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気象予報士 【番外編】  作者: 235
いろんな隙間話
22/41

蒼羽のつぶやき:呪い

気象予報士2.5部、5話の後。

肩透かしをくらっている蒼羽。

 ものすごく、甘い。

 体中が熔けてしまいそうな甘さで満たされているようで。



 汗ばんだ肌と、どんなに乱してもその滑らかさは変わらない髪。力の入らない全身を自分に預けてそのまま眠りに入ってしまいそうな緋天の背を支え、その感覚を受け止めた。自分の体力が有り余るのはどうしようもないことだ。彼女の体が回復するのに合わせてこうして時間が過ぎるのをもどかしく思いながら、右目の端に唇を落とす。それに小さな声を漏らして過敏に反応する緋天が、自分を更に加速させる。


 高く上った太陽が、夏の朝の風が寒いと言った緋天を寝台に閉じ込めてどれだけの時間が経過したか、無言で伝えてきた。今は空調をいれていても、お互いかなりの熱を発しているのだが。


 2人だけの空間は、たまらなく心地いい。

 誰かの邪魔が入る心配も、彼女を帰す時間だと気にする必要がなく。こうして明るい時間から緋天を堪能できるのは、自分の特権なのだ。

 仕事を休む、という事は今まで自分の中で何の意味も持たなかったのに。最近はそれが緋天と過ごす時間ができるという意味になり、何物にも代え難い。


「・・・ん、ねむい、よ・・・」

 首元で小さく響いたその声に、どこか判らない体の底が掻き乱された。緋天はいつでも自分を煽る事しかしないのだと痛感する。無意識の言動に踊らされるのだから相当重症かもしれない。行き場のない熱を抑え込む、今はそうするしかなかった。

「緋天、何か飲まないと・・・」

「・・・ん」

 さんざん水分を排出して、そのままで眠りにつかせるのは不安だった。寝る前に水分を補給しなければ体調を崩すだろうと、緋天の上体を起こす。1時間程前にヘッドボードに置いていたボトルは彼女と同様に汗をかいていた。それを口元に持っていくと素直に嚥下する。

 こくこくと小さな音を鳴らして。微笑んでいかにも美味しそうに飲む緋天から、ほんの少し目を逸らす。


「あ・・・」

 そのせいなのか、緋天の唇から水がこぼれた。同時に飲み終えたボトルを押しのけて、そこへ口付ける。さらに深くキスを落とそうと一瞬顔を離すと、先程と同じように微笑する彼女。


「おやすみなさい」


 電池が切れた玩具のように。

 ぱたりと頭を枕に落とした緋天に、破ることのできない呪いをかけられる。


 最高に居心地が良い、甘美な呪縛。


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