『新着棚』を探す★
無限とも思える書架の間をキョロキョロと左右を見ながら一人歩いていた。
ここは『夢の図書館』、多くの夢や希望が本として集まる場所。
私の名前は『ペケ』
もちろん本名ではないけど、私の主が付けてくれた愛称みたいなものね。
この中から主が気に入りそうな本を探し出して届けることが、私の仕事。
「今日はどんな物語がいいかしら?」
刻々と蔵書が増え続けるこの図書館では気になる本を探すのも一苦労だ。
しばらく歩いた後、一つの書架の前で立ち止まる。
「やっぱり探すなら、ここからよね。」
ここは『新着棚』―――
次々と増え続ける本は、最初にこの『新着棚』に納められる事になっている。
ここに納められた時にチェックしなければ、次にその本に出会うには膨大な量の本から探し出さなくてはならなくなる。
ここ最近、届けた本を思い浮かべながら書架の端から順に探していく。
「最近は『ファンタジー』が好みのようだから、この辺りかな?」
『ファンタジー』系の1冊の本を書架から引き抜き、チラッとタイトルを見て少し顔をしかめる。
「う~ん……この異常に長くて説明的なタイトルも最初は変だなって思っていたけど、ワザワザ中身を読まなくてもいいから探す時は便利なのよねぇ」
そのままペラペラとページを捲ってから首を振って書架に戻し、次の本を引き抜く。
その作業を何度か繰り返している内に一冊の本を見つけた。
「また転生モノか~、でも……ちょっと毛色が違うかな?」
あらすじに少し興味が湧いてきたので、そのまま読み進めてみる。
「他の作品とは、ちょっと違ってて面白いかも?」
少し考えた後、本を閉じてから決心した様に頷き。
「うんっ、この本にしてみよう! 今日も喜んでくれるといいな~」
良い本を届けた時の主の顔を思い浮かべて微かに微笑むと、胸元の内ポケットから栞を一枚取り出して本の間に挟む。
微かに本が輝き、ゆっくりと元の状態に戻っていく。
これは『魔法の栞』―――
原理はよくわからないけど、この栞を挟んだ本は主の書架に同じものが具現化するのだそうだ。
本を書架に戻してから、ぐっと背を伸ばす。
「さて今日のお役目も終ったし、後は私の好きな本でも探そうかなぁ」
そう言って、再び書架の間を歩きはじめた。