第75話 結成
俺はアイルが買ってきてくれた銀色に輝く腕輪を装着してみる。
よくよく見ると、これ……小さな魔石?が埋め込まれている。
「アイル。これって魔石か?」
「気づいた?そ!高いのはそれが理由だったんだぁ。この腕輪はね、魔力を僅かに高めてくれるんだよ!」
「ホント!お姉ちゃん!!ありがとー!!」
ソフィちゃんは魔法使いだから魔力量に関してはシビアなんだろうな。
アイルに抱き着いて感謝を示している。
鑑定してみると……
※魔力上昇の腕輪
魔力量2%上昇出来るアイテム。
2%か……たった2%と取るか、されど2%と取るか……。
この2%の上昇で生死が決まる事があるのかもしれないな。
俺も買って来てくれたアイルに感謝を示しておこう。
「お姉ちゃん!!ありがとー!!」
ボコッ!!
俺がソフィちゃんと同じく抱き着こうとしたらまたしても無言で殴られた。
「そんな事より!パーティ名を考えてよ!」
パーティ名か……。
闇の終焉とか闇の混沌とか闇の地獄とか………え?中二と言えばやっぱり闇属性でしょ?
「そう言うアイルはもう考えてるのか?」
「フッフッフッ……良くぞ聞いてくれました。パンツさん。」
不敵に笑うアイルさん。
「私達のパーティ名はズバリ『金級冒険者がいきなりギルド調査隊に入隊して無双してみたら追放されたのでゴブリンとスライムを仲間にして英雄を目指す!!』よ!!」
…………。
………………………。
………………………………。
「「……………………やだ。」」
俺とソフィちゃんは同時に拒否する。
何だ、そのラノベのタイトルにありそうな題名は。
「何で!?何で二人とも嫌がるのぉ!?」
「だって、お姉ちゃん……長いよ。それに何で今から働く調査隊から既に追放される前提なの!?」
「その方がインパクトがあるでしょ!?」
「インパクトはいらないよぉ!しかもゴブリンとスライム限定で仲間にするとか意味わかんないし!!」
「今、流行ってるから流行には乗っとかないと!」
「どこの流行だよぉー!!」
「私、天啓を得たのよ!!スライムとゴブリンを仲間にすれば、いい旅が出来るって!!」
俺の記憶の世界のラノベではやたら長いタイトル……話の全容をそのままタイトルにするのも多かったなぁ……。
インパクトは確かにあるけども、調査隊から追放決定しているパーティ名ておかしいだろ。しかもゴブリンとスライムを仲間にするとか……。
今時か!
ラノベ界隈ではスライムとかゴブリンさん人気だったよ。
異世界のスライム強すぎ。
実際、俺も襲われた事あるけど、隠密スキルがパナイ。
水溜りかと思ったらそれがスライムとか。
しかも活動していない間は俺のステータスマップにも表示されないんだよ。
もしかしたら、変異種(ユニーク種)でラノベに登場していたとんでもスライムがいるかもしれないビュッ!
それか転生してたりとか。
ガガンさんに聞いた話だと、操獣者であれば魔獣を使役する事が出来るらしい。
俺も……何かテイムしたいなぁ……獣耳のボンキュッボンのカワイイモンスターとか…グフフ……ってそれいたわ。
眼の前に。気性が荒すぎるけどな。
ボコッ!!
「……じゃぁ!二人は他に何かあるの!?」
「はいはーい!わたしはねぇ、『おいしいもの食べ隊』がいいと思うぅ!!調査隊であちこち回って美味しい物食べ尽くすんだぁ!」
「ソフィ!それいいね!それにしようっか!!」
ダメだ。この姉妹……。
「おいおい!そんな気の抜けた名前にするのか?そんな安易なパーティ名付けたらダメだぞ!パンツ兄ちゃんだって困惑してるじゃねぇか。」
危うくパーティ名が『おいしいもの食べ隊』に決まりかける所にステフおっさんが待ったをかける。
流石、年長者!頼りになる!
俺も元おっさんだから年長者に変わりない筈だけど……。
「ここは俺が名付け親になってやろうかぁ?『幻の酒探し隊』とかどうだ!?」
うん。ソフィちゃんとどっこいどっこいのネーミングセンス。
「あんたのネーミングセンスも大概なんだから任せられないよ。何だい。『ゆっくりしていっ亭』とか『のんびりしていっ亭』とか。ダジャレの宿屋なんてあんた達夫婦の宿ぐらいだよ。」
即座にアイル達の母親のコフィさんが断るとステフおっさんはションボリしてしまった。
「じゃあどうするの!決まらないよぉ!パンツ!あんたは何かないの!?」
そ~だな。中二感のあるネーミングのパーティ名……やはりここは先程の……。
「闇の終焉とか……どう?」
………
……………
「何か子供じみてるから嫌だ。」
「うん。ちょっと……患ってるっぽいから幾らお兄ちゃんの提案でも……。」
アイルとソフィちゃん同時にダメ出しされた。
中2病ネーミングダメっすか。
ん~どうするかな。
調査隊ならあちらこちらに出向く事が多くて、各地で色々な経験出来るってステフさん言ってたな。
あちこちで収穫……。
「じゃぁ「収穫者達」はどうだ?」
「ハーベスターズ?ど~ゆー意味?」
「収穫者達みたいな事かな。調査隊ならあちこち行けるんだろ?各地で色んな事を収穫するみたいな意味合いで。」
「あら、いいわねそれ。」
「うん。いいな。食物だけじゃなく、知識や経験も収穫するって事か。」
お、コフィさんもステフおっさんも気に入った様だ。
肝心のメンバー二人の反応は?
「「それに決定!!」」
決まったみたいです。
良かった。アイルもソフィちゃんも気に入った様子。
「ん~でも俺の『幻の酒探し隊』の方がよくねぇか?」
「収穫者達に決まり!!」
まだ不服そうなステフおっさんが食い下がるが、それを無視してアイルとソフィちゃんは手を取り合って喜んでいる。
こうして俺達のパーティ名は決定した『収穫者達』。
…………どこぞの浜の球団みたいな名前だけど……ま、いっか。
パーティ名も決まった所で、俺達は昼食を取ろうと提案した所、ここで食べて行こうとコフィさんが提案する。
ステフさんもそろそろ昼食の準備をする前だったので問題ないとの事だったのでお昼御飯は久しぶりのステフさんの手料理だ!
「ステフさん、俺も手伝いますよ。それとこれ使って下さい。」
俺は収納魔法から角兎の肉を取り出す。
「おお!角兎の肉か!新鮮だなぁ。よし。じゃぁ兄ちゃん、一口大に切って貰えるかい?」
俺は肉をサイコロステーキ程度の大きさにカットする。
ステフさん、何を作るんだろう。
ステフさんは大鍋にバターと塩と砂糖、そしてトマトをざく切りにし、薄くスライスした玉葱を入れて炒めはじめる。
そして水を入れてトマトの形が無くなるまで沸騰するとそこに葡萄酒をドバドバ入れ始めた。
煮詰まってきたら人参やらジャガイモ芋もザクザクカットしてドボドボと投入して煮込む間に、俺に角兎の肉を油で炒める様、指示を出す。
肉に焦げ目が付いたらその鍋の中に肉を投入してひと煮立ちして塩胡椒で味を調えたら完成だ。
「出来たぜ!『ラビットシチュー』完成だ!ワインとバター、トマト、玉葱が溶け込んだ汁がうめぇんだこれが。」
汁て……。
シチューって言ってんだからシチューでいいんじゃん。
ラビットシチューを皿に盛り付けてパンと野菜の盛り合わせで昼食だ。
「「おいしぃぃいー!!」」
アイルとソフィちゃんは一口、口に運ぶと同時にそう感嘆の声を上げる。
「フッ……やるじゃないかい。ステフ。」
「当たりめぇじゃねぇか!料理の腕もコフィ!お前に負けねぇぜ!」
「何を言ってんだい。宿屋を出すから何かいい料理ないかと泣きついて来たからこの料理を教えたのは私じゃないか。」
「うぐッ……。」
何だ。ステフおっさんの料理の師匠はコフィさんだったのか。
俺も一口食べてみる。
成る程、デミグラスソースっぽいビーフシチューみたいな感じだ。
コンソメとかソースがないから深いコクは出ていないが、味としては悪くないな。
硬いパンに付けても食べると、シチューの汁気を吸って柔らかくなり、美味しく食べる事が出来た。
俺達5人が食事をしていると宿泊客だろうか?
1人、扉を開けて入って来た。
「……!?いい匂いだ。」
「お客さん。丁度いい所に帰って来たな!昼食がまだなら美味いシチューがあるけどどうするね?」
「うむ。是非頂こう。」
帰って来た客にステフさんがシチューを進めると、その客も昼食はまだだった様で、二階に荷物を降ろすと直ぐに戻って空いている席に着席する。
先程はマントを羽織り、目深に被ったフード姿だったので気づかなかったが、女性だったのか。
薄く紫がかったショートの髪型が似合っててカワイイなぁ。グフフゥ。
※貴重な時間を使いお読み頂きましてありがとう御座います!
またブクマ登録して頂いている皆様、感謝です!!
料理回は戦闘回と同じぐらい難しいです!
現代は~~の元とかお気軽に美味しく作れたりするので調味料メーカーさんや食品メーカーさんの企業努力に脱帽です。




