神の使徒
マンツーマンの特訓の甲斐があったのか、無理矢理昼ご飯を買いに行くのを順番にしたせいか、どうにか全員、日常会話に困る事は無くなった。なので、テレビも見られる。
「宗教か。熱心すぎるのはどこも怖いわねえ」
とある宗教団体が、異世界生物は神の遣わした使徒であると言い、その神の使徒を殺すとは何事かと、抗議活動をしているというニュースが流れていた。
「その抗議先にいるのは、同じ異世界生物の俺達なんだがな」
篁文が言うと、ドルメがおかしそうに笑った。
「地球にもいたんだ。ああいうの。僕のいたデルザにもいたなあ。自然に還れと神が仰っている、とか言って、テロを繰り返すやつら」
セレエがウンザリとしたように言うと、ドルメはふうんと相槌を打った。
「吾輩の故郷では、神は見守るのみであったなあ」
「あたしの所では、火、風、水に神が宿って、それで魔法が使えるって言われてるけど?」
パセが首を傾ける。
「神様ねえ。お願いはするけど、そこまで真剣にはなれないわ」
紗希は言って、頬杖をついた。
テレビの中で、信者がマイクで演説をしている。
『おごり高ぶったヒトに鉄槌を下すために、神は使途を遣わされた。科学の名のもとに神の世界である天にヒトを送ろうとするとは何事か!悔い改めよ!その証拠に、鉄槌を下さんと現れる使徒は、このアレイに集中しているではないか!』
「そうきたであるか」
「次元事故の中心地がここなだけなんだがなあ」
ドルメと篁文が言って、皆はうんうんと頷いた。
その時、緊急出動のサイレンが鳴った。
行先は道々聞けばいいので、とにかく皆は、車に乗り込む事を急ぐ。
解放された後部扉に異世界人達が飛び込むと、即、外から扉が締められる。そして、運転席に乗り込んでいた職員は、サイレンを鳴らして、車を現場に急行させる。
篁文達は、各々の装備を手早く確実に装着していく。
それと同時に、コンテナの運転席側に付いた画面に地図が映り、現場が光点で示された。
『現場はここ、駅近くのバスターミナルです』
ヨウゼが言う。
「あれ?そこって、さっきの宗教団体が演説してた所の近くなんじゃ」
紗希が言い、セレエが皮肉な笑みを浮かべた。
「神様の使徒に襲撃されて感激してるんじゃないの?」
『ケガにはくれぐれも注意して下さい』
「はい」
『到着20秒前』
運転席から声がする。
「よし。では、犠牲者が出ないようにがんばらねば!」
「行くぞ」
車が止まり、篁文達はドアを押し開けて外に飛び出した。
次元震の兆候が始まり、通報がなされ、警官によってそこにいた人達は避難誘導が始まっていた。
しかし、頑として動かないばかりかその邪魔をしているのが、件の宗教団体だった。
『悔い改めよ!』
『それが神の御意志である!』
逃げようとする行く手をを塞ぎ、警官に抱きついたりしている。
そして、篁文達を見付けると、寄って来る。
『使徒でありながら神に背いた悪魔!』
「そういう位置付けかあ」
セレエが皮肉たっぷりに笑った。
「やめなさい!歯向かってはなりません。罰を受けますよ」
言いながら、がっしりと掴みかかって来る。次元の歪みははっきりと、大きくなってきている。
篁文はじろりとした目を、掴みかかって来る相手に向けた。
「邪魔をするな。公務執行妨害だぞ」
「ひっ!?」
殺し屋と噂されたのは、伊達じゃない。
それでも腰に、足に抱きついて来たのを、
「警告はした」
と言い置くと、スタンモードのスティックで殴って転がす。
「きゃああ!?」
「紗希、セレエ、一応避難を頼む。流石にここで死刑にはできないからな」
セレエはコクコクと頷き、紗希は笑って
「OK」
と答えた。
それで、篁文、ドルメ、パセは、虫型の這い出て来た次元の裂け目に近付いて行く。
虫型とサル型が出て来るのを、片っ端から銃で撃ち、スティックで切る。
背後で悲鳴がするが、これは、使途を惨殺する篁文達の蛮行に対しての悲鳴だった。
「はいはい、離れて下さいね」
パワードスーツをつけたセレエと紗希が、離れるまいとがんばる信者達を易々と排除していく。流石はパワードスーツだ。
しかし、信者の数は相当多い。逃げようとする人達と反対の信者達。現場は混乱の極みである。こんな事なら、いっそさっさと雄叫びを上げて、ラクシー人達をマヒさせてくれればいいのに、とすら思う。
その願いが通じたわけじゃないだろうが、サル型が雄叫びを上げ、皆がバタバタと倒れて行った。
「チャンス!」
セレエと紗希は、張り切って、ホイホイと皆を運び始めた。
そこからはいつも通りに、サル型と虫型を片付けて行く。そして、残っていないか、新兵器でチェックだ。
「ん、いないね」
「よし。じゃあ、撤収だな」
後は警官に任せて、篁文達は引き上げて行った。
1匹が捕獲されたとは気づかないままに――。
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