9.登場人物紹介(2)
ここで、登場人物などをおさらいしておきましょう。
A・f:
題名のA・fとは心房細動の病名atrial fibrillationの略名、エイ・エフと呼ばれる。
メキレーン:
本名をメキシレチン。これはナトリウム・チャネルの外側の蓋を開きにくくすると共に内側の蓋も開きにくくする働きがある。3種類あるⅠ群の薬の中で、Ⅰb群と呼ばれる。Ⅰ群の中では作用の穏やかな薬になる。またカリウムチャネルの蓋を早めに開かせる働きがあるため、一見、不整脈には良くない作用にも思われるが、内側のナトリウムチャネルの蓋を閉じる作用が長く続くため、全体としては心臓の収縮と拡張の周期を延ばせて不整脈の治療に利用される。但し、心房の場合、ナトリウムチャネルの内側の蓋の閉じている時間が元々短いため、この薬が結合するチャンスも少なくなり、基本的にメキシチールは心房性の不整脈には利用されない。変わった利用法としては糖尿病の際に引き起こされるしびれや痛みなどの神経性の症状にも応用される。詳細には触れないが、体の中でしびれや痛みを引き起こす作用が電気的な信号の伝わりに関係するため、その電気の伝導を邪魔する働きがある。
ピルカイ:
本名をピルシカイニド。Ⅰc群の不整脈の薬。ナトリウムチャネルの外側の蓋を開きにくくするが、その作用がⅠ群の薬の中で最も強力な薬になる。他のⅠ群の薬と異なりカリウムチャネルの蓋には影響を与えないが、作用の強力さの裏返しで反って不整脈を引き起こすという重大な副作用も持っている。
ベア・ブロッカー:
本名をベータ受容体遮断薬(通称βブロッカー)。Ⅱ群の不整脈の薬。人間には興奮的に働く交感神経と抑制的に働く副交感神経の二種類の神経が存在している。心臓は交感神経が活発になるとその動きが活発になり心拍数を増やし動悸を引き起こす。実際には交感神経からはノルアドレナリンというホルモンが放出されて、それが心臓の表面に存在しているベータ受容体1に結合すると心臓は動きを活発にする。これが活発になり過ぎると頻脈となり不整脈となってしまう。ノルアドレナリンがベータ受容体1に結合するのを邪魔する薬がベータ・ブロッカーと呼ばれる一群の薬になる。このタイプの薬には、現在、十数種類の薬が販売されている。本編では巨大熊がノルアドレナリンで、巨大熊の手足で叩かれる大地が心臓になる。なお、この薬は高血圧の治療や狭心症の治療にも利用されている。
アダロン:
本名をアンカロン。Ⅲ群の不整脈の薬。カリウムチャネルの蓋を開きにくくして、心臓の収縮と拡張の周期を延ばす。他にベータ・ブロッカーとしての作用やカルシウム拮抗薬としての作用も併せ持っている。この薬の作用は非常に強力で、毒薬にも指定されており、様々な副作用が報告されている。そのため、治療の難しい重症の不整脈への利用のみが許されている。
ベラル:
本名をベラパミル。Ⅳ群の不整脈の薬。カルシウムチャネルの蓋を開きにくくして、心臓の収縮と拡張の周期を延ばす。カルシウム拮抗薬とも呼ばれている。カルシウム拮抗薬には心臓選択性の薬と血管選択性の薬があり、ベラパミルは心臓選択性なので不整脈や狭心症に利用される。血管選択性のカルシウム拮抗薬は高血圧や狭心症に利用されている。