイナスは
「無粋な」
と呟いて、槍を絡めとってキヨを引き寄せ、重いパンチをキヨに叩き込んだ。
「キヨ!?」
キヨは悲鳴も上げられず、息を詰まらせて失神し、ロイナスはそのキヨを肩に担ぐと、
「来い!邪魔の入らないところで殺し合おう!」
と一声言い、熱風の吹く次元の向こうに走り込んだ。
「篁文!?」
だれかが焦ったような声を上げた時には、篁文は地面を蹴っていた。
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