第二話 小僧、王様の城へ
小僧は王様のお城に着くと、大きな声で叫びました。
「王様、チンパンジーがいるそうですよ!」それを聞いた門番が小僧を連れて王様の前に立たせると「王様、この小僧がチンパンジーがいると叫んでいましたので連れて来たのですが」と門番が目を輝かせて立っている小僧に「小僧、どこでチンパンジーを見たんだね」と王様は椅子から立ち上がりました。
小僧は「はい、店に買い物にきた船乗りがチンパンジーに餌を買いに来たのです。チンパンジーは船にいるそうです。それを知った店のご主人が私に王様にお知らせするようにと言われて、走って来たのです」と門番に襟元を掴み上げられながら言いました。
「門番!小僧を掴み上げるのを止めなさい。さあ、小僧その店へ案内してくれ」と言うと王様は「ありがとう、よく知らせてくれたな」と優しく微笑みました。
前代未聞の大行列が王様のお城から出発しました。やがて小僧の案内でジャンがいる港の店に着きました。
島の人々は「王様だ、王様が来たぞ」と口々に言いました。王様はいつも島の人々には親しみやすく、尊敬できる人でした。
店の主人が「王様、もしかしたら違うかもしれませんが、この船乗りがチンパンジーを連れているというのでお呼びだてした次第です」と言いました。王様はジャンに近づくと「こんにちは、あなたと一緒にいるチンパンジーはどこにいますか?」と尋ねました。ジャンは「ああ、あいつは船の中にいるがね」と答えると、王様は「もしかすると私の可愛がっているチンパンジーのパンジーかもしれないのです。どうか会わせてもらえないでしょうか?」と頼みました。「そうですか、パンジーという名前なのか。そのパンジーかどうかはわからないが、この島に来る前に寄った港にいたんだが、船が港から出るとチンパンジーが船の中に紛れ込んでましてね」とジャンが言いました。
王様はジャンに案内されて船の中にいるチンパンジーの檻のそばへ近づきました。チンパンジーは王様を見ると檻の柵の間から手を伸ばしました。「おお!パンジーや、どれほど心配したか」と言うと「ジャンさん、このチンパンジーはパンジーに間違いありません」と言うと、檻の扉を開けました。チンパンジーは王様に抱きつきました。