最終話 鮮やかに心に輝く思い出
王様が可愛がっていたパンジーという名前のチンパンジーでした。王様は抱きついてきたチンパンジーに「見つかって良かった良かった!もうどこにも行かないでくれよ」と言いました。
王様はお礼がしたいと、ジャンと船の全員をお城に招待しました。お城の庭には様々な南国の艶やかな花が咲き、お城の中にも植物や花がたくさんあります。船長はじめ船員たちは見たこともない豪華なお城に招かれて狐につままれたような顔をしています。大きな広間にとおされると、そこには次々と美味しそうな出来立てのお料理が運ばれて来ます。
王様はパンジーを抱いて座ると「皆さんがパンジーを見つけて下さったのでお礼の気持ちです。特にジャンさん、あなたはパンジーに果物を買いに店に立ち寄られたと店の主人に聞きました。本当に何とお礼を申し上げてよいのか」と言いました。そして別れる際に「ジャンさん、これは私とパンジーからの感謝の気持ちです」とメダルのついたネックレスを首にかけてくれました。「王様、私は何もしていませんよ。当たり前のことをしただけですから。じゃあな、パンジー元気でいろよ」とジャンが言うと、パンジーはジャンに抱きついて甘えました。それを見た王様はジャンに「また島に来るようなことがあれば、ぜひパンジーに会いにきてやって下さい」と言いました。
その後、ジャンは南の島へ行くことは一度もありませんでしたが、大切にしまったネックレスを眺めてパンジーの顔を思い出すのでした。南の島の美しい海とあたたかな気候と様々な南の島の景色と偶然の可笑しな出来事はジャンの心にいつまでも鮮やかに輝いていました。