第一章 異世界転移系ライトノベルなんて大嫌いだよ!!!
「異世界転移系ラノベが人気なのは納得できない!」
俺、久保龍斗は今日発売の新作ライトノベルを読み終えると同時に声高々に叫んだ。
「一体なんだこれは!異世界に転生し、ありとあらゆる魔法が使えて身体能力は劇的に向上。序盤で女の子を暴漢から救い、次の章ではまた別の女の子を救った!たったの一巻で二人も女の子を攻略しやがった!」
俺はライトノベルを思い切り壁に叩きつけた。
「この展開にはもう飽きたんだ!」
「うるさいバカ兄貴!!!!!」
「ごっふ」
扉が開けられたと同時に俺の顔に右ストレートが炸裂した。
それも世界を狙えるような。
「な、なにしやがる・・・」
「さっきからうるさい!執筆がはかどらないじゃん!」
「黙れこの異世界転移系ラノベを書くダメ作家め!」
俺の義妹である唯華はラノベ作家だ。そして・・・
「お前の『異世界に転生したので渋々ハーレムを作ることを決意しました』とかいう寒すぎるタイトルのラノベがくっそつまんなかったんだよ!金返せ!消費税まできっちり返せ!」
二年前に一巻が発売されると瞬く間に人気を集め漫画化、ドラマCD化を果たした人気ラノベ作家(笑)なのだ。
「そんなに嫌なら読まなければいいじゃん。」
「アニメ化される作品だ。読みたくなるだろう。」
そう、唯華の作品がアニメ化されることになったのだ。
「それにしてももう少しタイトルはどうにかならなかったのか?いたいぞこれは。」
最近のラノベのタイトルは長いのが主流だがここまでタイトルがひどいのは中々ないだろう。
「タイトルなんて興味惹ければなんだっていいの。大事なのは中身。どれだけ読者の好みに合わせることが大事なんだから」
「読者の好みって言ったって、これはお前の妄想小説じゃないのか?」
「違うに決まってるでしょ。こんな童貞丸出しの自慰小説なんて書くわけない。」
異世界転移系のラノベは作者の妄想が詰まってると聞いたことがあるから、てっきり唯華もそうなのかと思ったのだがどうやら違ったようだ。
「ならどうして異世界転生系なんだ?」
「決まってるでしょ。読者に好まれやすいから。」
「でも嫌ってる読者も多いだろ?」
現にネット上ではそういった作品を叩く人も多い。
勿論俺も否定派だ。
「そういった人もいるけどラノベ読者の大半は陰気でオタクで彼女いない童貞が殆どでしょ?しかもそれを周りのせいにして内面や外見を磨かずに俺だってラノベの主人公だったらもっと上手く生きていけるのにとか勘違いしちゃうようなどうしようもない人間。そんなどうしようもない自分がクソみたいな現実世界にさよならして自分にとって都合のいい異世界に転生してそこでの自分は最強で敵無し、その上美少女達から慕われモテモテライフを送る。この上ない理想的な展開じゃん。ほんとキモチ悪い、あーやだやだ。」
「今すぐ謝れ!!!お前の作品読んでる全ての読者に謝れ!!!」
お前作者だろうが!その異世界転生俺TUEEEハーレム書いてる作者じゃねーかお前!お前のラノベを評価してくれてる読者になんてことを・・・。
「謝るなんてことは絶対にしないけど感謝はしているよ。作品を買ってくれている人たちだからね。」
そう言って微笑むと唯華は部屋を出て行った。
あれだけ読者を罵倒したにも関わらず、唯華は嬉しそうにしていた。多分、いや本当に感謝しているのだろう。だが・・・
「やっぱり納得がいかない・・・そうだ!!!」
俺は部屋を飛び出し唯華の部屋へと向かい、思い切り扉を開いて叫んだ。
「俺は異世界転移系のラノベを書く!俺が異世界転移系の常識をぶっこわ・・・・・白?」
うそだ・・・うそだうそだうそだ。こんなラノベ展開を俺は望んじゃいない!扉開いたら着替え中の義妹と目が合って殴られるなんていう定番イベントは俺にはいらなっ
「ノックぐらいしてよね。バカ兄貴とラノベ的な展開望んじゃいないんだから。」
「えっ?」
なぐられ・・・ない。隠してもいないだと・・・?
「ほらはやく出ていって。」
「あ、ああ。」
そ、そうかっ!唯華の作品にもこういった展開があったし耐性がついているのか!
「わ、わるかったな。次から気をつける。」
「ん。よろしい。」
そういってしょうがないなぁというように笑った唯華が少し可愛くて思わず
「その下着、ちょっと子どもっぽいな。もう少し大人っぽくてもいいと思うぞ。胸はそこそこあるんだし。」
「バカ兄貴。ちょっとドアの外で正座して待ってようか?」
にこぉっと笑うと唯華は扉を閉めた。
この後、唯華による鉄拳制裁が待っていたのは言うまでもなかった。
はじめまして。黒ゴマと申します!
最近は異世界転移系、俺TUEEEやハーレムなどの作品が多くなってきたなぁと思いました。
自分自身異世界転移系は大好きなのですが、あれ?こんな感じの展開別のラノベでも見たぞ?と感じることが多くなってきたため、一味違う要素を入れてみたいなと思い執筆しました。
主人公に降りかかるのは定番の展開だけど、異世界を嫌悪してる主人公だからこその立ち回りなどを書いていけたらなぁと思っています。
今回は本当に序盤だけの投稿ですが、これからどんどん執筆していこうと思います!
また厳しいご意見でも結構ですのでいただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。